森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、前回の続きでもあるんですが、前回、前々回と販売チャネルの設計の話をしたと思うんですが、今回はその設計した販売チャネルの実装について少しお話をしていきたいなというふうに思います。
販売チャネルの実装ですが、前回、前々回とお話をした、販売チャネルの設計が日本企業にはないんだと。単なる販売力の強化とか、そういう次元で戦っても勝てませんよと。シェアを獲っていくと、利益を出していくということにおいては、そもそもの販売チャネルの設計からしっかりやっていかないと、駄目な販売チャネルでどれだけ販売強化しても、それは駄目+駄目=駄目にしかならないと。なので、いかに販売チャネル、適切な販売チャネルを設計するかなんだという話をしてきて。じゃあ、設計しても、それは絵に描いた餅で、この通りつくれば高いビルが建ちますよと、高い売上が出ますよという販売チャネルが設計される。これは物理的に、客観的に、相対的に、良い設計図かどうかというのは証明ができるわけですよね。だって、対競合比で見ていくわけですから、競合の販売チャネルに対して自分たちの設計は負けていないよねと。これもわれわれなんかはロードマップを描いていくわけですけど、段階的に、一夜にして最強の販売チャネルなんていうのはできないので、段階的にトランスフォームしていくわけですよね。フリーザの第1形態、第2形態、第3形態みたいなね、そういうイメージですよね。どんどん強くなっていくと。その中で実際に実装しながら形態が変わっていくわけなので。
実装って、じゃあ、何なのかって言うと、販売チャネルの設計をするということは、ディストリビューターの選定から始まっていくわけですよ。多くの場合は、もうすでに販売チャネルがあって、われわれの9割の仕事も販売チャネルの再設計なので、今ある販売チャネルを生かしながら、どうやって販売チャネルを強化していくかっていう、そういう設計をするわけですよね。ディストリビューターも、今あるディストリビューターをいきなりぶった切るって、これはなかなかないですね。今ある売上を失いますから。その今あるディストリビューターを生かしながら、どう強化していくかということを設計して、それに着手をしていく。そうすると、今あるディストリビューターと微妙な時間が流れる、そういう期間が絶対に生じるんですけど、でも、それをしてでも前に進まないと。だって、今いるディストリビューターに満足していないじゃないですかと、駄目だって分かっているじゃないですか、なのに、なぜ何の手も打たないんですか、という企業は非常に多くて。それは、自分の帰任がもうすぐあるのに、そこを手を出すなんていうのはなかなかしたくないし、新しく着任した担当者も、せっかく着任して、引き継ぎではなんとなく駄目なディストリビューターと聞いてはいたけど、やっぱり自分の目で確かめないと、いきなりディストリビューターを替えるなんていうことはできないよねと。そういう時間軸の中、3年4年で帰任が繰り返されていくと、ディストリビューターを替えるなんていうことはほぼなく、そして、積み重なった時間だけが大きくのしかかってきて、ディストリビューターも最後の最後まで、これだけおまえたちのために頑張ってきたのに、こんな切り方をするのかみたいな話になっていくし、ブラックボックス度合いは気づいたときにはもうかなり真っ黒みたいになってきて、ほとんど顧客の情報とか二次店の情報というのは開示されない、そういう状態になるわけですよね。多くの場合はそういう状態になっているというのは多いですかね。その中でそれをほぐしていくんだけども。多少の摩擦は、これはもうしょうがなくて。しょうがないし、その摩擦を起こしてでも前に進まないといけないし。摩擦は起こすんだけど、火事にしないということがすごく重要で。これがノウハウであったり、テクニックであったりするわけですけど。でも、今までの経験から言って、ディストリビューターのもう8割は華僑で、華僑の人たちは、感情で銭金を失うようなことは絶対しませんから。基本的にはもう銭金勘定ですよね。感情でけつまくって、「もうお宅の商品売るのやめた!」とはならないので。ただ、やっぱり動いたら一気に行かないと、そんなに長い期間、時間をかけていると向こうも動いてしまうので。しっかりとやるのであれば、準備をしっかりして、仁義を通して、一気にやっていくということが非常に求められるわけなんだけども。
そのディストリビューターの選定とか交渉、よくあるのが、契約がそもそも駄目でしたねと。基準値を掴んでいますからね、販売チャネルの設計でね。基準値で見てみると、やっぱりここはこういうふうに契約書を変えていかないといけないよねとか、なぜこの条項を入れてないんですかとか、なぜ逆にこういう条項になってしまっているんですかみたいなのはやっぱりあるし。特に、顧客とか二次店流通含めたマーケティング戦略の握り、どういう人員体制、組織体制で、どのターゲットに対して何をやっていくのか、それを毎週次、月次でどう管理していくのか、KPIの設定とか、管理体制みたいなものがまったく議論されていないというケースがやっぱり多くて。それを契約前にしっかりと決めて初めて契約する。契約って儀式じゃないので、はい、契約した、よかったね、さあ、頑張ろう、蓋を開けてみたら全然違った、みたいな話をなくすためには、契約書に調印する前にそこまでを決めておく。そういうことをやっていくと、離脱するディストリビューターって全然出てくるので。そうすると、やっぱり、組まなくてよかった、そういう判断になってくるので。そういうプロセスを経て、ディストリビューターの選定をしっかりやっていく。ディストリビューターがすべて市場のことを分かっているかなんて、まず分かっていないので。むしろ分かっているか、分かっていないかといったら、分かっていないほうのほうが僕は大きいと思っていて。今売っている商品に関してはとか、今売っているチャネルに関しては、今売っている既存のブランドを売っているのでできるんだけど、じゃあ、それ以上のことはやっぱりメーカー側がしっかりリードしてやっていかないとなかなか難しいので。まず、われわれがすべてを把握する。ディストリビューターに知識で負けたら、これはもうパートナーにはなれないので。ディストリビューター以上にマーケットのことを知るということは、もうこれは絶対必須だと思います。そのインプットをもってディストリビューターとやり取りをする。
日本の企業は特にそうなのかもしれないですけど、僕、海外に行けば行くほど、新興国に行けば行くほど、抑止力ってすごい重要で。何だろうな、この感覚が自然と身についてない。性善説で全部来ているので、基本的にそんなことは起こらないと、自分がちゃんと気持ちがこうであればそうなんだって言うんだけども、そういう世界だけじゃないんだよなというのをね…。こういうことを言うと、僕が嫌な人みたいに思われたら嫌なんだけども、本当によくニュースで聞く抑止力に似ていて、こっちが弱いと思ったら、もう確実につけ込まれるんですよ。これは悪意があってとかじゃなくて、いわゆるビジネスで優位に立つ、より利益を持ちたい、そう思ったら、それはそうなりますよね。だって、ひよこちゃんを目の前にそんな攻めてこない人はいないんですよね。日本だったら、相手が知らなくてもお教えします、こうですよ、ああですよって。でも、こんなマインドを持っている人はなかなか。もちろん全部が全部そんなあれじゃないんだけども。でも、やっぱり抑止力ってすごく重要だし、これって何て言うのかな、全部が平等という世界で生きてきているから、逆にそうなってしまうのかもしれない。社会主義じゃないのに、みんな一緒みたいな、そういう環境で生きてきているからそうなるのかもしれないんですが…。まあまあまあ、そういう世界なので、そこは本当に思う。
何て言うのかな、部下との関係もそうですよね。日本だとね、上司部下の垣根なく、役職で呼ぶのはやめましょう、何々さん、何々さんみたいな、そういうのが最近のいまどきみたいなね、そういう感じかもしれない。パワハラとか駄目ですみたいな。もちろんパワハラは駄目なのかもしれないんだけども。アジア新興国市場で言ったら、もう上司が右って言ったら完全に右なので。しかもその上司が社長だったら、しかもオーナー企業、右向け右はもう右ですよね。右向かないならさようならという、そういう世界の中なので、あまり先進国の常識を持ち込んだら戦えないですよね。戦い方が違うので。そこを考えていくと、やっぱり自分たちが全部理解する。それが抑止力になるので。このメーカー、よく分かっていると。先進的なグローバル企業も圧倒的に調査して、圧倒的にマーケットや競争環境を熟知しているので、それをベースに戦略を自分たち自らがリードしていくので、当然言うことを聞きますよね。怖いもんね。外されてしまうし。ただでさえ日本人は、日本企業は、優しい、いい人と思われているので、そこは線引くところは線引いて、適切な距離、近づき過ぎないし、近づかせ過ぎないというね、この、何て言うのかな、伝わらないよな。微妙な距離。仲良くなればいいというものじゃないんだよね。適切な距離感を取りながら、適切に付き合っていくという、すごい重要なんですよね。まあまあ、その話はまた改めてどこかの機会でするとして。
とにかくここで言いたいのは、そういうことをしながら実装していくと。もちろんディストリビューター、パートナーの育成とか強化もしないといけない。育成をメーカーがやっぱりしっかりしていかないといけない。これは製品知識を植え込みますという話じゃなくて、マーケティング活動における育成もメーカーがやっぱりしっかりやっていかないといけない。先進グローバル企業はそれをやってきているんですよ。ディストリビューターを育ててきているのでね。ディストリビューターにいいように言われて育てられてしまうみたいな、育てられることはないけども、いいように言われてしまうなんていうのは絶対あってはいけない関係なので。基本的にはパートナーを育成するということは、もう自分たちが彼らよりも知っているという状態を築かないといけない。それをしっかりやっていって初めて実装ができるので。一夜にして強固な販売チャネルなんてできないし、強固な販売チャネルができなかったら、それは再現性がないので、いかに販売チャネルを最適に正しく設計して、それをできる限り早く実装していくかということをやっていかないといけないと。本当にこれは新興国市場においては重要です。単なる営業販売強化じゃないんですよ。販売チャネルの設計と実装で競争力そのものを強くしていくということが大変重要かなというふうに思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。