コラム・対談 Columns
グローバルの流儀 フジサンケイビジネスアイ紙 特別対談シリーズ『グローバルの流儀』は、弊社代表の森辺がグローバルで活躍する企業の経営トップにインタビューし、その企業のグローバル市場における成功の原動力がどこにあるのか、主要な成功要因(KSF)は何かなど、その企業の魅力に迫る企画です。本企画は2015年にスタートし、今年で9年目を迎えます。インタビュー記事は、新聞及び、ネットに掲載されています。
Vol.3 遠くて遠い国、南アフリカ最新事情視察ツアーへ行こう!
一橋大学イノベーション研究センター 教授 米倉 誠一郎 氏森辺: 米倉先生はイノベーションのイメージが世間的には強いと思いますが、 南アフリカ(以下 南ア)に関わっている経緯を教えて頂けませんか?
米倉: 最初はアジアの途上国に興味がありました。 2010年に国際会議で南アのプレトリア大学に行きました。 日本と南アは実は縁が深いのです。名誉白人といわれたのは、日本人だけでした。 ただ、行ってみると日本の影が薄い。 中国・韓国が一生懸命やっていて、これではいけないと思いました。
森辺: なるほど。
米倉: 日本研究センターについては、おもしろい逸話があります。 今から60・70年くらい前に、南アのビジネスマンが繊維事業をやりたいと思った時にプラット社の紡織機械も良いけど、 豊田織機の紡織機械は安くて凄くいいと日本に買い付けに来ました。 そうしたら、「うちは自動車もやっているよ」と。 どれどれって見てみたらまぁそう悪くないと考えて、販売代理権を結んで南アに帰りました。 当然みんなにバカにされたわけです。「誰が、日本の自動車なんかに乗るものか」、と。
森辺: その人は結局どうしたのですか?
米倉: 当然、トヨタ自動車の総販売代理店ですから、大金持ちになったわけです。 だって、ランクルをはじめとしてトヨタ車がなければ、アフリカは動けないですから。
森辺: そうですね。
米倉: そして、その娘さんが2009年に日本研究センターを感謝を込めてプレトリア大学に寄付したわけなんです。 その所長を探していたので、手を上げて僕がそれはやりましょうと二代目の所長になったのです。
森辺: そういう経緯だったのですね。具体的にGIBS日本研究センターはどんな活動しているのですか?
米倉: 活動内容は三つあります。 1つは、日本と南アの学術交流です。 2つ目は、文化交流です。 3つ目は、人的交流です。 とくに3つ目の人的交流では、南アのMBA学生を受け入れて授業をして日本の企業訪問をさせる。 また、今回のツアーのように日本の学生やビジネスマンを連れて行って、南アを知ってもらう。 南アは、遠くて遠い国でしょう?
森辺: まぁ、そうですね。今回も乗り換えですもんね。
米倉: でも、行ってみると日本よりもはるかに近代化した部分もある国です。 しかし、南アも問題だらけです。 マンデラ大統領の思いとは裏腹に、汚職がはびこり、人種対立がまだ残ったりしています。 これらの課題に対してやっぱり日本人として何ができるのかを考えたいとツアーを企画しました。
森辺: 私も参加させて頂くツアーですけど、今回で何回目ですか?
米倉: 大きいツアーは3回目です。
森辺: 今回のツアーの流れを紹介頂けませんか?
米倉: まず、香港からヨハネスブルグに行きます。 ヨハネスブルグはビジネスの首都ですが、そのまま美しいケープタウンに向かいます。 ケープタウンはオランダ東会社が1番はじめに入植したところですから、本当に古い街だし、きれいな所です。 それから喜望峰に行きます。 喜望峰を見て、それからロベン島。 マンデラ大統領が17年間拘留されていたロベン島を巡って、南アのペンギンに挨拶をして、現地NPOとも交流します。 それからヨハネスブルグに戻って、ミニサファリのあとにゲーム肉のレストランに行きます。 翌日は、「マンデラの言葉」を翻訳した長田雅子博士から講義を受けたあとに、アパルトヘイトミュージアムにいきます。 ここも南アの歴史を知ることの出来る素晴らしいところです。 夜には南アの日本大使がプレトリアにある大使公邸に呼んで下さる予定です。
森辺: それは貴重ですね。
米倉: その翌日は、「NEW MARKETS,NEW MINDSET」の著者であるタシミヤ・イスメイル教授の授業を受けます。 BOPというと皆さん大きなマーケットばかり見ていますが、もしそこでせいこうしたいのならば、 「mind set」も変える必要があるという話です。
森辺: いい題ですよね。
日本企業にそのまんま言ってあげたいです。
米倉: 最後に、日本研究センター主催で日本の最新事情みたいなものを僕が講義したあとに、南アの学生や聴衆との交流会があります。
森辺: それはおもしろそうですね。
米倉: かなり魅力的なツアーでしょ。若干空席があるので、7月中旬まで今回のツアー募集を伸ばしましょう(笑い)。
森辺: 今後のプレトリア大学GIBS日本研究センター所長としての展望をお聞かせ下さい。
米倉: やっぱり一番大事なのは、まずアフリカを知る、体験するという事です。百聞は一見にしかずです。
ゲスト
米倉 誠一郎 (よねくら せいいちろう) 氏
一橋大学イノベーション研究センター 教授
Seiichiro Yonekura, Hitotsubashi University Institute of Innovation Research
1953年生まれ。一橋大学社会学部(1977年)、経済学部(1979年)卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得(1990年Ph.D.)。長年、イノベーションを核とした企業戦略、組織の歴史を研究。NPOなどの非営利組織のアドバイザーも数多く務める。また、バングラディシュや南アフリカをはじめとする途上国事情にも精通し、積極的にビジネス/人材交流プロジェクトを推進している。著書に、『創発的破壊:未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『二枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社+a新書)など多数。
インタビュアー
森辺 一樹(もりべ かずき)
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 特任講師
Kazuki Moribe, SPYDER INITIATIVE
1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。大手を中心に17年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房)などがある。