東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の続きで。セミナーでよく森辺さんが言ってる4Pの…一般的な4Pって皆さん何となく当然ご存知だと思うんですけど、森辺さんなりの捉え方とか、そういったものがあると思うんですが、その辺を教えていただければと思うんですけど。まず4Pって…
森辺:マーケティングミックスですよね。参入戦略の根幹を詰めて行けば行くほど4Pになってくるんですよね。マーケティングの基本プロセスをベースに戦略を作りますと。RSTPMMのこのMMが4Pで、深く具体的になっていけばなっていくほど、4Pに近づいてくるんだけども。この4Pってプロダクト・プライス・プレイス・プロモーションの4つのPで、基本的にこの4Pが最適化されて、初めて商品は市場に受け入れられるというのがマーケティングなわけですよね。
そうした時に日本企業は、例えばプロダクトだったら何を売りたいのかっていうことを考える。そもそも何を売りたいのかじゃなくて、何が売れるのかってことを考えないといけない。実はこの何が売れるのかっていうのも、自分達の商品は、例えばこういう系の商品と、こういう系の商品と、こういう系の商品の3種類あったら、この3つのうちの何が売れるのかってことをベースに考える。でもそれじゃ全くダメで、一旦自分達が何を持ってるかっていうんではなくて、その市場には何があって何が無いのか。その国の消費者は何に満たされていて、何に満たされていないのか。だからこういう商品があれば、それは求められるんだってことをベースに、一旦自分達のこの3商品持ってるってのは重要なんだけど、ちょっと一旦横に置いて、その上で何が満たされていて何が満たされていないの?消費者は本当に何を求めてるの?っていう真実を追求していくっていうのが、本当に新興国で重要なプロダクトなんですよ。4Pのね。
洗剤を売ってる会社がね、何に満たされているか何に満たされていないかで、いきなり「いやいや、自動車が無いんで自動車売ります」ってそういう話では無いですよ?同じようなカテゴリの中での話なんですよ。何だけど、一旦ゼロベースで考えるってことが重要だし、プライスに関しても、幾らで売りたいのかじゃなくて、幾らなら売れるのかってことを考えるってことをよく言うんですけど。でもその幾らなら売れるんだっていうのもね、その消費者にとって幾らなら売れるんだっていうことを本当に突き詰めて行くと、自分達の原材料が幾らですと。販管費が幾らですと。ディストリビューションマージンが幾らなんで、これだったら出せますが、幾らだったら消費者に売れるんだっていう、そういう計算をするわけですよ。けどそれも一旦横に置いて…凄い重要なんですよ?利益率計算だから。でもそれを一旦横に置いて、この国でこのプロダクトは、幾らだったら消費者が買ってくれるんだと。それで原価計算が合わないんだったら、じゃあパッケージを少なくしよう、グラム数・入り数を少なくしようと。流通マージンをMTは直販に切り替えようとか、TTでも2万店舗までは利益出ないけど、5万店舗に伸ばせば利益が出る方向になるとかってことを、後付けで考えていかないといけないんで。そこもやっぱり一旦ゼロリセットして考えると。
プレイスのところっていうのは、いわゆる流通じゃないですか。チャネルですよね。ここも、自分達の得意な売りたいMTで売ろうとか、そういうことではなくて、この商品をこの金額で売るためにはどの本当にプレイスが最も適しているんだろうかということをベースに考えていかないといけないし。
プロモーションも、「まだ後だ」とかね、「どうだ」っていうんではなくて、その商品を本当に広めるためのプロモーションっていうのは何なのか。よくあるのは、日本で新規の商品投入する時に、こういう成功体験があって、こういうプロモーションやったから成功したんだと。この国のレベルは日本の10分の1だから、これくらいのことやっとけば行くだろうみたいなことでプロモーション組んだりするんですけど、そうではなくて、ゼロから考える。日本でのプロモーションの成功体験なんて、一旦どっか置いとく。その上で考えるってことが凄く重要で、この4Pはね、凄い深くてね、突き詰めて突き詰めて突き詰めることが、マーケットシェアや売り上げに繋がるんで、そこはやっぱりしっかりやらないといけない。
皆さんのやつを見るとね、浅いんですよね、企業が作ってるものはね。これじゃ浅すぎるっつって、またディスカッションしてやり直しをするんですけど、この4Pは凄く重要だと思います。
東:そうすると、今の話を聞いてると、ゼロベースで考えるっていうようなことなんですかね。今の日本で実績が元になってしまいがちですけど、それはそれで重要だけども、そうじゃなくてフラットに見ていかないと色々なバイアスがかかってしまうということなんですかね。
森辺:特に参入時・導入初期は、完全なるゼロベースで考えて、皆さんの日本での経験則や実績は、成長期に初めて使えるものだと思った方が良いぐらいに新興国は全く違って。南アフリカのプレトリア大学のね、「タシミアイシュマル先生(個人名ですので、要確認)」(7'05.84)の本でね、これ日本語化されてないんですけど、英語の本ですけど、「ニューマーケッツ ニューマインドセッツ(New Markets,New Mindsets)」っていう本があるんですよ。これは、新しいマーケットに行く時には、新しいマインドセットでゼロベースで物事考えないとダメだよと。今までの常識や成功体験を持ち込んだら、絶対に成功しないですよっていうことを書いてる本なんですけどね。正にその通りで、皆さんの成功体験はもっと後の成長期とかに活用ができるものなので、ゼロベースで考えるっていうことが凄く重要。ただでさえ日本企業は「や、そうは言っても日本ではこうだし」とか「いや、そうは言っても中間層が大切だって分かっていながらも、富裕層」みたいな話に絶対議論が逸れるんですよ、社内で。だからこそ、なおさら、ゼロベースというのが重要になってきます。
東:なるほど、分かりました。じゃあ森辺さん、今日はお時間が来たので、ここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。