東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:前回に引き続き、今月は南アフリカキャンペーンということで。
森辺:すごい南アフリカ続きで、引き続き旅の続きをお話したいと思いますけども。前回、大使公邸に行きましたという話でしたね。
東:そうですね。
森辺:そこでいろんな方と懇親をして、南アフリカの現場の話をいろんな企業の方から聞いて、大使にもよくしていただいて、竹中先生も参加されて。次の日は朝からインベスティックバンクというところに、タシミアイシマルという先生を訪ねて行ってきまして。このタシミア先生、ギブスというプレトリア大学の大学院の講師をしていたんですけどもBOPのビジネスの権威です。今はインベスティックバンクの中でBOPのビジネスに特化をした会社を興されて。インベスティックバンクって南アフリカで非常に大きなプライベートバンキングなんだけども、今、やっぱり欧米の最先端の企業というのは富裕層からどうお金を取るかということ以上にこのBase of Pyramid。日本企業は中間層でもたもたしていますけど、その下の低所得者層、BOPというのはBase of Pyramidの略で、そこの層って一番数が多い。世界で40億人いるわけですよ、1日に3ドル以下で暮らしているような人たちが。その人を対象にしたビジネスをどう生み出せるかというもの、インクルーシブビジネスとかって今言うんですけど、そういうスタディーをタシミア先生のところで毎年受けていて、これが1時間半ぐらいあって。米倉先生と竹中先生と参加者とみんなで聞きに行ったという、そんな授業だったんですけど、すごくよかったですね。
東:タシミア先生というのはどういう先生かというのを少し教えていただきたいんですけど。
森辺:もともとプレトリア大学のギブスという大学院でBOPビジネスを教えていた先生で、もともとのバックグラウンドは歯医者なんですよ。歯医者の医師免許を持っていて歯医者になりましたと。たぶんお父さんが歯医者さんなんじゃないかな。歯医者さんになったんだけど、歯医者つまらないと。でもまあ、歯医者だから先生すごい歯並びいい、いつもきれいな歯並びだなと思って見ているんですけど、歯医者をやめて金融に行ったんですよ。金融に行って、あまりのこのグリーディーな世界、この禁欲にまみれた世界に嫌気がさして、「自分は貧困の人たちBOPの人たちを豊かにしたい」と言ってギブスに行ってそこで貧困の研究を始めたという。そこでBOPの研究を何年かした後、再び金融に戻ったんですよ。僕は「あれ?先生、金融いやだって言ってギブスでBOPを教えていたのに、また金融に戻ったのか。魂売りやがったな」と思ったんですけど実は違って、インベスティックバンクの中で貧困に対するビジネス、サスティナブルなビジネスをどう確立するかということを、企業としてベンチャー企業を立ち上げてそこのCEOをやっているということをおっしゃっていて。今って世界の45.6%の富を世界の人口の0.7%の人たちで牛耳っているんですよね。これって昔はもっと低かったのに、もうこんな数字になっちゃった、0.7%で45.6%。一方で73.2%の人口で世界の富の2.4%の富しか得ていない、こんなことが起きていていいのかと。一度お金を持ってしまったら、言ったら不労所得でどんどん、どんどん、膨れ上がっていくわけじゃないですか。だから、相続税という税金があって、その人が80歳で死ねば財産の半分は税金として持っていかれて遺産相続は半分だけよと。持っていかれた税金というのは、それはまた民に流れていくわけだからうまく考えられているわけなんですよね、相続税というのは、実はね。ただ、こういう所得格差に問題意識を持っていて、どうやってこれを遅らせるか、もしくはどうやってこの73.2%の人たちにより多くの富を分け与えられるかという事業を今やっていて。彼女の事業の話というよりかはインクルーシブビジネスについてお話を聞いたと。この授業がめちゃめちゃ毎年評価高くて、すごくよかったですね。いろんな事例を、先生、現場主義なのでいろんな事例を話されていて、「すごくよかった」という声が多く聞かれました。
東:例えばどんな話をしたか、ちょっとかいつまんで。
森辺:例えばアフリカで、例えばBOPって日本って散々失敗しているわけですよ。いろんな官民でBOPをやっているんですけど。そもそもBOPって僕、中小企業には向いていないと思っていて。なぜならば多くの経営資源を必要としているから。大企業のBOPも、結局自分たちの売りたいものを売りたい値段で中途半端な価格調整で、みたいなことをやるから空回りしちゃって慈善事業みたいになっちゃっていて。貧乏な人たちにただであげて、そんなことをしているから、「社会貢献でしょ、私たちの会社」みたいな、そんな感じになっちゃっていると。ただ、本来、BOPビジネスというのはBase of Pyramidの人たちを対象にして永続的な収益を上げることが彼らを豊かにするということなので、これは決してチャリティーではないし、慈善事業でもないわけなんですよね。そこにサスティナブルなビジネスを生み出さなければBOPビジネスは成功でないというふうに僕は理解をしていて。けど、いずれの日本企業もそれができなかったと。成功しているようなグローバルな企業ってどういうことで成功しているのかという、そんなお話で。事例を挙げると、エンペサという携帯を使ったお金を送金するサービス。携帯で、スマホじゃないですよ。彼らはガラ携で「ピピピ…」と打てば、Aというところにいる人がBというところにいる人にお金を送ることができて、そのBという地点のパパママショップみたいなところでお金が引き出せるという、そういうやつとか。あと、保険屋さん。アフリカの農民に保険を売りたい、あと、タネを売りたい、そういう人、そういう会社が組んで。保険、「間伐で苗が育たなかったときに保険が出ますよ」ってアフリカの農民に言ったって、そんなもしものときのお金なんかアフリカの人たち絶対出すわけがないじゃないですか。それを、タネに保険がセットになっているんですよ。このタネを買えば、もし豊作にならなかったらならなかった損害を保険が賄ってくれると。保険はどういう仕組みになっているかというと、もうアフリカ中に建てられた通信ポールみたいなもので毎日の天気が全部記録されているので、「はい、雨が何日しか降らなかったのでこの地区は不作でした、豊作でした」というのを自動で計算して、何も申請せずに自動でそのさっき言ったエンペサという携帯にお金がポーンと振り込まれるわけですよ。そうすると、こんな便利なものないわけなのでその保険付きのタネをみんな買うようになっているという、そんなお話とか。徹底的じゃないですか、やっているのが。だからすごく面白い話で。久々に1年振りにまた聞きましたけど、すごいよかったですね。
東:分かりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
<終了>