東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、前回のお話しでTTはやはり短期的じゃなくて少し長期的にやらなければいけないっていうのは、よく理解できたんですけれども、そのMTを直取でやった方が良いというようなアドバイスがあったんですけども、その辺についてもう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか。
森辺:まず先進グローバル消費財メーカーは一社の例外も無く、現地に販売法人がありますと。何なら工場もあったりしますと。その中で現地法人がある限り、モダントレードというのは直取をするというのが、形として決まっていますねと。一方で、ディストリビューターを複数活用して進めるのはTTであると。なので結論から申し上げて、現地に法人があるんだったら、やはりMTは直接やらないとダメであると。TTにこそディストリビューターを使うんだと。
しかも、そんな一社二社でベトナムにしろフィリピンにしろインドネシアにしろ、どうこうなる市場じゃないですよと。複数社を使わなければいけない。これは、サブディス含めずにね。自分達が、プリンシパル側がメーカー側が直接管理するディストリビューターとして複数ないといけないっていう。
「まずMTと直取してからTT行って」とかじゃないんですよね。MTでの活動はTTに影響を及ぼすし、TTでの活動はMTに影響を及ぼすので、導入期の参入戦略として、MTとTTを両方一気に行くっていうことをやらないと、いきなり「一万店、二万店取るぞ!」ドーンということではなくてね、まずMTはここの流通を半年から1年間独占的にやろうと。同時に、このMTの店舗がある周辺のTTをやろう、とかね。
分けて考えるじゃないですか、日本の企業って。でも導入期戦略で、欧米の先進グローバル企業と日本の消費財メーカーの大きな違いは、彼らは分けない。MTとTTを同時にやる。日本企業は、まずMTだと。まずイオンだと。まず伊勢丹だと。そっからローカルのMTだと。そしてしばらくしてからTTだなんて言ってたら、一生TT入れないですよ。そこはね、結構違うと思うんですよね。
東:そうは言っても、MTを今ディストリビューターを使ってやってるところは、ディストリビューターを飛ばしてMTには中々行けないと思うんですけど、その辺結構悩ましいところで、ディストリビューターと一緒に行ったところで、じゃあ現実が分かるかっていうと、その辺はどうなんですかね?
森辺:分からないんですよ。ディストリビューターに全て任せて来てるような感じじゃないですか。ディストリビューターにしてみたら、絶対に手間のかかるTTやるよりかは、一気に大量に買ってくれるMTやった方が、自分達の利益率圧倒的に良いので、TTよりも絶対MTやるんですよね。MTも、自分達の利益の限界線がどこかっていうのは、彼ら華僑賢いですから、あんまりたくさんのMTとやると、リスティングフィーがかかると。日本のメーカーによっては、「そういうのも含めて5掛けでお宅に出すんだから、全部あとやってね」っていう取り引きしてるところもあるわけじゃないですか。そうすると、その5掛けで渡されて、メーカーにしてみりゃ1000店舗2000店舗入れたいけど、彼らにしてみたら1000で止めとくのが一番利益率が良かったりもしますよね。
東:原価計算をしちゃうということですよね。
森辺:新たに店舗増やすってことは、新たにリスティングフィーを増やすってことだから。日本消費財メーカーの場合、ダイナミックなプロモーションフィーもくれないし。だとすると、もう一番お金持ちの集まる、一番売れる店舗だけで並べてやるという、まずそれが一つある。
そういう風な取り引きをディストリビューターとやってMTをやっている会社は、何ヶ月かに一回日本から出張者が来ると。その時にディストリビューターに案内されて見せられる店舗っていうのは、彼らが最も力を入れて、最も陳列が綺麗で、ダイナミックに陳列されているところに連れて行かれると。そうすると、メーカー側の担当者は何と思うかっていったら「わー。すごいな」と。「うちの商品よく並んでるじゃないか」と。けど、一向にユーロモニターのデータには、マーケットシェアが上がってこないと。「何であんなに陳列されてるのに、マーケットシェア上がんないんだろう」っていうことになるわけですよね。
東:日本メーカーは行った時に、その最大限陳列されているところが、全てそうであるという幻覚に陥っちゃうんですかね。
森辺:ひどいところだと、その日だけそうなってるとかね。要は、一週間だけディストリビューターがリテールに陳列プロモーション代払って、ドーンとプロモーションしてるけど、次の週にはプロモーション終わってるから通常陳列に変わってて、3SKU以上、みたいな。というのもあるわけですよね。だから、利害が一致しない。
でもこれはね、ディストリビューターが悪いんじゃなくて、日本企業が悪いんですよ。だって結局輸出ビジネスやってるわけじゃないですか。ディストリビューターに、やれと。マーケットのこと、小売のこと、流通マージンのこと、消費者のこと、よく分からんと。お前に5掛けで出すから後は全部やってくれと。それ以上は出さんと言ってやってきてて。日本でね、メーカーが流通のことや小売のことや消費者のことを分からずビジネスするかって、絶対しないでしょ。日本ではしないのに、アジアに行ったらそれをやるっていう。今までアジアに力を入れてきてなかったからね。そういう状況になってるわけなんですけども。
今まで日本の消費財メーカーが本気になっていなかった、っていうのもあるので。今築いちゃったこの中途半端なチャネルを、どうダイナミックにメスを入れられるかっていうのは、すごく重要になりますよね。
東:そうすると、MTは直取をすることが理想であって。
森辺:もっと言うと、MTとTTを同時にやるっていうことの方がすごく重要で、どちらにも影響してくる。
東:もう少し、どちらにも影響してくるっていうのは、具体的にどういうことなのか、簡単にで良いのでご説明いただきたいんですけど。
森辺:MTに置いてある物は、TTのオーナーが置きたがるんですよ。「これはMTで置いてあるから置きたい」と。ただ、馬鹿高かったら置かないですよ?ただ、別にASEANのMTに置いてある物って、高い物もあるけどTTに置いてある物もあるじゃないですか。だから大手の小売が取り扱ってる物は、パパママの父ちゃん母ちゃんも取り扱いたがるっていうことと。
後もう一つは、店舗数で言ったら、MTよりも圧倒的にTTが重要なわけじゃないですか。だからTTを小さな商店って思わずに、日本でいうコンビニと思ったら良いんですよ。イオンで置いてあるやつはコンビニも置きたいし、コンビニに置いてあるやつはイオンも置きたいわけじゃないですか。そうすると、現地の人にとってはTTが我々にとってのコンビニみたいなもんなんで、そう考えると逆にMTからして見たら、TTでこんだけ広まってる物は、うちの棚には安く是非入れたいし、そんだけTTでカバレッジがあるってことは売れてるってことだから、リスティングフィーもそれなりに勉強しますよという話になるわけなんですよね。
だから、MTとTTは持ちつ持たれつというか、全く違う流通って日本では捉えがちなんですよ。MT流通、TT流通って。でも実は違って、根っこは一緒ですよと。だから、同時に攻める。それを先進グローバル企業はよく分かってるんですよね。
東:なるほど、分かりました。じゃあ森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。