東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回、前々回と戦略の話をしてきたんですけれども、結構、日本企業のIR資料とかを見ていると、アジア新興国に関して言えば、欧米はまた違うんでしょうけど、結構、プレミアム、プレミアム戦略なのか、プレミアムの富裕層を狙っていこうなのか、そういったかたちで、言葉としてプレミアム戦略という言葉が結構目につくと思うんですけど、その辺はどうなんですかねというか、それがいいか悪いかというよりはスタンスの問題もあると思うんですが、その辺は?
森辺:はっきり言っていいですか?
東:はい。
森辺:はっきり言って、僕はアンチプレミアム戦略なんですよ。でね、まずそれには理由がありますと。1つ、人口構造から言って、アジアの中間層って2030年に30億人になると言われていて、対して富裕層って数億人なわけですよ。この数億人と言っても非常に大きいんだけども、アジア10数カ国にまたがった上での数億人で、このプレミアム戦略って日本のIR上とか、聞こえは非常に耳障りがいいんですよね。けど、この今、ベトナムから放送していますけども、この国でプレミアム戦略、例えば、通じる層ってごくごく限られていて、アジア新興国の最大の魅力は30億の中間層をどう攻略するかというところに主があって、そこを狙わないで、プレミアム戦略と言っているんだったらそもそもアジアに出る必要性全くなくて、日本の地方都市でプレミアム戦略とか、日本の一部のどこかでプレミアム戦略と言っていたほうがよっぽどビジネスとしては楽なわけですよ、こっちに出てくるより。だから、そのプレミアム戦略って単に中間層を取るための戦略がないから、もしくは難しいからつくれないから、上位中間層とかプレミアムという言葉に逃げているだけなんですよ。だから、僕はこのプレミアム戦略は大反対で、そもそもそんなことを求めている市場ではないし、自分たちの商品をできる限り変えないでそのまんま売れたらいいなという日本の企業の怠慢がこのプレミアム戦略を生んでいると思っているのね。これが日本の、半年に1回、3カ月に1回、飽きてしまう、非常に特殊な消費者を売っているんだったら、プレミアムチョコレートとか、プレミアムハイチュウとか、プレミアムポッキーとか、あるのかないのか知りませんけど、プレミアムなお菓子いっぱいあるじゃないですか、プレミアムデザートって。それをやればいいですよ、日本では。なんだけど、その流れをアジアに持ってきて成功している、例えば、消費財で言ったらね、消費財と言っているのは、僕は、食品ね、菓子、日用品、飲料、このカテゴリーで言ったとき、食品、飲料、菓子、日用品、そんなの無理ですよね。例えば、チョコレートでプレミアムポッキーとかプレミアム何とかって出したって、ゴディバがきたらもう突き抜けてプレミアムなわけじゃないですか。とか、ハリウッドセレブに流行っている何とかチョコレートと言ったら突き抜けてプレミアムだからそこまでプレミアムでいくんだったらいいけども、このFMCG(First Moving Consumer Goods)並びに、その周辺にいるようなメーカーがプレミアム戦略をアジアで売り出すのは大きな間違いだと僕は思う。
東:なるほど。そうすると、なかなかプレミアム戦略だけでは難しいと。
森辺:難しいよね。プレミアム戦略にするんだったら、そもそも現地に拠点もいらないし、工場もいらないので、日本から輸出したほうがいいですよ。例えば、日本でよく売っているヨーロッパのお菓子、ハリボーとかあるでしょう、クマのグミとかね、あれ200円300円しますよね、日本で。あれもう、プレミアム戦略じゃないですか、ああいうことをやるんだったらいいですよ。原価ただみたいなグミをどこかヨーロッパのほうから輸出してきて、高いヨーロッパのお菓子。現法出るんだったらプレミアムじゃないんですよね、中間層なんですよね。現法ないので輸出でやるんだったらプレミアムでいいと思いますよ。ただ、売れる場は限られるし、得られる収益も限られるというところの違いはあると思います。
東:本格的に現地に法人をつくって現地の指標を取りに行くとすれば、プレミアム戦略というのはなかなか難しいと。そうじゃなく、5億なのか10億なのか10数億なのか分からないですけど、輸出レベルでまずはやろうとするときに日本の商品をそのままというのは。
森辺:ありだと思います。
東:ありだという。ステージによってだいぶ違うということですよね。
森辺:はい。輸出のステージで始まる、であれば、まず当面5億でいいんだと、10億でいいんだということであれば、プレミアム戦略はいいと思うんですよ。
東:考える余地はあると。
森辺:ただ、1カ国5億10億の売上で満足するようなメーカーじゃないじゃないですか、今、われわれが言っている食品、飲料、菓子、日用品のメーカーって。そうすると、当然輸出である程度現地でシェアをつくったら、現地に工場なのか、アジアに工場を持ってそこからアジアに売っていくとかということをしていかないといけない。そうなってくると、プレミアムじゃもうパイが小さいですよ、そもそも。
東:分かりました。
森辺:そこはなかなか。イメージで言うと、日本って100万人赤ちゃん生まれているじゃないですか。それだけを狙っているビジネスみたいな、例えば。1億2,000万人いるのに、それぐらいの比率なのでなかなか難しいんじゃないかなと思うんですよね。
東:分かりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
<終了>