【特別対談】国際マーケティングの補助線 唐沢 龍也 教授 – これからの国際マーケティング
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この放送の要点
- 唐沢龍也教授がAIによって言語の壁が急速に下がっていると語る。
- AIが出す提案の違和感を見抜く人材こそ価値を持つと指摘する。
- ベトナムなどアジア新興国の成長と若い人口構成に注目する。
- 海外で得た収益を日本へ還元する仕組みづくりの重要性を語る。
関東学院大学の唐沢龍也教授と、これからの国際マーケティングについて話す回です。AIで言語の壁が下がる一方、AIの提案の違和感を見抜く人材の価値が増すと語る。ベトナムなどアジア新興国の成長と、海外収益を日本へ還元する仕組みの重要性にも触れる。
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唐沢龍也 (著)
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。今日も引き続き、関東学院大学の唐沢教授をお招きしております。
先生、どうぞよろしくお願いいたします。
唐沢龍也教授(以下、唐沢):よろしくお願いします。
森辺:先生、今日で最終回ですね。4回目でございまして、今日は少しちょっと大きな視点でお話を伺おうかなと思っていて、これからの国際マーケティングというか、グローバル・マーケティングというんですかね、このアジア新興国市場、次の10年、どんなふうに変わっていくのかなみたいなところのお話をちょっとお聞かせいただければと思います。
唐沢:1つは、AIがこの世界の本当に中心的になっているということと、一方で、1回目で申し上げたように、やはり今、分断が進んでいてブロック経済になっているということと、その中でもやっぱり日本の近いところで言うとアジアの新興国がやっぱり成長しているという中でちょっと次の10年間がどういうふうに展開していくのか、いくべきなのかというのをちょっとこれからお話したいと思いますけど。
1つは、この本のタイトルでもあるんですけど、やっぱり非常に複雑になって、よく言われるVUCAって言われている、非常に見通しが利かない、変動が激しい、不安定なという状況になっていて、やっぱりこれは複雑化している、非常に難しい幾何の問題を解くような状況になっているので、そのときに物事をいろいろ整理する上で、幾何の問題では補助線を引くと一気に問題が解きやすくなるというか、解けていくということがあると思うので、ちょっとそういう補助線という視点でお話を進めていきたいと思うんですけど。
まず1つ目のキーワードというか、補助線の1つはやっぱりAIだと思うんですね。今までは、これはハーバード大学にいらしたパンカジ・ゲマワット先生なんかもおっしゃっているように、セミグローバリゼーションみたいな概念があって、世界はグローバル化しているとはいえ、いろんな違いがあるんじゃないかと、その違いを経営者が認識していないと国際戦略を誤るということが、これは2007年に出された『リディファイニング・グローバル・ストラテジー(Redefining Global Strategy)』という本で、日本では『コークの味は国ごとに違うべきか』というテーマで出た本なんですけど。
森辺:はいはい。有名な本ですね。
唐沢:CAGEフレームワークという、そのフレームワークをこの中でゲマワット先生が提唱されてまして、カルチャーと、文化ですね、アドミニストレーション、制度と、ジオグラフィック、地理的なものと、エコノミックという経済的なもの、この4つの要素でセミグローバル化している、要するに違いがこの4つの要因の中に存在しているんじゃないかというふうに提唱されているんですけど。この中の文化のカルチャーのところにある一番大きな最初に来るのが言語なんですよね。今までは、言語の壁というのが非常に国境を乗り越えていくときにはバリアになっていたというか、障壁になっていたものですけれども、AIの時代になって、この言語のバリアというのが一気にハードルが下がってしまったと思うんですね。やっぱり現地の言葉でコミュニケーションしなければならなかったものが、今、AIを使えばもう同時、リアルタイムで現地の言葉に修正されて伝わるということになっていますから。
森辺:そうですね。優秀ですよね。
唐沢:アリババさんがやっている、アリババドットコムというB2BのそういうオンラインのEコマースのシステムにしても、AIが間に入っていますから、現地からの問い合わせ、例えば「この素材をどれぐらいの量買えば、どういう条件で売ってもらえるのか」みたいな問い合わせがあったとすると、24時間秒で返しますね、答えを。
森辺:はいはい…。そうですね。
唐沢:この秒で返す答えがダーッと続いていったあとに「クロージングは人間に」というふうにバトンタッチされるんですけど、問題はここで一気にパフォーマンスが落ちるんですよね。
森辺:(笑)なるほど。
唐沢:今まで順調に現地語でメールがバッバッと来ていたのが、人間にバトンタッチされた瞬間に返事が来なくなったりとか、そこでこのクロージングに持ち込めなくて止まってしまう。買い手はもう買う気満々で入り口まで来ているのに、そこからAIが外れた途端に、人が介在するとクロージングできなくなってしまうというような、そういう現象があるというのをお聞きしたんですよね。ですから、AIが入ることによってこの言語の壁が一気に下がった。今度はAIをやっぱり使いながら、人間がそれをうまくクロージングまで持っていくというようなことがたぶんできる。今もうそれがAIエージェントというかたちで、人間を介在させないようなかたちにできるだけ持っていこうというふうになっていますので、たぶんそこが解決されるといろんな意味で国境を越えていくことは、もう本当に、国内にいるのとあんまり違いがなくなっていく。
森辺:そうでしょうね。
唐沢:境界線が消失していくんじゃないかなっていうのは、すごい感じていますね。
森辺:そうですよね。いや、僕もびっくりだな。急激ですよね。
唐沢:もうこの1~2年の話だと思うんですよね。
森辺:うちも東という取締役がいるんですけど、AIが出てくると、戦略設計とかデスクリサーチ的なことは、事実、確認とかそういうことはあっても、ある程度できるじゃないですか。そうすると、今度はAI時代で現場で本当のファクトを目にするやつ、つかみ取れるやつしかもう勝てないみたいなことを社内で号令かけてプレッシャーかけまくっていますので、やっぱりこのAIはすごいなと思いますよね。われわれの価値観も大きく変わっていってますからね。
唐沢:あるグローバルコンサルティングファームにいる友達がいて、これはもう2~3年前に話聞いたんですけど、そこのグローバルコンサルティングファームがやっていることは、AIは導入すると、導入しているんだけれども、要するにエンジニアとかが必要なのではなくて、より実務の分かっている人、銀行業務であれば銀行の業務に精通している人を、この人たちを要するにグローバルにハイヤーしていくというか、雇い入れていくことをすると。なぜそんなことをしているかと言うと、AIが出してきた、例えば経営戦略の提案書みたいなものを見て、これ、現実にある企業の社長が見たときに、ここに違和感を感じますよということを判別する、それはやっぱりAIではできないということを早くから感じていて。
森辺:そうですよね、そうですね。
唐沢:さっき森辺さんがおっしゃったように、現場のことが分かっていて、あるいは経営者の立場で、この戦略だとここはたぶん違和感を持たれるんじゃないかという、本当に微細なところを見分けられる能力のある人というのを探さなきゃいけないと。
森辺:そうですね。
唐沢:だから、コンサルティングに必要なのは、戦略提案をつくるというようなことではなくて、むしろAIがつくった提案書を見て、ここは現実とずれているという乖離を感じる人。
森辺:そうですね。はいはい…。
唐沢:これはやっぱり人間にしかできないということなので。
森辺:そうですね。
唐沢:やっぱり今おっしゃったように、現地の文脈とかいうものを深く理解する力を持っているというのは、これはやっぱり人間が持っている力ではあるので、それでAIが出してきたものを違和感が感じられるかどうか、それを修正かけられるかどうかによってその精度が変わっていく、コンサルティングの内容が変わっていくだろうというふうには言っていたんですよね。
森辺:そうですよね。いや、本当にそうだと思う。だから、それを見分けて、あと実行できる人間、だから、結構現場の泥臭い仕事がますます価値になってくるというのは、僕、日々実感していて、どれだけ泥水すすれるかみたいな、そここそがわれわれの価値なんだろうなっていう気はすごくしますね。
唐沢:ある意味非常にアナログなことですよね。要するにデジタルと真逆なことをどこまで丁寧に精密に、本当に日本人が得意なおもてなしの心を持ってできるかというところが、ここは前回のテーマでもありましたけど、やはり日本の持っている強みというのは、やっぱり品質の良いものを顧客の立場に立って丁寧につくれるというところが一番のやっぱり僕は民族として持っている強みだと思うので、そこをいとわずにやっていくということを、やっぱりたぶんね、やるようになると思います。そこにしか、要するに経済的な価値も出てこなくなってくると思うので。今、アメリカでMBA出た人が水道の配管工の学校に行ったりとかして、要するにエッセンシャルワーカーとしての技術を身につけたほうが稼げるということが分かってきたので、MBA出ても仕事ないけど、要するにエッセンシャルワーカーとしての技能をつけたほうが給料が高いということが分かってくると、やっぱりそっちに行くというのは、もうこれ。
森辺:そうですよね。
唐沢:今、森辺さんがおっしゃったような、わりと地道なところにしか経済的な価値がなくなってきているというのは、日本は10年遅れていますから、10年後に必ず動きとして来るんじゃないかなと思いますね。
森辺:そうだよな。ニューヨークのベビーシッターも、ベビーシッターじゃない、ドッグシッターの年収1,500万とかって。
唐沢:そうでしょう。
森辺:難しいこと考えて、なんか嫌味たらしい上司の話聞きたくないですよね。
唐沢:そうなんですよ。
森辺:かわいいワンちゃんをシッターしているほうがね。
唐沢:ただ、やっぱりそこで必要になってくるのは、本当にカリスマドッグトレーナーとしての技量だったりだとか、それを例えばSNSでしっかりと情報を物語化して発信していくような、その知識はやっぱり必要なんですよね。
森辺:そうですよね。
唐沢:そこがたぶんこれからの仕事のやり方というふうになっていくと思いますし、能力のある人はやっぱりそういうところに仕事を求めていくというようになるんじゃないかなと思います。もう1個やっぱりアジアの新興国の、森辺さんのほうがご専門だと思いますけど、やっぱりアジアの新興国は、これはベトナムの大学で、僕も2018年から2022年まで、コロナのときはオンラインでしたけど、2週間に1回行って教えていたんですよね。
森辺:わー、すごい。
唐沢:やっぱりハノイの貿易大学という大学で教えていたんですけど、もう行くたびに新しいビルが建っていくというような、そういう状況だったので、これからやっぱりASEANとかベトナムをはじめとする諸国が成長していくことは間違いないですね。若い人口構成を持っていて、中間層がどんどん拡大しているという国にしか成長ドリブンというのはたぶんないと思います。やはりそこの国の若い人たちなんかが、やっぱり僕なんかが行って教えてくださいという1つの理由は、日本のやっぱりサービスのクオリティーであるとか、やはり日本のそういう強みみたいなものを学びたいというのはあるんですよね。そこをやはりきちっと押さえたかたちでそういうアジアの新興国に対して、さっき申し上げたように、自分の企業の考え方、思想みたいなものをきちっと言語化して理解してもらって好きになってもらうということを、やはり地道にやっていくということが必要なんじゃないかなとは思います。
森辺:そうですよね。そうですよね。だから、個人にとっても企業にとってもこれは大きなチャンスだなというふうに捉えていて、こういう大きな変革があるときって、本当にすごく大きなチャンスがそこにはあるので、まだまだ日本企業のこれからのグローバル・マーケティングにおける勝ち筋って大きく変わってくるから、とてつもないチャンスなんだろうなというのは日々感じたりするんですよね。
唐沢:ですから、分断があるということは、実は米中が対立しているときも、これは僕の師匠の大石先生なんかもおっしゃっているんですけど、実は貿易額って増えているんですよね。トランプさんの帽子、僕はアメリカへ行ったときに買いましたけど、裏を見ると、Made in Chinaって書いてあるんですよ。(笑)
森辺:へえー! そうなんだ。
唐沢:だから、やっぱり、別にMade in USAじゃないんですよね。要するに、そういう彼らの本当に言っていることとやっていることのギャップというのはとてもあって、本当にテーブルの下ではガッチリ手を握っているにもかかわらず、上ではパンチを繰り出しているみたいなところを、ただ単に分断して対立しているかと言うと、実はそんなことはなくて、地下経脈的には非常に強いつながりを持っていて、貿易額は逆に増えているみたいな、そういう状況もありますから。
森辺:はいはい…。そうですよね。
唐沢:この分断の時代を、分断しているからひっこめてしまうというのではなくて、逆にそこには協働だとか価値を共創していくチャンスがものすごいあるというふうに捉えて、やはり積極的にそこに出ていかないと、ただ国内の縮小していく市場に座しているだけでは、たぶんこの先、50年後、100年後にはその企業はたぶんないと思うんですよね。
森辺:そうですよね。
唐沢:日本の市場がちっちゃくなっていくというのは、これはもう算数ですから、半分、半分、半分、半分にどんどんなっていくということはもう間違いないので、そういう意味では海外の市場でやっぱりきちっとしたシェアを獲って、そこでの収益を日本に還元する。だから、還元する仕組みを同時にやっぱりこれはグローバル・マーケティングをやる上ではきちっとつくっておかないと、海外で儲けたお金を海外の市場に回しているだけでは日本の市場はどんどん衰退していくだけなので。
森辺:そうですね、そうですね。
唐沢:そこで得た収益をいかに日本の本国に。
森辺:還元するか。
唐沢:還元するかという、要するにファイナンスの部分での仕組みも同時につくっておかないと、市場はどんどん衰退してちっちゃくなっていくという、やっぱりそういう非常に難しい局面もあると思いますけど。ただ、出ない限りは成長はないというふうに考えないと駄目なんじゃないですかね。
森辺:そうですね、そうですね。ありがとうございます。
先生、大変良いお話を聞けたと思います。全4回にわたって、おそらくリスナーの皆さんも大満足しているんじゃないかなというふうに思います。先生、また機会があったら、お忙しいとは思うんですが、また番組にも遊びに来ていただいて、いろいろなお話ができればと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
唐沢:はい。ありがとうございました。
森辺:リスナーの皆さん、また次回お会いいたしましょう。



