東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、今日はリスナーの方からご質問をいただいているので、ちょっとそれに答えていきたいと思うのですけど、質問を読ませていただきます。仮にRさんと呼ばせていただきますと、「いつもPodcastを楽しく聞いております。日々聞いている中で疑問に思うことがございます。アジアで成功している日系企業、特に売り上げ成長率や販路構築で軌道に乗った企業はございますか?方法論や外資のお話はよく聞きますが、日系企業の具体例を題材として取り上げていただけませんでしょうか?私自身が中国の業務に携わっているので、可能ならば中国での例があれば大変ありがたいです」ということでご質問をいただいているのですけど、中国で具体的に日本企業の販路構築や売り上げ成長率がいいところということで、どういった会社を上げていったらいいですかね。
森辺:ちょっと業種とかいろいろ多分あると思うのであれなのですけど、僕がそれを言われてパッと思いつくが1つはピジョンです。お子さんいる方だと多分誰でも知っているメーカーだと思うのですけど、一部上場企業のピジョンさん。それからヤクルトなんかは非常にうまくやっているし、あと内視鏡で有名なオリンパスさんなんかもそうです。この当たりは非常に中国事業が成功している企業の1つではないかなというふうに思います。
東:分かりました。今日はどの企業を取り上げて少し深くやっていきましょうか。
森辺:例えば、ピジョン。どの企業にも多分共通して言えるとは思うのですけど、ピジョンなんかを例にとると、結局どこの会社も10年とか15年とか辛い時期を過ごしているのです。それと中期系計画なんかを彼らも見て見ると、当初よりも大幅に上方修正をしていくような結果につながっているわけなのですけど、ピジョンさんなんかだと、今手元に中期系計画がIRの資料ですかね。ありますけど、どれくらい今成長しているかな?
東:今現状、ピジョンさんの全体の、全社の売り上げで770億ぐらいです。その内、海外が380億ぐらい。その380億ぐらい。その380億ぐらいの。
森辺:半分ですね。
東:半分が海外、半分が国内みたいな感じですよね。海外事業の内訳を見ると、中国、香港を含んでいるのですけど、224億1,700万と海外比率の、全社比率で言うと28.9%。海外比率で見ると多分6割ぐらいを中国が占めているというような形で、これIR資料なのでピジョンで多分ホームページから引いていただけると思うのですけど、第4次の中期計画が彼たちの、ピジョンさんの中期計画で言うと中国は142億7,000万円しかたてていなかったのですけど、実際上がっているのが2014年度1期実績というと224億1,000万ぐらいあがっているということで、達成状況としては157.1%と。
森辺:なるほど。それぐらいいっているわけですね。
東:結構高いですよね。ピジョンさんは、リスナーの方が大部分男性だというのもあって、ピジョンさん自体をあまりなじみがない会社の人のほうが多いような気がするのですけど、どういう会社かというのを少し森辺さんから。
森辺:ベビー用品を作っている会社です。哺乳瓶とか、赤ちゃんのお尻を拭くやつとか、哺乳瓶の乳首とか、そんなものを作っている会社です。香港にはベビーケア、それからヘルスケア、介護事業なんかをやっている非常に優秀な会社です。これリスナーの質問を答えると、なぜ、うまくいっている日本企業がどこなのですか?ということと、なぜうまくっているのか。この「なぜ」の部分なのですけど、いろいろな会社があるわけなのですけど、関わってたり関わってなかったりする部分もあって関わっている会社だとなかなかお話出来るところとお話出来ないところがあるので、あくまで公開情報だけのお話で申し上げるのであれば、やはり今うまくいっている企業も10年とか15年中国事業で非常に苦労していますよというのが1つです。1番最初に上げる苦労は何なのですかと言うと、まず高精度のいわゆる外資の規制に対する苦労をやはり最初ずっとしているわけです。それが2000年代前半から徐徐に緩和されていくわけなのですけど、そのあとにする苦労というのはチャネルを作っていくというところに相当苦労をされて、そこのチャネルを作る山を乗り越えられた企業が今販路で成功している、要は業績が上向いていると、そういう結論に至っていくわけなのです。例えば、ピジョンさんの例でいうとやはりそれなりの苦労を設立当初はずっとして、販路を作っていったわけです。今多分1万何千店舗と取り扱いがあると思うのです、中国国内に。それだけの取り扱い店というか販売店を作っていくというところもすごく時間がかかっていることですし、政策として病院活動みたいなことを、これはIRの資料にも出ていますけどやっていて、結局赤ちゃん向けの製品を作っているわけなので、ベビー用品店で売るというのが1つです。けど一方で生まれた赤ちゃんが必ずお世話になる病院。ここをどうやって取り込んでいくかというところにも多大なる労力をかけているわけです。それがお母さんにとってのブランドになったり、お母さんにとってのピジョンという会社を知る機会につながって、販売店との相乗効果がより出るという、そういうことです。
東:ピジョンさんのIR資料を見ていただくと、海外事業戦略の全体戦略というところで3つ上げられていまして、重点市場。中期、中長期の視点を含めた市場ポテンシャルから重点を設定し市場改革、進行。重点、ゴカテゴリーのピジョンの強みをいかせるカテゴリーに注力しますよと。3つ目が、森辺さんが言われていた病産院。病院と産婦人科ですかね。病産院活動モデルの水平展開とブランド力の強化とのシナジーということをあげられていますね。
森辺:結局なぜ成功しているのかというというところを言うと、やはりチャネルを作るというところが1つだし、それと同時にブランドを確率していくということが1つだし、あともう1つあるのがやはり人なのです。ピジョンの中国の総責任者は日本の方なのですけど、今本社の取締役をやっている方ですけど、その方も通算で20年近く中国のトップをやられているわけです。今はグローバル全体を見ながらも中国に席を置いて中国を見ている。結局現地、日本人のトップが恐らく9割は中国の日系企業さんは日本人がトップだと思うのですけど、もう20年とかというあれに近いぐらいの方が15年とか20年ぐらいの方がずっと継続してトップをやられている。3年、5年で総経理が交代、はい帰国ということではないです。それは1つピジョンの強さだと思いますし、No.2に中国人を抜擢している。これも1つだと思いますし、あと本社のグローバルマーケティング、グローバルのマーケティングの関連部分にいってもそうですけど圧倒的にグローバル人材が多いです。マーケティングやっている部門が。結局ピジョンさんなんかは世界中どの国に行ったって売っているわけです。ブラジルに行ったって、フィリピンに行ったって、インドネシアに行ったって、どこへ行ったってピジョンの商品は置いてあるわけで、やはり人とブランドとそれからチャネル。そこに徹底的に投資をしてものすごく考えていますよね。優先順位も。
東:1番目の人というところで言うと、これは公開情報だと思うのでいいと思うのですけど、北沢総経理がずっと15年から20年中国にいてやられているということだと思うのですけど、やはり人が変わらないことによって戦略が、販路構築が一貫して行われてきたというイメージなのでしょうか。
森辺:僕も何年か前に北沢さんには取材をさせていただいたことがあるのですけど、誰でもいいというわけではないと思うのです。15年20年誰でもいたらいいというわけではないですし、北沢さんという方もものすごく本当にいい方で、中国だけではなくて非常にグローバルな知見にたけている能力的にも人としても非常に素晴らしい方だというふうに思っていますけど、基本的には長いですよね。ノウハウがものすごく凝縮されているというか、それぐらいやはりいないと分からないですよね、中国市場のことは。それは1つです。
東:多分この方はいろいろ知りたいのでしょうから、2012年の1月10日のカンブリア宮殿の番組にも大越社長とピジョンの上海の北沢総経理という当時の多分役職でしょうけど出られているということなので、もしカンブリア宮殿が過去のものを見られるか分からないですけど、そういったものにも出ているみたいなのでそこでもいろいろ取材を、中国の成功という形でフォーカスされているようですから拝見されても面白いのではないかなと。
森辺:ピジョンさんは株価も非常に好調で、中国事業の影響が株価にもすごく強く反映されているので、そんなところからも見えてくると思います。
東:2つ目の販路構築というのはやはり病院とか産婦人科を中心にこういった運動をしていったというのがつながっているということですよね。
森辺:そうです。結局病産院活動は別に病院で商品を売るわけではないし、基本的には直接的な販売チャネルではないのですが、赤ちゃんとお母さんとの接点というところに関して言えば、病産院は非常に思い切りもろの接点を築けるところなので、そこに投資をしていったと。一方で販売店は1万数千店あるはずなので、それだけ多くの販売店を持っている会社は、多分そうはないと思うのです。だからそれだけの販売店を作っていった。販売店も結局売れる販売店と売れない販売店があるので、それを統廃合していくわけです。その過程が10年だったり、15年だったりしていくわけで、どの省のどういう販売店はどれくらい売れるかという予想はつくようになって。それがノウハウとしてたまっていくから他の省でも同じように展開が出来ていくという、まさにそこが強さだと思っているのです。
東:そういった病産院活動というのが、しいていえばブランディング活動につながっているということなのですかね。
森辺:そうです。特に中国なんかは自分たちの国で例えば紙おむつなんかいっぱい製造して安い紙おむつを製造していますけど、それは東南アジアに輸出して、東南アジアの人たちに使わせて、中国の消費者というのは日本から並行輸入で日本の高級紙おむつ、2倍も3倍もするのに購入して買ってみたいな。そんなことをするわけだから、ちょうど中国という市場とピジョンという高品質でいい商品がマッチしたというのも当然あるわけです。だからそんなことが要因だとは思いますけどね。
東:分かりました。いったん整理をしていただくと、森辺さんなりの理解というか、ピジョンさんが中国事業で成功したものは3つあるとおっしゃいましたけど、最後にもう1回振り返って教えていただけないでしょうか。
森辺:あくまで公開されている情報のみでの判断でございますが、1つは人です。総経理が3年5年でころころ変わらない。一貫して中国事業にリボートするというか、そういう方がトップにいらっしゃるということが1つです。さらに言うとビジョンさんなんかだと副総経理が中国人の女性だったりしますので、現地の優秀な人材を重要ポストに抜擢していると。多くの日本企業だと中国人副総経理とか中国人部長みたいな人のお目付役を日本から同格部長とか同格社員が派遣されてくるわけで、現地法人では現地の人のほうが、役職が上でもなんか日本人だから日本人のほうが上みたいな、そういう変なあれがありますけどそういうのが一切ないという。1つは人です。2つ目がチャネルへの投資。これは2、3年で出来る話ではないので、ピジョンさんも10年、15年と時間を投資して、労力を投資して、お金を投資して今がある。そのチャネルも1万数千店という驚異的な、圧倒的な販売店舗を持ちつつも病産院のような売るチャネルではないのだけれども、赤ちゃんとかお母さんと直接接点をもつ2次チャネルを構築しているというのが非常に素晴らしいことだし、考えられている戦略だと思います。3つ目ブランディングです。このブランディングも結局チャネルとイコールするのですけど、特に後者の両隣のチャネルというのは半分ブランディングの話なので、そこでブランディングが際立って販売店で実際に売りがたつという構造だと思うので、この3つが非常に上手くやれていると。もし、ご質問していただいたリスナーの方の業種と違う場合であっても、それをうまく自分の業種に当てはめていくと多分分かりやすいと思うのです。人とチャネルとブランドが自分の会社はどうなっているのかということを整理していくと、なかなか人は本社の方針があるので変えられないかもしれませんが、次の2つに関しては会社に対して提案は出来ると思うので、そんな観点で見ていただくと分かりやすいのではないかなと思います。
東:分かりました。今日はそろそろお時間なのでここまでにしたいと思います。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。