東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の続きで、マーケティング研究協会さんの講演の話なんですけども、結構質問が多かったということなんですが、ジェネラルな質問で構わないんですけど、受講者の方はどんなことを悩みに抱えていて、どんな質問があったのかというのをちょっとご紹介いただければと思うんですけど。
森辺:そうですね。まず1つ、やっぱり大きいのが、今やっている輸出ビジネス、輸出型の輸出ビジネスが、うちで言うね、悪いという発想がそもそもなくて。ただ、輸出型の輸出ビジネスをやっている人って、結局、各国でここまでしかいかないですよね、ここから先のことって全然分かっていないですよね、売り上げも全然伸びないですよねとかって言うと、「いや、実はその通りなんです」と。「そういう問題にぶち当たっていて、けど、会社からは前年比110%成長しろ、115%成長しろと言われるから困っていた」とかっていう方が非常に多くて。その輸出型のチャネルビジネスという概念そのものがなんかモヤモヤ、「なんで輸出しているんだけどこれ伸びないんだろう?」「輸出をどうやって伸ばしたらいいんだろう?」と思っているところに、輸出型のチャネルビジネスという新たな概念をボーンって僕が言うもんですから、「そうか、そういうことだったのか」というのが多いですね。ただ、やっぱり今まで輸出部とか貿易部とかっていうのが会社にあって、グローバルマーケティングとかチャネルビジネス何とか部とかってないわけじゃないですか。そうすると、「一体それに対してどう対応していったらいいのか?」ということと、あと、組織のトップのそういう概念がないので、「その組織のトップの概念をどう変えていったらいいんだ?」みたいな、そういう質問が結構やっぱり出ましたね。毎回そうなんですよね。なので、「私が行って組織のトップの概念は徐々に変えていきますよ」なんて言うんですけどね。ただ、現場の概念はやっぱり講義を聞いて、「明日から自分たちのやり方を少しずつでも変えていきます」みたいな前向きな話が非常にやっぱり多かったですかね。
東:なるほど。その輸出型チャネルビジネスの概念がないというのは、そもそもそういう、壁にはぶち当たっているけども、何となく答えが見出せないという感覚なんですかね?
森辺:うん。もう、入社したときから輸出やっていて、輸出型の輸出ビジネスというものがそもそも何なのかということは分からないし、商社を使ったり、乙仲使って、日本の港から相手の国の港に輸出する、そのコンテナの本数が伸びれば自分は評価されると、それ自体に何が問題あるの?という話なわけですよね。けど、日本の国内だと、いやいや、皆さん、自分たちの中間流通、どこ使っているかもよく分かっているし、全国にくまなく中間流通事業者がいて、問屋さんですよね、その先には大手から中堅小売までいっぱいいて、配荷率がどうなっているかというのは分かっていて、自分たちの商品のフェース取りはどうしているかというのも分かっていて、自分たちの商品を買ってくれる顧客、消費者がどういう層で、どうやってリピートしているかしていないか分かっていますよねと。「なんでそれをアジアへ行ったら無視するんですか」と言ったら、「その通り」だと。輸出でやっていたら見えないと。相手の国の港から、どこに並びに行ってて、配荷率がどうで、リピート率がどうで、何がどうなっているのか全く見なくてもいいというか、見えていないこと自体に疑問がなかったみたいなね。でも、言われてみたらまさにその通りだと。日本でやっていることをなんで海外でやらないんだみたいな話で、そういうのがやっぱり多いですよね。
東:なるほど。日本にいるとなかなかそこの先に行きつけないというか、思いつかないということが多いということですね。
森辺:そうですね。一方で、輸出型のチャネルビジネスって、ビジネルモデルとしては輸出するじゃないですか。輸出はするんだけども、自分たちが率先して相手の国の港から先の中間流通事業者を選定して、ある程度の管理育成をして、小売ともコミュニケーションとりながら消費者のことを理解していくというのが輸出型のチャネルビジネスで、その先には、現産現販型のチャネルビジネスがあるわけで。その3ステップがすごく重要だということに皆さんすごく、「ああ、悩んでいたこと、これだ」というのはすごくおっしゃっていただけますかね。
東:ほかに何か質問等はありました?
森辺:あとは、参加をする企業さんが、輸出ビジネスをしている会社もあれば、もう現地に拠点を持って現産現販型のビジネスをしている場合もあるんですよね。だから、それによって結構、課題が違う、質問が違うというのはやっぱりあって。けど、大手でも、中国では現産現販だけどASEANは輸出だとか、そういう話もあるので、やっぱりどっちの層にとってもたぶん内容としては適しているんだと思うんですよ。その中で特に多かったのは、参入戦略つくるって、戦略ってアウトプットじゃないですか。そのアウトプットを出すためにはインプットがないとアウトプットって絶対出ないので、いろんな情報を集めないといけないし、可視化の作業というのがすごく重要ですよと。分からないことがあると戦略もクソもないじゃないですか。戦略って分かることを前提にしてしかアウトプットされないので。日本企業は特に欧米とかに比べて見えないものを可視化しようとしなさすぎると。そこに対するお金をコストと見て投資と見ない姿勢がやっぱり間違っているという話をすると、すごくそれはその通りだということを言っていて。結局、自分たちの競合がどこかというのは分かっていても、その競合のディストリビューターがどういうところで何社使っていてどういうディストリビューションネットワークをどう管理しているのかみたいなことは全然分からないわけですよね。そうすると、そことの戦いなのに敵の強さ分からないでどうやって戦うんだという話で。それが、自分たちの商品はいい商品だから大丈夫だみたいな感覚で行くわけですよ。それがそもそも間違っていたということに気付かれるというのは多かった感じですかね。
東:分かりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
<終了>