東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回自社セミナーをやった時の質問が来てるんですけども、ちょっとその前にどんなセミナーをやったのかだけ、振り返りだけしてもらえばなと思ってるんですが。
森辺:ちょうど12月にですね、今年最後のスパイダーグローバルマーケティングセミナーっていうのをやりまして、今回は消費財のメーカーさんだけを対象にして、アジア新興国における新チャネル戦略ということで、主にはチャネル構築であったり、先進的なグローバル消費財メーカーのチャネルの具体的な事例を見つつ、日本企業がどういうチャネル構築をしていくべきかみたいな、そんな話をさせていただいたと。
東:その中で何名の方かからアンケートをいただいて、その中に質問事項が書いてあるんですけども、匿名でお話しした方が良いと思うので。一つ目がですね、ディストリビューターは物流事業者を兼ねているんでしょうかと。特にフィリピンの状況をご存知でしたら教えてください、みたいなご質問があるんですが。そもそもディストリビューターと我々も結構言ってるじゃないですか。その定義というか、こういった会社がディストリビューターなんだよっていうのを、ちょっと森辺さんなりに解説していただけないでしょうか。
森辺:僕は消費財ではディストリビューターと言うようにしてて。B to Cではね。B to Bでは代理店っていう風に言うようにしてるんですよね。でも消費財で言うディストリビューターって、言ったら日本の代理店さんっていうか、問屋さんだよね。そういうものに近くて、メーカーさんの独占・非独占を問わず、商品を小売流通に配架してくれる人達。これをディストリビューターと呼んでいますと。定義してますと。
その中で、この質問の答えを先に言うと、イエスですと。ディストリビューターは物流事業者も兼ねているという。事業者を兼ねているというよりかは、物流機能を兼ねているというのが近くて。例えば日本だと、日本の消費財メーカーの商品をね、小売直で売ってる場合もあれば、間に問屋さん…いわゆるディストリビューター通じてやってる所もあると。
じゃあこの問屋さんは何をするかって言うと、基本的に小売への営業をしてくれますと。小売に商品を納めるのは、問屋さんがやるかっていうよりかは、ヤマトや佐川がやることですねと。それは日本は世界でも稀に見るヤマトや佐川のような宅急便的な運送事業が発展しているのでそうなってるけども、フィリピンだけじゃなくてね、アジア新興国はそういう会社がほとんど無いので、ディストリビューターがその機能を担っているというケースがありますよという感じですかね。
東:そうすると、物流機能を兼ねていますと。具体的に物流機能だけではなくて、ディストリビューターにも幾つかタイプがあると思うんですけども、参考までにどういった形態があるのかっていうのを、少し教えていただきたいんですが。
森辺:これは、ディストリビューターは幾つかの機能を持っていますと。特徴的な幾つかの機能って何ですかっていうと、まずインポート機能、輸入をする機能が一つですよね。もう一つが、セールスの機能。これは日本で言うところの問屋さんと一緒で、営業するという意味の機能。それからデリバリーの機能。このデリバリーっていうのが、まさに物流機能なんだけども、小売への配架であったり、代金の回収業務をしていくという機能。それからMD機能、マーチャンダイジングの機能ですよね。それから、プロモーション機能。これはATL・BTL含めてプロモーションしますと。ですから、この5つの機能が主たるディストリビューターの機能で。
日本だとね、物流はヤマトや佐川がやるし、プロモーションは広告代理店の仕事だから、基本的には問屋っていうのはセールス機能だけという風になっているんだけども、アジア新興国ではこれを全部持ってる所ってのは相当な大手なんで、売り上げ数百億で結構外資との取り引きが厚い、いわば先進グローバル消費財メーカー、P&Gとかネスレ・ユニリーバ、ジョンジョン、そんな所とお付き合いをしているような所が多いですけど。
でも殆どの所はね、セールスとデリバリーですよ。そこの二つの機能がやっぱり。そこにインポートのライセンス持ってるか持ってないかぐらいの話なんで、そんな所が多いんじゃないかなと思いますけどね。
東:なるほど。特にこの方はフィリピンの状況を教えてくださいということなんですけど、フィリピンの市場の状況と、ディストリビューターの特徴等があれば教えていただきたいんですけれども。
森辺:フィリピンは、いわゆる生産拠点としての誘致が実は遅れた国でございまして、工場がそんなに多くないんですよね。一方で税率優遇を受けるために、パッキング工場とか半製品で送った物を最後ちょちょっとこう、あれする工場とかっていうのはあるんだけども、基本的に商品をゼロから作るっていう工場は無いと。ですから、多くの商品が海外からの買い入れなんですね。なので、ディストリビューターの大半はインポートライセンスを持っていますというのが、ある程度の規模があればね、フィリピンの特徴ですよと。
また、彼らはセールス機能をディストリビューターというところが殆ど有してます。ベトナムとか行くと、小規模なのはデリバリーの機能しか持ってなかったりするじゃないですか。けどフィリピンの場合はセールス機能を殆ど有しているし、自分達のデリバリー機能…例えば、デリバリーをする車であったりバイクであったりトラックであったりを持っていると。一方で、それだけでは中々賄えないので、3PL使って第三者の…もうこれは運送会社だよね、運送会社にお願いをして配達をするということもやっているというのが特徴ですかね。
主要三都あるんですけど、一番大きいのはメトロマニラの地区に大体本社がある。次がセブ島なんですよね、あの国は大きいのが。ビサヤという真ん中のあれですけども。最後ミンダナオになるんだけども、ダバオとかですよね。なんですけど、市場構成から言ってもメトロマニラのディストリビューターをまず掴まえるっていうところが多分凄く重要になってくるんじゃないかなと思いますけどね。
東:例えば、フィリピン独自のディストリビューターの特徴とか、そういった物は森辺さんなりに少しでもあれば、ご参考程度に教えていただければと思うんですけど。
森辺:フィリピンならではの特徴…ちょっと難しいけど、大きい所でも数百億前半ぐらいの売上規模ですよと。大体歴史は長くても20年から25年、そして今二代目っていうのが大体そんな状況なんですよね。でもこれって別にフィリピンが特にそうなのかっていうとそうじゃなくて、結構どこの国でも華僑がやってて二代目で歴史25年でデカい所は数百億前半ってのは大体同じなので。後、殆ど民間ですよね。100%民間。ベトナムとか行くと元…
東:国営とか。
森辺:政府の人がやってるから、実際は民間なんだけど事実上…というか現実的には国営っぽいみたいな所もあったりするじゃないですか。あと特徴としては…英語が上手いっていうぐらいですかね。他の国のディストリビューターだと、英語が中々通じないっていうか、あるじゃないですか。ベトナムのディストリビューター英語でミーティングできるの多分半々ですよね、きっとね。そうすると、英語が上手いんでかなり楽っていうのはありますよね。マレーシアと同じぐらいの国。シンガポールとかね。
東:結構、日系メーカーはどうなんですかね?日本の企業はフィリピンに対しては…
森辺:消極的ですよね。ASEANの中ではね。ちょっとイメージがあんまりよろしくなかったっていうのと、ちょっと怖いみたいなイメージもありますしね。ただ一方で、2050年度ベースにはIMFのデータで、インドネシアよりも国力は上になるというデータも出てるので、ここ最近注目はしている市場ですと。
ただやっぱり、サリサリストア80万店の攻略みたいなところが重要になってくるので、少し消極的であるのは…インドネシアとかに比べるとね、実際あるのかなとは思いますけどね。
東:分かりました。じゃあ森辺さん、ありがとうございました。ぜひこの方も、もう少しちょっとpodcastでは中々お答えしづらいというか、伝わらない部分もあると思うので、メール等でお問い合わせいただければ、もう少し回答できると思いますので、よろしくお願いします。じゃあ森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。