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【本の解説】伝統小売で売るための2つの条件

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『ASEAN6における販売チャネル戦略』ということで、同文舘出版から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

消費財メーカー向けの本なので、基本的には対象はFMCGになります。それ以外の製造業の方は、自分たちの事業に置き換えて聞いてもらえたらなというふうに思います。対象地域はASEANになります。

今日は39ページ、「伝統小売で売るための2つの条件」ということでお話をしていきたいんですが、この章で書いてあるのは、伝統小売でモノを売っていかないと、ASEAN、特にVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンに関してはあまり大きな商売にはならないし、近代小売だけやっていても導入費であったりとか半強制的なプロモーションの費用を考えるとあまり利益が出ないという構造になっていて。結局、VIP市場においては人口も多いわけですよね、ベトナムで1億弱、インドネシアで3億弱、フィリピンで1億強ということでね、この爆発的に拡大する中間層があって、伝統小売の数もベトナムで66万店、インドネシアで447万店、フィリピンで80万店ということで、伝統小売を獲らないと勝てないよということなわけで。ただ、その伝統小売を獲るために2つの条件を満たす必要があって、そのことについてここでは解説していて。

1つは何かと言うと、まず、近代小売で売れ筋になるということですよね。伝統小売のオーナーは近代小売で売れているものしか買いません。要は、狭いお店にそんなにたくさんの商品は置けないので、売れるか売れないか分からないもの。買ってしまったらね、仕入れてしまったら、これは返品できないですから、伝統小売のオーナーは。基本的には、近代小売で売れ筋になっているから伝統小売のオーナーはそれを仕入れるというふうに思ってもらったらよろしいと思います。絶対に買わないので。いや、お願いすればね、2回3回お願いすれば、「もう仕方がないな。置いてやるよ」と置いてはくれます、買ってくれます、少ない数をね。ただ、それが掃けなかったとき、セルアウトしなかったときに二度と取り扱ってくれないし、敗者復活戦がものすごく大変になるので、基本的には、「置いて置いて」と言えば置いてくれるけども、近代小売で置かれていなかったら、売れ筋になっていなかったら、つまりは目立った存在になっていなかったら、伝統小売のオーナーは取り扱いませんよと。

伝統小売の顧客ってね、指名買いしてくるんですよね。どういうことかと言うと、もう買うものが決まっていて、自分たちの通り道とか近所の伝統小売に行って、「おばちゃん、あれちょうだい」「おじちゃん、あれちょうだい」と頼むわけですよね。そうすると、ものによっては入り口の表面のね、伝統小売の店先に出ていないものがあって、後ろから持ってきたりとか、下から出してきたりとか、上から出してきたりとかっていうことなので、つまりはエボークドセットに入る必要があるんですよね、自分たちの売る商品が。エボークドセットというのは、消費者が商品を購入しようとしたときに、もう、「あれを買おう」というのがあるわけですよね。チョコ食べたいなと思ったときに、「あのチョコか、このチョコか、あのチョコ」と。アイスクリームを買いにいこう、コンビニにといったときに、もう、「ガリガリ君か、もなかか、ハーゲンダッツか」みたいな。エボークドセットというのが人間は必ずあって、その中からしか選択されないので、そのエボークドセットにそもそも入っていないものというのは伝統小売では置かれない。近代小売で売れ筋になる=エボークドセットに入るということなので、ここが非常に重要なポイントであるというのは1つですよね。

あと、もう1つが、今、欲しい分だけが買えるということ、これは伝統小売の最大の魅力で。どういうことかと言うと、近代小売に行くと大袋入りにたくさん入っているんですよ。グラム数も大きいですよね。例えばメントスだったら、こんな長いのがブワーッと入っている、それで100円か、150円かします。でも、そうではなくて、メントス、極端なことを言うと1個から欲しいと。だから、4個入りとか、5個入りの小さいメントスが売っていたり、もっとサイズが小さいやつが売っていたり。チュッパチャップスも、伝統小売で売っているチュッパチャップスって、コンビニのあの店先に並んでいる大きい団子ではなくて、もっと小さいんですよね。それとか、たばこが例えば1本から売っているとか、頭痛薬が1錠2錠から売っているとか、あめ玉は1個から売っている。要は1個、単価とかグラム単価、グラムの少ない、ポテトチップスも小袋。スーパーへ行くと大袋でたくさんの容量のものが売っているけど、伝統小売では小袋で小さく売っていて。伝統小売で買うほうが、グラム単価とか1個単価で言ったら、絶対に高いんですよ。10%20%高い、消費者もそんなことは分かっていて。それでも伝統小売で買うということはどういうことかと言うと、自分たちのキャッシュフローが中間層にとっては最も重要でね、いかに自分たちのキャッシュフローを痛めないかということ、シャンプーも使い切りで売っているわけですよ。極端な話を言うと、毎日シャンプーしないんです、デートの前にしかしないんですとか、週に3回しかしませんとかね。そうすると、あのボトルのシャンプー、プシュプシュとわれわれが買うやつと買ってしまうと、これは将来のキャッシュまで先に出すことになる、そんな余裕はないということなんですよね。われわれだったら流しの下に予備をもう1つぐらい置くかもしれないけども、詰め替え用パックを置くかもしれないけども、そんな余裕はないと。今使いたい分だけが買えると、これがやっぱり伝統小売の最大の魅力で。どんどん、どんどん、こういうことは変わっていくと思いますよ。小袋入りの大きさもね、そんなに極端にグラム数が減ったりとか、入数が減ったりっていうのは、どんどん、どんどん、所得が上がっていったらなくなっていくとは思いますけど、今現状はそうですということと。

あと、一部例外あって、富裕層が住んでいるような地域にもやっぱり伝統小売ってあるんですよ。われわれにとってコンビニのような存在ですから。お金持ちの家には家政婦さんがいて、家政婦さんがちょっと醤油が切れたから買いに行くとか、そういう高級富裕者エリアゾーンの伝統小売というのは結構大きいんですよね。スーパーにわざわざ行って買う、自分たちで買わないわけですからね、そういう人たちはね。お手伝いさんが買いに行くという。そういうところには例えば来客用の茶菓子、日本だとね、銀座の三越か高島屋の地下に行って何かおいしいお菓子を買ってくるとか、虎屋に行って羊羹買ってくるとか、そういうものを出すんですけど、別にVIPの人たちはそこまでまだ民度が進化していないというか、来客に対する振る舞いも別に日本ほど…、これって民度的なものもあるし、日本人ほどこだわるというのもないので、言ったら、昔よくあったこんな大きなカンカンの中にクッキー詰め合わせとかね、ああいうものが500円ぐらいで売っているんですよね。だから、安いものしか売れないというのは伝統小売、間違いで、場所によっては単価500円ぐらいのこういうものも売れるし、それこそロッテのチョコパイを1個入りじゃなくて、こんなたくさん入りで入っているものを袋から出してふるまったりとかね。日本のお菓子はよくできているので、そういうものが、そういう茶菓子として出されたりということもあるので、そういうニーズもありますよということは併せて付け加えておきたいと思います。

ということが書いてあって、次回ね、この41ページ、「競争環境の可視化なくして勝利なし」ということで、いよいよ競争環境のほうに入っていきたいなというふうに思います。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。