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第521回 「基準値」を持つことの重要性 その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回に引き続き、基準値のお話をしていきたいなというふうに思っております。多くの日本企業は、自分たちの目標であったりとか、対競合に対する戦略において基準値を持ち合わせていないということが非常に多く見受けられます。自分たちが目標達成するためにはどういう基準値が必要なのか、自分たちが競合に打ち勝つためにはどういう基準値が必要なのか、このことについて、今日も引き続き、お話をしていきたいなというふうに思います。

前回使ったスライドですけども、基準値というのは何かということで、目標や目的を達成するために必要となる、基準となる値ですよね。例えば10億円を売り上げるために、もしくは競合に打ち勝つために必要となる間口数、ストアカバレッジ、これは消費財のメーカーの話ですけども、どれぐらい必要ですかと。その間口を獲るために必要なディストリビューターの数と質、どれぐらいのものが必要ですかと。さらに分解して掘っていくと、じゃあ、そのディストリビューターの中で必要となるセールスマンの数と質ってどれぐらいなんですかと。もっともっと掘っていくと、そのセールスマンの月あたりの活動内容ってどんなのと。まさに指標のブレークダウンをしていかないと駄目ですよと。この基準値を持つ、勝つための基準値、言ったら、この戦況に勝つためにはどういう武器を、どういうタイミングで、どう使わなきゃいけないのかという、この基準値を持たないまま、ただ自分たちは、もうこのディストリビューターって決まっているので、こことやりますみたいな、こういう話ではないんですよということなんですよね。多くの、私が過去20年で見てきた企業というのは、この基準値を持ち合わせていない。例えば、「シェアを上げたいんです。シェア10%まで上げたいんです」と、「なるほど。シェア10%上げるためにはどういう基準値が必要なんですか」という質問をすると、「は? 何の話ですか」ということが往々にしてあります。基本的に、じゃあ、目標を達成する、例えば15万店、売上を消費財で1カ国ASEANで20億にしたいとかっていうときに、20億にするためにはどの小売にまず近代小売に入れなきゃいけないのかということと、どの伝統小売に入れなきゃいけないのかということを計算していくんですけど、そこのブレークダウンをするときに、自分たちより必ず先にいっている競合が、日本の消費財メーカーの場合はいるので、その競合を分解、可視化して、基準値をつくるという、これは非常に有効な手段なので、少しそういう観点でお話をしていきたいと思うんですけど。

次のスライド。競合を可視化する。競合を可視化すると、例えばシェア20%を持っている競合を可視化すると、シェア20%を獲るためには、どういう要素が必要なのか、どういう基準値が必要なのかということが見えてくるわけですよね、その企業を分解すると。もしくは売上30億40億やっている消費財の競合がいると。じゃあ、30億40億やるためにはどういう基準値が必要なのかということが彼らを可視化することで見えてくる。なので、競合調査というのはめちゃめちゃ重要で、戦略の土台づくりにおいても、この競合の戦略をまず学ぶ、戦略なんていうのは何もないところからパッと生まれるものではなくて、やっぱりそこの市場における知見・経験、こういったものから高度な戦略というのは生まれていくわけなので、日本の消費財メーカーの場合は必ず自分たちよりもトップシェアの、大きなシェアを持っている欧米の先進グローバル企業であったり、ローカル企業がいるので、その企業を可視化することによって、彼らが何をやってきて、今何をやっているのかということを見るということはものすごく重要で。

じゃあ、競合を可視化するときにどういう項目を可視化すればいいんですかと言うと、1つはチャネル・ストラクチャーの可視化、1つは組織体制の可視化、1つはマネジメント体制の可視化、この3つを可視化すると、必要な基準値というのは必ず全部見えてくる。自分たちの今の現状と競合を比較をして、自分たちには何が足りていて、何が足りていないのかということが明確に見えるので、必ずこれはやったほうがいいし、自分たちでできるような類(たぐい)のものでもないので、別に弊社でなくてももちろん構わないので、弊社のような競合調査を専門としたような機関、シンクタンク、コンサル会社にお願いをするということが大変重要で。じゃあ、ストラクチャーの可視化って何?と言うと、そもそもデザインで負けているケースというのは多いんですよね。例えば、シェア20%をやるためのチャネル・ストラクチャーってこうあるべきだというのがあって、近代小売のストラクチャー、伝統小売のストラクチャー含めて、こういうチャネル・ストラクチャーじゃないとシェア20%獲れませんよとか、売上30億には到達できませんよと、なぜならば、まさにこれって水道管でね、水道管が通っていないところに水は流れないのと一緒で、日本企業はこのチャネル・ストラクチャーの最初のデザインがめちゃめちゃ苦手。下手と言ってしまってもいいかもしれない。とにかく1カ国1ディストリビューター制とか、1カ国1代理店制みたいな感じでディストリビューターを決めて、あとはお任せみたいなケースが多いんですけど、そんなことでシェア2割なんか獲れるわけないじゃないですかというお話で。この最初のストラクチャーのデザインが非常に重要。組織体制の可視化というのは、基本的には売上とかシェアを達成するために絶対的に必要な、物理的に必要な組織体制というのがやっぱりあって、組織というのがあって、人が必要なわけですよね。人が揃ってないのにいくらストラクチャーだけきっちりやったって、なかなか難しい。20億やるにはこれだけの人が必要なんです。競合は20%のシェアをやるし、20億をやる、そのためにこれだけのスキルセットを持った人間をこれだけ整えているんですということがあるわけなので、これをまず可視化してしまう。次のマネジメント体制の可視化というのは、いくら組織をかたちだけきれいに整えたとしても、その組織がどういうアクションをするかによって、全然成果は変わってくるわけですよね。分かりやすく言うと、100人の営業部隊が週休3日で働くのと…。例えが悪いな。週のうち、例えば1週間に5日あったとして、そのうちの半分の力を皆さんの会社に注ぐのと、1週間全部注ぐのでは全然違う話だし。あと、マネジメントの仕方も、どれだけ効率的なマネジメントになっているか、これは欧米の先進的なグローバル企業なんかは非常にここが効率的になっているので、これを今の現状の自社とね、自社の現状と競合、A、B、C、Dと書いてありますけど、まあまあ何社かを比較すると、その差異が見えてくるので、その差異を埋めていきましょうということになるわけで、基準値が見えてくると。

基準値が見えるとね、非常にそのあとのアクションが具体的になるんですよね。日本企業でうまくなかなかシェアが上がらない、売上が伸びないというのは、なんとなくぼんやりとしたまま、ぼんやりした方向に、ぼんやりと進んでいるから、なかなか明確にならないので。何が足りていて、何が足りていないのかをビシッと明確に決めてしまえば、そのあとはやるかやらないかの経営判断の話になるので、経営が判断をすれば非常にうまく進んでいくということになるわけでございます。なので、基準値を持つためには競合の可視化が大変重要ですよということでございます。

次回ね、このストラクチャーの可視化と、組織体制の可視化と、マネジメント体制の可視化をもう少し具体的な事例を用いて解説をしていきたいなと思います。それでは皆さん、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。