小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林マアヤです。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:森辺さん。本日のPodcastの内容なんですけども、前回に引き続き「リコーアジアフォーラム2018」こちらのセミナーの、森辺さんに登壇いただいた内容について、教えていただきたいんですけど。折角の機会なので、ご紹介いただければ幸いです。
森辺:話した内容を?はい、いいですよ。「アジア進出の経営戦略とリーダーシップ」っていうお話をさせてもらったんですけど。最近、ちょっとこのタイトル、米倉誠一郎先生に付けてもらったんだけどね。このタイトル気に入って、積極的に使ってるんだけれども。第1章で日本企業の世界競争力って話して、第2章で先進グローバル企業から学ぶ3つのキーサクセスファクター・主要成功要因って話をして、第3章で、これからの日本企業の新グローバル戦略っていう話をしたと。この3つの話、よくするんですよ、僕は。大企業向けの話、中小企業向けは中小企業向けで、また3章の結論が違うので、それを変えた話。講演っていうものに関しては、大体このパターンでお話をするケースが多くて。で、少しアカデミックなセミナーとか2時間とかっていうと、もうすこし販売チャネルにフォーカスをしたもの、4時間とかっていうと、よりチャネルにフォーカスをした詳しい話をするんだけども、講演というのに関しては、この流れで話すことが多くて。なかなかこの番組でそれを紹介したりもしてないと思うんで、今回いい機会だから、その話しましょうかね。
小林:お願いいたします。
森辺:第1章の、日本企業の世界競争力って、どういう話をしたかっていうと、過去20年とか25年の中で、日本の世界競争力って低下してるって話なんですよね。1992年当時、1位だったんですよ、日本の世界競争力って。でも、それって今26位ぐらいまで低下してて。フォーチュン・グローバル500の中に、米国って1992年、25年前当時は、157社がランクインしてて1位だったんですね。日本は119社で2位で、これが日本が最も輝いてた時ですよね。一番のいい時代。そこから25年経ってどうなったかっていうと、日本は52社で3位になっちゃったんですよ。アメリカは以前134社で、ちょっと減らしてるんですけど1位でね。2位に何が入ったかって、中国が入って、っていうそういう図があって。結局、何が起きたのかっていうことなんですけど、この25年の世界競争力見ると、2つの大きなことが分かるよねって話をしてて。1つがもちろん中国の台頭。今や白物家電の世界最大手って、ハイアールでしょ。あと、センスとかさ、テレビ売ってるよね。LGも韓国のLG。それから、SAMSUNG。携帯なんて、昔、ガラケー時代日本ばっかりだったじゃない。で、ガラパゴス化しちゃって、スマートフォンでは、今やSONYぐらいだよね。世界で多分戦ってるのってね。アップルとSAMSUNGとSONYと、その他中国●(5:53)メーカーでしょ。日本てそんな状態の中で、スマホでは完全にSAMSUNGにやられちゃって。ちょっと想像してほしいんだけども、15年前とか20年前に、SAMSUNGがこんなことになるなんて、誰も思ってなくて。
小林:そうですね。
森辺:SONYが最高益で、1兆円利益叩き出しましたって言ってる時に、SAMSUNGの利益6兆だからね。Panasonicの経常利益って、3000億満たないでしょ。で、売上げが3か月●(6:24)で8兆だったかな?って言ってる時に、SAMSUNG利益6兆だからね。だから、そう考えると、もう全然違っちゃってて。そのレベル感が。それでもまだ、我々日本人の心の中には「いや、我々の方が上なんじゃないの」みたいな、そういうあれがあって。まず負けを認めるっていうことはね。なんかもうここまできたら致し方ないんじゃないかなって。マネ●(6:55)を認めないと前に進めないよねっていう、そういうお話。やっぱ中国と韓国、今中国の台頭の話で韓国の話を一緒にしてるんだけど、そういう状況が起きちゃってるっていう。25年前に想像も、知らなかったブランドが今いっぱいあるわけですよ。日本でもチラチラ見るのに、中国やASEANや中東やアフリカに行ったら、そんなのいっぱい見るんですよ。もちろん、欧米も。だから、日本の外に飛び出せば、もっとそういう状況が広がってると。その、中国の台頭の話をした。あともう一つあって。もう一つは、アメリカ企業の、やっぱ強さ。アメリカって、25年前に一時あったのが、157社から134社に若干社数は減らしたものの、やっぱり以前ナンバー1で、強いと。僕何が言いたかったかっていうと、25年前にフォーチュン500に入ってたアメリカの企業と、今入ってるアメリカの企業が、全然違うんですよ。例えば、25年前にAppleなんて入ってなかったし。そもそも、世界最大のタクシー会社のウーバーなんてのは、存在もしてなかった。グーグル・アマゾン・フェイスブック・ツイッター、スペースエックス。そういった会社って、まったく無かったわけですよね。元々日本企業が、今、中国や韓国や台湾の企業にやられてることを、アメリカの企業にやってきたわけじゃないですか。いいものを、より安く、より小さく、より良く作った。それによって、アメリカの産業は衰退していって、彼らはその衰退した産業の中から、新しいイノベーションを生み出してった、っていうのがこの25年間の歴史でね。同じことを日本にやってる。でも、アメリカは自分たちがトランスフォームすることで、新しいソフトウェア、新しい事業、新しいイノベーションを起こすことで、生まれ変わってきたわけですよ。にもかかわらず、日本企業は未だに技術力、みたいなね。負けてんのにそれを見ない、みたいな。SAMSUNGにこれだけ負けてんのに、まだ日本企業の方が上って、僕jも思っちゃってるもんね。いやいや、SAMSUNGの利益が6兆ですと。Panasonicの利益が3000億に満たないですと。けど、Panasonicの方が格は上でしょ?って、僕は思ってんですよ。これがそもそも間違いで。グローバルではそうは思ってなくて。これがね、まず認めないと、次に進めないよね、っていう、そんな話をさせてもらって。すんごいおじさんたちに嫌われたかもしれない。おじいちゃんとか、ものすごい嫌ってるかもしれないね。今年、ほら、Panasonic100周年だしさ。
小林:まあ、固い雰囲気の中でね。
森辺:別にパナとばっかり比較してるんじゃないんだけどね。SONYとか日本の家電。でも、本当に技術が全てなんだったら、じゃあSANYOで起きたこととかSHARPで起きたことって、どう説明してくれるの?って話でね。技術さえあればすべて良しなんだとしたら、SANYOは未だに存在してたし、SHARPが台湾の会社に買われるなんてことはなかったし。
小林:そんなことは起きてなかったですね。
森辺:起きてないと。だから、やっぱり違うよねって。そこは認めないといけないよねっていう、そういう話をしたと。それが第1章で、それに関連して、技術力から決別しようねと。競争環境と市場環境がだいぶ変わったから、そりゃ技術力が大切だってことは変わんないんだけど、それに固執しすぎちゃだめだよね、みたいな。そんな話をしたり、ドリームプロダクトとコモデティみたいな話もしたのかな。ドリームプロダクトってのは、要は、誰もが夢にまで見て買いたいと思う、所謂欧米系が生み出していくようなものね。車でいうと分かりやすい、フェラーリとかね。コモデティっていうと、本当に、中国にもたくさん自動車会社ってあって、安くて量産する、みたいなそういう車をいうし。日本企業って、そのいずれでもないよね。何なんだろう、我々のポジショニング、みたいな話とか。あと、今はもう日本製以外の選択肢もアジアの人たちは持ってるよね、とか、そういう話かな。だから、総論としては、作る力から売る力に、今、世界の市場って移行してるんだよと。昔って、作ることが全てだった。全てっていうか、一番重要だったと。けど今、作れることっていうのは、そんなに、当たり前になっちゃったんだよね。なんでかったら、中国や韓国や台湾の企業でも作れるようになっちゃったから。日本企業だけじゃないから。それよりはむしろ、売る力の方が重要で。もの作りよりも、マーケティングがやっぱり重要なってきちゃってる時代なんだよねと。これを変えないと、日本企業、絶対再起しないよという話を、かなり長い議論させてもらっていて。目に見えない品質なんで、誰も評価しないですよと。品質がいいなんていうのは目に見えないから、価値としては無です、ぐらいのね。そういう話をしたら、おじいちゃんグウウゥっつって怒るでしょ。もう大分怒らしちゃったんじゃないかな。でもね、いいの。それぐらい言わないとね。
小林:そうですね。
森辺:だって、本当に僕は、この20年間見てきてるから。本当にアジアの人たちが、目に見えない品質を評価せずに、品質の悪い、けどマーケティングで売る力のある他国の商品を買い続けてきてるのを見てきてるんだからね。それが事実なので。でも、そういった年配の人たちが、そこを、考えを変えないと、いつまでも「もの作り!」とか言ってちゃだめで。また嫌われるかなこういうこと言うと。でも言うね。
小林:はい。
森辺:日本の、下町ロケット的な話あるじゃないですか。ちょっとこの中小企業が、技術力を集めて、皆で頑張ってやろう!みたいな。世界を相手に!みたいなね。僕もこういうドラマ大好きなんですよ。ハゲタカとかね。ハゲタカのグローバルバージョンとかあるの、知らないよね。NHKでドラマあるんだけどね。とにかく、日本の企業、特に中小企業が集まって、みたいな。だけどね、残念ながらそんな時代は、世界ではもう遠い昔に葬られてて。その中小企業、中国も中小企業が大企業になっちゃっててね。そういうロマンは、NHKの特番ドラマで見るのはいいかもしれないけど、現実の世界はそうじゃない。だから、そういうのに心惹かれちゃうんだけど、日本人はね。だけど、ちょっと時代は違いますよね。また嫌われたな、これで。という話をしました。
小林:ありがとうございます。じゃあ、第1章の、日本企業の世界競争力ということでお話しいただきました。じゃあ、本日のPodcastはここまでにいたします。リスナーの皆さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了>