サカニシ:皆さん、こんにちは。ナビゲーターのサカニシです。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
サカニシ:森辺さん、今日は、最近、森辺さんが気になるとおっしゃっている会社、それをシリーズとしてお話を進めたいなと思うんですれども、1社目からご紹介いただけますか?
森辺:気になる会社、そうなんですよ、僕、前から気になっていて最近もう気になり過ぎちゃって、このPodcast「森辺一樹のグローバル・マーケティング」の題材にしたいというふうに言っていて、今日は、その気になる会社をみんなに紹介したいなと思っていて。何がどう気になるかというか、で言うと、決して僕のクライアントですとか、僕が社長を知っていて、この番組を使ってこの会社を褒めてゴマ擦っていますとかそういう話ではなくて、全く取引ないんですよ。全く取引ないんだけど、僕が日々の生活の中で、この会社の商品を買ったり食べたり使ったりしていて、こういう会社こそ本当は海外やらなきゃだめだし、こういう会社こそ海外に可能性があるし、日本の宝だなというと大げさかもしれないけど、こんな素晴らしい会社が日本にはあるのに海外できていないなんてもったいないよって、そういう意味でいくつか僕が気になってる会社ということで今回から紹介していきたいと思うんですね。
サカニシ:はい、お願いします。
森辺:1社目が「なとり」という会社なんですよ。前にもこの番組でたぶん話したことがあると思うんですけど、平仮名で「なとり」という会社なんですけど。上場企業なんですけど、実は上場しているんだけども、そんなに皆さん知らないじゃないですか、「株式会社なとり」で東京の会社です。昭和23年に設立をしている会社で食料品の製造販売なんですけど、おつまみの製造販売なんですよ。結構地味でしょ? シュールでしょ? 言ったら、例えば、「ハウス食品」とか「味の素」とか「キューピー」とか、食料品の製造販売している会社、みんな誰でも知っているじゃないですか。
サカニシ:はい。知っています。
森辺:ただ、「なとり」は結構レアな感じでしょ?
サカニシ:比べるとそうですね。
森辺:なんだけども、実はコンビニやスーパーでチーズ系、それからサラミとかジャーキーとかお肉系、それからイカ系、スルメ系、ナッツ系、こういうおつまみ系でうまいと思うものは、だいたいこの「なとり」って書いてあるんだよ。おつまみの王様だと僕は思っていて、この「なとり」という会社はね。特に、僕がおいしいなと思ったのが、前にもサカニシさんに言ったと思うんだけど、ローソンとかだとローソンセレクトで「デンマーク産サムソーチーズを使用したスモークチーズ」というタイトルで出ているんだよね。それは彼らのブランドでは「一度は食べていただきたい燻製チーズ」という、商品名が面白いでしょ? 長ったらしいでしょ? 「一度は食べていただきたい燻製チーズ」。
サカニシ:(笑)気になるタイトルですね。
森辺:でね、この燻製チーズ、スモークチーズ、一緒のことですけど、この燻製の味、本当に美味しいんだよね。北海道の山小屋で冬に燻製チーズを食べているような錯覚に陥るぐらいに本当に美味しいの。サラミなんかも香辛料を効かせ、スパイシーな味わいに、あらびきコショウサラミとか、黒コショウサラミとか、これ、ローソンセレクトで出ているんだけど。
サカニシ:そそられるタイトルですね。
森辺:うん。僕ら、このサラミとスモークチーズを合わせて一緒に口の中に放り込んだときに本当に美味しくて。「なとり」の、僕は商品の最高峰は、これはたぶん、ネットで買うと299円とかなんかそんな200円台なんですけど。
サカニシ:安めの。
森辺:うん。「贅沢なチーズ鱈 生クリーム仕立て ポルチーニ&白トリュフの香り」という商品があるんですけど。
サカニシ:名前が美味しそうですね。
森辺:このチーズを鱈で挟んであるんですよ。これがポルチーニとトリュフの香りがするんですよ、香料かけてあって。290円か何かでよくこんなクオリティの味を出すなあと思って。もはやこれはアジアじゃない、北米向けだと僕は思っているの。ただ、すごいちっちゃいのね。僕はもう、チーズをでっかくガブッて食べたりするのは無理なので、フレンチのコースの後に「チーズどうですか?」って言ってお皿の上にいろんなチーズがダーッといっぱい出てくるのとかちょっと無理で、ちっちゃいチーズを少量食べるのが好きなんだけど。北米の人たちはガッツリいくからね、チーズね、サービスを大きくしなきゃいけないとかいろんな商品の現地適合化はあるにせよ、ものすごくたぶん向いていて。でも、この会社、売り上げがどれぐらいだったかな…、数百億ぐらいだったと思うんですよ。
サカニシ:そうですね。
森辺:ちょっとこの会社の名誉に関わるのでIRをしっかり見ようと思いますが…、四半期決算、そうですね…、300億、400億ぐらいの会社ですよ、売上高ね。なので、やっぱり300億~400億ぐらいの会社だとなかなか自力で今のグローバル市場に販売チャネルを構築していくということというのは難しくて、日本の輸出入商社とか、現地の輸出入商社にひたすら商品を出して、あとのことはお任せしますというか、あとのことには介在できませんと。もしくは、商品が勝手に平行輸出で海外に飛んでいっていると、もう輸出されていっていると。従って、現地の景気がいいのと円安が維持できれば輸出は増えるというビジネスになっちゃっていると。ただ、こんな単に輸出しているだけのビジネスって港から港の商売をしているので、こんなのはグローバルビジネスとは言えないんですよね。一番重要なのは、こういう食品メーカーが日本でもやっている通り、自分たちの商品がどういう中間流通事業者を通じて、どういう小売にどういうふうに並べられて、それを手に取った消費者が何を思ってそれを買ったのか買わなかったのか、もしくは買った消費者がそれを何を思ってリピートしたのかしていないのかということを追っていくビジネスが消費財のビジネス、食品のビジネスだから、そういうビジネスを海外でもやらなきゃいけなくて。海外に工場を持つ必要はない、まずはね。輸出でいいんですよ。だから、モデルとしては輸出型なんだけども、チャネルビジネスをしないといけないと。単に第三者任せの、輸出入商社任せの売り切りビジネスはグローバルビジネスとは言えなくて。でも、分かるんですよ、こんな300億ぐらいの会社でそれはできないですから、そんなことはね。人もいない、ノウハウもない。そんな中でどうやるの?と。ただ、これだけ素晴らしい商品をつくる「なとり」みたいな会社を僕は手伝いたいし、こういう会社こそ世界で勝つべき会社だと思うんですよ。それがすごく僕は…、何だろう、何て言うの?こういう気持ち、やりきれない、もどかしいというふうに思うんですよね。本当に素晴らしい会社で、「なとり」はまだまだ海外で伸びる。ただ、この会社はやたらめったら海外というわけでもないし、必ずしもアジアというわけでもないし、かなりセグメンテーションしっかり決めてやっていかないとなかなか難しいだろうなとは思いますけど、すべては販売チャネルですよ。なので、この「なとり」という会社に大いに期待したいというふうに思います。今日はこれぐらいでいいですかね?
サカニシ:分かりました。また、では次回にいたしましょう。
森辺:はい、ありがとうございました。
サカニシ:ありがとうございました。
<終了>