東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き、管理育成とその前の段階の契約で、当然、選定が重要だというのは変わりはないですけど、選定したはいいけども、結局、何となく引き継いで売上を減らして、ご相談に来るお客さんとかもいるじゃないですか。
森辺:はい。
東:と考えると、われわれとしては選定までは何となく市場に、消費財に関しては見えるものなので、どのディストリビューターが強くてどうなっているかみたいなことは、何となく経験値というよりは市場をどれだけ見るかというところのほうが大きいと思うので、ここがいいだろうなとあたりはつくと思うんですよね。あたりが付いて、ここに変えたらこうなるだろうというのは想像がつくと思いますと。ただ、それがそのままうまくいかない理由が、森辺さんの前回、前々回のお話だと、契約のところの交渉と、たぶん、管理育成のところがちょっと不十分なんじゃないかという、たぶんご提案だと思うんですけど。契約時に引き継ぐ前提だとすると、どうやったら売上を落とさないで売上を伸ばして契約が成り立って、その後管理育成に移れるのかというのは、森辺さんなりに簡単にリスナーさんに分かるようにお伝えいただければと思うんですけど。
森辺:いい販売チャネルをつくる大原則、3原則というのが、いわゆるディストリビューターの発掘選定、そして、契約交渉と管理育成の3つですよという話をしていて、これ、発掘選定で、僕、7割ぐらいの重要度を占めていると思っているんですね。ここでいかにいいディストリビューターを選ぶかということが、その後、今、質問をもらっている契約交渉にも大きく影響してくるし、その後の管理育成にもさらに大きく影響してくると。じゃあ、この発掘選定で7割で残りで3割ということは、発掘選定さえしっかりやって、あとはやらなくてもいいのかと言うと、そうでもなくて、この残りの3割の契約交渉と管理育成をやらないと、もともとのこの7割も崩れ去っちゃうんですよね。
東:なるほど。Shouldであるということですね。
森辺:だから、いわゆる重要度は7:3なんだけども、3がなくなると7も消えちゃうので、基本的には3つがセットで非常に重要ですと。ただ、最初のこの選定のところ、発掘選定を失敗するともう先はないので、そこが一番重要だということで7って僕は言っているだけで、残りの3をやらなかったら7も0なので、全部が重要ですよと。そんな中で、契約交渉って、結局、選定って向こうのケイパビリティだけを見れば「ここがいい」「あそこがいい」って想定がつくじゃないですか。だって、これ今やっているんだもん。あれやっているんだもんと。ただ、向こうにも向こうの事情があるし、向こうの事業計画、戦略があるわけですよね。そうすると、ライトタイミングで自分たちのライト製品が彼らの戦略にはまっているかというのは、すごい重要なんですよね。彼らが、ちょうど今このカテゴリーに力を入れようと考えていたとか、もしくは、逆にこちらからこのカテゴリーに力を入れると、あなたたちの売上のポートフォリオってこんなに素晴らしくなるから一緒にやらないかという、いわゆる提案をしていく、ディストリビューターなんてそんなにものすごくいろんなことを戦略的に考えている人かと言うと、考えていないと言ったら失礼ですけどね。
東:(笑)
森辺:そこまでじゃないわけですよ、日々の業務に。
東:でも、経験値がものを言うというところが多いですもんね。
森辺:そうそう。経験値が、そうですね。これをやったら上がるとか、これをやったら下がると、だから、やるやらないみたいな話なので。今までの過去の経験値から今何をすべきかということを判断するのがディストリビューター、華僑のオーナー社長なんですよ。未来を予測して先回りをするという能力に関しては、僕はメーカーのほうが情報量も圧倒的に多いし長けているんじゃないかなと。そうすると、すごくセンスのいい社長さんに、ディストリビューターの社長さんにそういう未来の提案がうまくできれば、言ったら彼らの戦略ポートフォリオにうまく自分たちの商品を入れられる可能性もあるので、重要なのは、どう興味を持たすかということなんですよね。
東:そうすると、選定の時点で、当然契約の段階にいくかいかないかというのが決まってくるとなると、選定が契約に当然直結するから、選定と契約というのは結構セットですよね。
森辺:もう、セットです。セットです。完全にセットで。
東:契約しなかったら選定が終わらないわけですもんね。
森辺:そうですね。その選定をしている段階でジャブを打ち続けるわけじゃないですか。その中で彼らの興味度合いは。
東:全然違ってきますよね。
森辺:どこまで本気なのかというのは見えてくるので、それで絞り込まれていくわけです。最終的に、契約というのはどこまでの情報を契約書に書くかという話なので、できる限り書けたら、彼らの本気がそこで測れるわけなので、書いていくということだと思うんですよね。
東:そうすると、売上って最終的には数字じゃないですか。いい経営者であっても、数字が上がるか上がらないかというのは、当然ちょっと別の話じゃないですか。人としていいかどうか、経営者として優れているかどうかというのと、その人に任せたら数字が今を維持して、さらに上がるかどうかというのは別ものだと思うんですね。そうすると、経営者がいくら興味を持っても現場が興味を持たなかったら会社としてはそれが回っていかない可能性もあるし、いろんなリスクがあると思うんですけど、契約時に数字で売上をコミットをさせるみたいなことを日本企業がやるべきなんですかね。どうなんですかね。
森辺:それは絶対やったほうがいいですよね。
東:そこまでやっている企業さんって、森辺さんってどうですか?今の、当然、われわれが会っていないお客さんがやっていたり、クライアントさんがやっていたりする場合はあるでしょうけど、全般的な傾向値で見ると。
森辺:外資はやっていますよね。
東:やっぱりそうなんですね。
森辺:うん。外資はやっています。ネスレとか、P&Gとか、ユニリーバは全然やっていて、日本企業はたぶんそこまでの話になかなかなれなくて。なれなくてというのは、ばっくりこれぐあいやりたいというのは伝えていて、お願いしますというのは言っていると。ただ、その中身を自分たちメーカーが理解をしながらディストリビューターと詰めていくというプロセスがないから契約通りにいかない。要は、数字が。
東:定型の契約書になっちゃうということですよね。
森辺:なっちゃうんですよね。守りだけが完璧なんですよ。日本の法務部は優秀ですから、守備が完璧で防御は100%できています。たた、攻撃力の低い契約書を先方と結んで、結局、景気と為替に左右されて、目標にいかないと。でも、ディストリビューター側にしてみたら、日本のメーカーのディストリビューションしているというだけで、地位が上がるわけですよ。
東:1つの価値ですよね。
森辺:売れようが売れまいが、基本マイナスにへこむことは絶対ないので、プラスになるので、そこをやっぱり詰めていくということをしなきゃいけない。
東:ディストリビューターからすると、例えば、10億あって、さっきおみやげみたいなものだと言っていたんですけど、10億が減ろうが減るまいが日本企業の商品を扱えて5億上乗せになっただけでも、彼たちとしては上乗せなんですよね。
森辺:プラスですよね。
東:そうすると、その論理を日本のメーカーの担当者、もしくは事業責任者が分かっていないと、スライドする、簡単にするものだと思っちゃいけないということですか?
森辺:だって、5億でもプラスじゃないですか、彼らにとっては0から5だから。でも、彼らとしては、5億をセルスルーしました。でも、5億は中間在庫として残っていて合わせて10億。メーカーからしてみたらそれでもいいわけじゃないですか。10億なのでね。
東:そうですね。
森辺:前の会社がどれだけが小売にセルスルーされていて、どれだけが中間在庫として残っていたのかという、その比率と同じだけの適正在庫をちゃんと持たせたうえでの10億とか、そういうことをしっかりコミットさせて在庫を取らせないといけないし、在庫が増えすぎても、それはいびつなわけじゃないですか、セルスルーしていないので。
東:そうですね。
森辺:その辺も含めて、新しいディストリビューターと話さないといけないし、そもそも消費財なんてストアカバレッジ×インストアマーケットシェア=売上なわけじゃないですか。そうすると、そこにしっかり介在をして、本当に自分たちはこの市場にどれだけのストアカバレッジが取れて、自分たちの商品だとどれぐらいのインストアマーケットシェアを上げられるのかということをメーカー側が分かってディストリビューターと話さないと、ひたすら「日本で実績あるんです。これいいんです。売ってください」じゃ、なかなか難しいじゃないですか。なので、そこは1つあると思うんですよね。
東:分かりました。
森辺:もう時間だよね。
東:今日はちょっと長くなってしまったので、ここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。