東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、ステージによってですけども、現産現販するようなところに関してはプレミアム戦略というのはないんじゃないかということなんですけども。そうすると、具体的にどこにターゲットを合わせてどういった戦略がいいのかというのはどうなんですかね?
森辺:言っている食品、飲料、菓子、日用品とかFMCG周り、並びにその中心は、やっぱり中間層、First Moving Consumer Goodsという言葉そのままなんですけど、FirstにMovingするConsumer Goodsなわけじゃないですか。そうすると、いかに安くて速く回転するものをどれだけ売れるかという話で、ここにプレミアムって日本ではそうかもしれない、日本のコンビニ中心の、半年、3カ月でころころ変わる消費者を相手にしたビジネスではそれはいいと思いますよ。ただ、このアジアでプレミアムってやっぱり違って、中間層を狙うべきで。あと、もう1つ、日本のメーカー、これは別に食品、飲料、菓子、日用品だけじゃなくて、何でもそうなんですけど、プレミアムが中途半端なんですよ。ヨーロッパまでいくととんでもないプレミアムが出てくるじゃないですか。例えば、チョコでもね。いや別にこれ食品とかじゃなくてもいいんです、ステレオでもいいんですよ、音響機器でもいいし、メガネでもいいし、カメラでもいいし、プレミアムというととんでもないプレミアム、時計でもね。けど、結局、そこまでは絶対行けないわけですよ。ヨーロッパの歴史と伝統にこのブランドって敵わないんですよ、日本は絶対にどうあがいても。あと、何百年か経たない…、経っても勝てないかもしれない。なんでかというと、彼ら、それに価値があるということを分かっていますから、フランスもイタリアもイギリスもドイツも。歴史と伝統に価値がある、それを見せてきたわけですよね。だから、ブランディングというものをすごく大切にしているから、ヨーロッパほどはプレミアムに振れない中で、機能と品質が高い=プレミアムなんですよ。ただ、世界のプレミアムってどこにプレミアム感を感じるかって、日本人は機能と品質に感じるのかもしれないけども、ヨーロッパの人たちは、それは歴史だったり、それはメーカーの考え方だったり、スピリットだったり、フィロソフィーだったり、そういうところにプレミアムを感じたりするわけですよね。そうすると、そもそもプレミアムの定義が日本とヨーロッパのブランドの高いメーカーとじゃ違いますよということも1つ考えないといけないからね。そこも中途半端だったりするんですよね。
東:プレミアムという言葉1つとっても、いろんな解釈の仕方があるということですよね?
森辺:そうそう。感じ方です、そう、まさに。日本人が感じるプレミアムって品質がいい、機能が高い、これがプレミアムなんです。ただ、ヨーロッパに行くとそれだけがプレミアムじゃないんですよね。それはその会社の伝統だったり、その会社のクラフトマンシップだったり、その会社のフィロソフィーだったり、その会社のビジョンだったり、いろんなものにプレミアムがあるわけで、品質と機能だけがすべてじゃないという。日本人はどうしてもそこの2点だけで戦おうとするんですよ。けど、そうじゃない。だって、バッグをつくるメーカーでも、ものすごい技術と匠の何とかでいいバッグをつくるメーカーあるでしょ、日本のメーカーで。けど、エルメスのバッグには勝てないわけですよ。エルメスのバッグよりいいバッグ、たぶん、つくっているんですよ。なんだけど、エルメスのバッグのような何百万という値段はつかない。ついてせいぜい何十万。時計もそうですよね、グランドセイコーがどれだけ頑張っても、たぶん、何十万ですよね。けど、スイスには何百万、何千万、何億という機械式時計をつくるメーカーもあるわけで、なんかそこの違いもたぶん1つ大きくあるのかなと。かといって、中国や韓国の、いわゆるプレミアムじゃない、プレミアムの対局にいる製品と戦いたくないという心理も分かるんですよ、それはね。なんですけど、こと、食品、飲料、菓子、日用品で言ったら、欧米も中間層で戦っているんですね。なので、それは土俵は一緒で、家電と違うのはもうまさにそこで。家電だったら困りますけどね。食品、飲料、菓子、日用品は欧米もアジア系も日系も土俵が結構一緒だから、みんな中間層で戦うのでね、そこは僕はフェアだなと思うんですよ。
東:なるほど。そうすると、どうしたらいいのか。
森辺:そうすると、中間層を狙うということろから絶対に逃げられないと思うんです、食品、飲料、菓子、日用品系は。そこを逃げて逃げて逃げていたら、最後絶対にへりに追われて、そのへりから落ちるだけなので、もう。であれば、中間層でどう勝つかということを考えないといけないから、これって製品開発のところから関わってくるんですよ。要は、こういうことで非常にシンプルで、ターゲットは中間層、これはもう確定しているので、中間層がターゲットですと。これが決まっていたら、いかに中間層が好む商品を、いかに中間層がまかなえる金額、これ僕、決して安くって言っていないですよ。ただ、中間層がFirst Moving Consumer Goodsとしてまかなえる金額で、また、中間層が手に取りやすい売り場に並べる、つまりはMTはもちろんのこと、TTにも並べて、さらに、中間層が選びたくなる仕掛けをプロモーションでどうできるか。要は、並べるということと、選ばれるということは違うことで、並ぶというのは物理的な話、けど、そこには競合の商品も並んでいるわけなので、その競合の商品と一緒に並べられたときにいかに自分の商品を手に取ってもらえるかという仕掛けはBTL、ATLのプロモーションで出すしかないわけですよね。この4つが最適化できた企業は勝てるし、できないとずっと赤字が続くというのが、もうこれ、食品、飲料、菓子、日用品のアジアのビジネスの非常にシンプルな根幹のところなんですよね。ターゲットはもうずれない、中間層、以上みたいな。ターゲットは誰かなんていうのは、その中間層の中の誰かというのは深く掘っていったらいいですけど、もう中間層なんですよね、ということだと僕は思っています。
東:分かりました。今日はお時間が来たのでここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
<終了>