東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回のライオンさんのIRから記事を引っ張ってきて、ちょっと事例としてご紹介したと思うんですけども。森辺さんなりの仮説と言いますか、なんでこうなっちゃったのっていうのは、どんな感じなんですかね。
森辺:結局フィリピンの市場取りに行きましょうよと。ただ取りに行くにも販路がないよねと。販路作りに時間かけてらんないと。今既存である販路使えばいいと。ピアレス?販路持っとるやないかと。同業種じゃないかと。いいじゃないかと。合弁しようやと。僕らの方が良い製品は作れると。彼らの販路使って売ればいいってのが、基本的なこの合弁の考え方だったと思うんですよ。あくまで仮説ですよ?僕のね。合弁をしましたと。販路が欲しいということと。
後消費財なんて、最終的に現産現販しなかったら儲からないじゃないですか。だってコストの関係があるんでね、日本から輸出してたら儲からないよね。なので工場も作って。資本金ちょっと嵩むけど、自分達だけでやったら14億まるまるかかっちゃうと。相手がいたらそれ7億で済むわと。しかも相手がいたら7億で済む上に、販路も手に入るっていう、こういう話だったと思うんですよ。コスト半分じゃないかと、よっしゃーっつって行ったんだけど、結局そのコンフリクトがあったと思うんですよね。
日本の会社と現地の会社が商品を作った時にね、ライオンさんシステマって歯磨き粉売ってるんですけど、フィリピンではねハッピーっていうね、ローカルの歯磨き粉があるんですよ。中々面白い味のする歯磨き粉なんですけれどね。それがすごいシェア持ってるんですよ。本当の意味で言ったらね、多分システマの方が圧倒的に歯は白くなるし、圧倒的に歯垢は除去できるし、圧倒的に何か素晴らしいんだと思うんです。ハッピーなんて、磨いた気分になってるだけでもしれない、もしかしたら。
けど、多分フィリピンの人にとってはそっちでいいんですよ。日本の企業が合弁で関わった会社が、そんな安かろう悪かろうの商品作れないじゃないですか。だからチャネルは合弁先のピアレスから手に入ったんだけど、結局商品が本当の意味でのフィリピンの中間層の求める商品にならなくて、結局チャネルを折角手に入れたんだけど、消費財メーカーにとって重要なのって自分たちの商品をいかに多くの人に繰り返し買ってもらえるかが重要じゃないですか。そのためにチャネルが欲しいわけですよね。チャネルを手に入れたんだけど、その中間層が求める商品になりきらなかった。
結局4Pで言うと、中間層の求める商品を中間層が買える価格で、中間層が買いやすい売り場に並べて、中間層に選んでもらうプロモーションをやるというのが4Pじゃないですか。そこの最適化にうまく回んなかったんだと思うんですよ。それが結果売り上げは11億まで行ったんだけど、MTに基本的に最初の4年間にフォーカスしちゃったんで、導入費がかかって債務超過になったと。おいおい当初の想定以上に儲からんじゃなかと。危険だ、撤退と。という感じだと思うんですよね。
代弁済をね、いくらやったのかわかんないですけどね、債務超過解消してからピアレスライオン対して債務債権放棄してるっていうね。ただ、おそらくですよ?僕もそのIRの資料全部見てないんでね、開示されてる情報・開示されてない情報もあるんでね。資本金14億の内の51%なんで7億強ぶっこんで、7億強損して帰ってきたって話だと思うんですけど、4年でね。7億あったらね、色んなことできるんですよ。本当にチャネルが欲しかったんだったっら、もうちょっと7億を分散的に投資をしてね、自社のチャネルを上手く使えばね、もっと色んなことできたんじゃないのかなぁって思うんですね。
だからチャネルが欲しいがために現地の同業種と合弁って、ちょっと流行んないじゃないですか、もう。2000年代後半ぐらいまでのモデルだと思うんですよ、これね。
東:ライオンさんはタイでそれで上手く行ってるから…
森辺:タイはね、特殊ですよ、タイは。タイとインドネシア。タイとインドネシアは特殊。日本人大好きじゃないですか。国民性もあるし、だからそこはちょっと「○○」(7'15)だったのかなぁって。でもまあ、ライオンマレーシアもそうですよね、確か。マレーシアも合弁でやってますもんね。だから会社の戦略としてはそういう感じなんだと思うんですけど。
ちなみにね、ライオンとか花王さんの競合にあたる先進グローバル消費財メーカーのユニリーバとかP&Gは、こういうことは世界ではやってないです。アジアではやってないですね。彼らは自前でやってるので、ちょっとなかなかどっちがいいのかなーっていうのはね。ここまでやるんだったらピアレスまるごと買っちゃうとかね。そっちの方が僕はいいんじゃないかなと思うんですけどね。内部留保もたっぷりあるしね。
ちょっと好き勝手言って、これライオンさんが聞いてたら「なんだあいつ」って思われたら嫌なんですけど、全然悪気は無いんです。ただこの仮説をもとにこういう話をして、皆さんの事業のヒントになればいいなっていうだけで。ライオンさんごめんなさい。題材にして許してください。
東:分かりました。じゃあ森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。