【特別対談】グローバル・マーケティングの権威 大石 芳裕 名誉教授と語る – ローカル企業の台頭に日本企業はどう対抗すべきか
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この放送の要点
- 東南アジアや中国のローカル企業の成長が、ここ数年で著しく進んだ。
- Eコマースはローカル勢が支配的。紙おむつでは大王製紙がインドネシアを撤退した。
- 日系にとってアジアは元来生産拠点で、販売は現地任せから始まった。
- ローカル幹部に欧米のビジネススクール出身者が増え、戦略の立て方が高度化している。
明治大学・大石芳裕名誉教授との対談です。東南アジアや中国ではローカル企業の成長が著しく、欧米のビジネススクール出身の幹部がマーケティングを武器に戦略的な展開を進めています。日本企業はアジアを生産拠点として捉え、販売をパートナーに任せてきた歴史が長く、そこから脱却できていません。市場は先進グローバル企業・日系・韓国系・ローカルによる三つ巴四つ巴の競争に変わりつつあります。
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。今日は、なんと久々にこの方に番組にお越しいただいております。明治大学名誉教授の大石芳裕先生でございます。先生、どうぞよろしくお願いいたします。
大石芳裕先生(以下、大石):よろしくお願いします。
森辺:先生、先日の『SPYDER Global Marketing Conference 2026』では大変お世話になりまして、そこからまだ何カ月も経っていないですかね。3、4カ月ぐらいですかね。
大石:大変盛況でしたね。
森辺:いやいや、本当に、井原先生にもね、出光の佐藤さんにもお世話になって、先生に座長をしていただいて大変盛況で。またたぶん来年もやることになるんじゃないかなと思うので、来年はちょっと後半にやろうかなと思っているので、そのときはまたどうぞよろしくお願いいたします。
大石:はい。
森辺:この番組を聞いている方は、グローバル・マーケティングの権威、大石先生のことはもう皆さんたぶん十分ご存じだと思うんですが、最近どうなんですかね、グローバル・マーケティング界隈と言いますか、最新の状況と言いますか、そんなところのお話から。
大石:そうですね。私が一番気になっているのは、特に東南アジアや中国のこのアジア地域におけるローカル企業の成長というところですね。だから、そこがいろんなチャネル戦略にももちろんそうだし、日本企業の競争力にも影響してくるというところで、この台頭がここ数年著しく進んだ。
森辺:そうですね。
大石:森辺さんもそれを感じていますか?
森辺:ものすごい感じますね。20年前とか25年前って、どちらかと言うと、日系企業の競合ははるか先を行く先進グローバル企業ですと。でも、彼らは世界標準化の上に現地適合化を乗せて、各国で大規模な経営資源を投下してやっているから自分たちの敵ではあまりないみたいな、なんかそんなで、ローカルは一方で安かろう悪かろうをつくっているからはっきり言って眼中にないみたいな、そんなのがたぶん25年ぐらい前だったと思うんですよね。
最近やっぱりお問い合わせ聞くのは、先進グローバル企業が近くなったというのは1つあって、昔は競合じゃないと言っていたのに、今は競合ですと言っている。ここは進歩だと思うんですよ。一方でやっぱりローカル企業をすごく意識していて、ローカル企業がマーケティングという武器を自分たちの企業に取り入れて、日本企業以上に戦略的というか、そんなふうには感じますよね。
大石:だから、例えば最近の事例で言うと、Eコマースで完全に外資系企業がもう排除されて、Shopeeとかそういったローカルのものが強いと、支配的になっているということと。それから、もう1つ、インドネシアから大王製紙が撤退しましたね、紙おむつでね。やっぱり競合との競争が、もちろんそれはグローバル企業も含めてですけども、なかなか日本企業だから、日本製品だからということが通用しなくなっている。
森辺:そうですよね。特に紙おむつは装置産業ですし、棚はぎちぎちに競合の商品で埋まっているし、大手の小売ブランドは自分たちのプライベートブランドを出すし、その受注を中国のおむつメーカーが受けてやったりとか。
大石:そうですね。
森辺:フィリピンのEQとかってローカル系のおむつブランドも、結構、他国に展開もしていますしね、激戦ですよね。
大石:ですね。
森辺:日系だけでも、大王製紙だけじゃなくて、ユニ・チャーム、花王、あと王子さんなんかも出しているのかな。なんかありますもんね。そうだよね。
大石:やっぱりそれが、例えば食料品とか、コンフィクショナリーとか。
森辺:お菓子。
大石:いろんな防虫剤とか、そういった消費財分野に特に典型的に表れてきて、それがやっぱり棚の多くを獲っていくというかたちになってくる。
森辺:そうですね。
大石:そうすると、アジアの流通チャネルというところも、売れるものを当然引っ張ってくるということになると、ちょっとこれまでの競争条件からかなり変わってきて、今、グローバル企業、日系企業、場合によっては韓国企業、そしてローカル企業の三つ巴、四つ巴の戦いになりつつあるという。
森辺:そうですね。結構うちにも問い合わせがあるのは、やっぱり大手の消費財メーカーさんで、もう何十年も前に出ていますと、今ここに来て販売チャネルの再構築、もしくは今の特定のパートナーだけではたぶん不十分で、それ以外のパートナーとの新たな販路の構築みたいなことを考えられている企業さんってやっぱりすごく多くて。ASEANとかアジア新興国って、どちらかと言うと、もともと日系の消費財メーカー自ら戦略的にその市場を獲りに出たかというよりかは、どちらかと言うともともと生産拠点だったし、逆に言うと、現地の企業から売らせてほしいなのか、もしくは製造でパートナーシップを組んで、その延長線上に販売があったので、かなりマーケティングを任せてやってきたという歴史的な背景がすごく長くて、ここに来て、ここに来てというか、ここ10年ぐらいで介在度合いを増やしていったんだけど、最初のボタンのかけ方がもうお任せなので。
大石:おっしゃる通りですね。
森辺:なかなかそこから脱却できないし、任せられたほうも、今まで散々任せておいて、急に首突っ込んできてなんだよみたいな、そういう問題がやっぱりあるんですよね。
大石:10年ぐらい前ですかね、ベトナムに行って、ハノイのジェトロの所長が「日系企業の社長を集めるから講演をしてくれ」って言われて、なんで悩んでいるかと言うと、彼らが悩んでいるかと言うと、今おっしゃられたように、今までは製造して海外に売る、輸出するということが任務だったと、いかにだから効率よく安くつくるかということをやったんだけど、急に本社から「ベトナムで売れ」という指令が出た。でも、それはどうしていいか、今まで私たちはつくる人だったんだから。
森辺:そうですよね。
大石:ね、そこで悩んでいるというお話でしたよね。
森辺:それも本社側の海外担当役員なのか、ちょっと何なのかはあれですけど、そもそもつくる目的で、つくるスペックの人材を送り込んで、その人に現地で売れって言っても、それは無理でしょっていう、いや、どう売るのかは本社で考えてある程度落とさないとっていう。でも、びっくりするぐらい、現地で走りながら考えろと、でも予算はこっちが握っているので、最少の努力で最大の効果みたいなね、いやちょっと、それは無理じゃないかなという、そういう課題で苦しんでいる企業さんは多いですよね。それが改善されたけども、結構やっぱりその延長線上だと思いますね、まだね。
大石:ありますね。昔、YKKの幹部の人なんかが言ってたけど、「いや、うちはもう国際戦略なんかないんだ。とにかく現地に行って、もがいて、そして鍛えられるんだ」みたいなことをおっしゃっていて。確かにね、営業なんかも、もちろん製造もそうですが、経験を積まないとできないことはあるので、そういった部分は今でもあることはあると思うんですが、でもやっぱり全体的な本社の戦略があって、その中でもがくのか。
森辺:本当にそうです。
大石:ただ行ってケースバイケースでもがくのかっていうのは、そのあとの知識の積み重ねも全然違うんですよね。
森辺:そうですね。
大石:ところが、これがグローバル企業だけじゃなくて、今はローカル企業が彼らの幹部というのは欧米のビジネススクールを出たような人たちが出てきてて、それで非常に戦略的なものの立て方をしていくところが出てきてるので、ちょっとそれに対抗するのに従来のやっぱり日本のやり方ではもう勝てないようになってきているというところもあると思います。
森辺:そうですね。いや、本当にその通りだと思います。
先生、ちょっと今日はお時間きてしまったので、この話、次回ちょっと続けて。
大石:分かりました。
森辺:どうやって、じゃあ、日本企業が戦略的に変わっていけばいいのかみたいな話をちょっと次回やれたらと思います。
じゃあ、今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、ありがとうございました。先生、ありがとうございました。
大石:ありがとうございました。



