東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の続き、森辺さんが言ういいものがどういうものなのかということで、この間の話だと、B2Bがどうのこうので終わってしまったと思うんですけど、その続きをちょっとお聞かせいただかえればと思うんですが。
森辺:例えば、東さんが例に出したあめの話は前回して、B2Bの途中の話をしたと思うんだけど、エレクトロニクスの業界が中国に取られていっちゃったという話なんだけど、分かりやすく言うと、こういうのは実際の企業名を出すと一番分かりやすいので、例えば、三洋という会社が昔あったでしょう?
東:はい。
森辺:三洋という会社はいいものをつくっていなかったのかなと言うと、決してそんなことはなくて、すごくいいものをつくっていたのに会社がなくなりましたと。これ、なんでなくなったのかと言うと、三洋はやっぱり、世界でそれが求められなかったわけですよね。あと、世界でという表現を使うと、僕が一番頭にすぐくるのは、世界の亀山モデルってテレビにシールを貼っていたシャープというメーカーがありましたけど、ありますけども、最近復活してきていますけども。結局、台湾の、いわゆるもともとフォックスコン、今、ものすごい大きい会社ですけど、下請けをずっとAppleの、していた会社の支援を受けなきゃいけなくなるって、日本を代表するシャープですよ。それで、世界の亀山モデルですよ。ものすごい液晶の生産工場をつくって、高品質の液晶テレビをつくっていた、要は日本が「いい」と思ったものですよね。あの液晶テレビというものはね。けど、それは時代を読み間違えて、結局、台湾の会社の支援を受けることになったという、そういう例とかね。あと、ソニーも最近復活してきていますけど、ウォークマンやソニーのトリニトロンのテレビをつくっていた時代から言うと、だいぶやっぱり世界のいいものは変わってきてしまっていて、競争環境も変わったし、市場環境も変わる中、日本のそういった製造業ってそれに対応しきれなかったというのがあって、家電なんかはすごく分かりやすい例だと思うんだけども、日本の「いい」じゃだめなんですよね。そこがやっぱりそうなんじゃないかなと思うんですよね。
東:日本の「いい」を繰り返していると、B2CもB2Bの二の舞になるんじゃないか、みたいなことなんでしょうか?
森辺:うん。まさにそうで。ちなみに、B2Cで言うと、B2Cってエレクトロニクス系を除くと、食品・飲料・菓子・日用品みたいなところになってくるじゃないですか。この人たち、やっぱりグローバルですでにだいぶ先進グローバル企業に毒されていってしまって、市場を取られてしまっているしね、ローカルな企業も育っているし、僕は結構不安だなというふうに思うんですよね。
東:その不安だなという中で、日本企業は大事なのが、「ターゲティング」と「4P」だと思うんですけど、そういうことをおっしゃっていたんですけど、そこにつながってくるのかなと思うんですが、なんでそこが重要なのかというところをお聞かせいただきたいんですが。
森辺:海外で、海外じゃなくてもいいんだけど、グローバルでシェアを上げる、売上を伸ばすって、言ったら、「何を、いくらで、誰に、どう売るか」ということが非常に重要になってくるわけじゃないですか。これこそがまさに「ターゲティング」と「4P」で。日本企業ってターゲティングが定まっていなくて、基本的には日本で実績のある商品を担いで海外に行くわけなんだけども、ターゲットって日本の消費者じゃなくて、その現地の消費者じゃないですか。そうすると、その人たちを、本来はね、ターゲットとするのであれば、特にFMCGなんていうのは量が勝負ですよね、いかにたくさんの人たちに、いかに速い頻度で、いかに繰り返し永続的に商品が売れるか、ということが価値になってくるわけですよね。これは、だって、100円200円のものを売っているわけですから。1万円や2万円のものだったらまた違いますから。化粧品とかだと、中間層が必ずしもターゲットにはならないんだけれども、FMCGは中間層がターゲットになると。そう考えたときに、その中間層のための、4Pで言うと、中間層が求める商品を、中間層が賄える価格で、中間層が買いやすい売り場に並べて、中間層が手に取りやすい仕掛けができて初めて、4Pが中間層の、ターゲットに設定した中間層向けに最適化されるわけじゃないですか。それがやっぱり弱いから、マーケットシェアが上がらないというのが今の日本企業の課題で。ここを攻略しないと、いくら製品をああだこうだいじったって、やっぱりなかなか難しいというのが、僕が今、すごく日々感じている課題認識なんですよね。
東:そうすると、そこって日本企業からすると、一方でジレンマがあるのが、海外比率が10%をいってる企業は優秀で、いってないところがほとんどじゃないですか。そうすると、10%もない海外売上に対して専用の商品開発をできるかと言うと、なかなか難しかったりすると思うんですけど。そこは、森辺さん的には、どうしたらいいとは言えないでしょうけど、どうあるべきだというのはあるんですか?
森辺:そうですね。これも僕が、特にB2Bは海外売上比率高いじゃないですか。
東:そうですね。50%を超えていますよね、普通に。
森辺:超えていますよね。特にB2Cに関しては、言ってもこの国のこの市場がね、世界第3位の経済大国と。社長になって、就任して、国内にやっぱり目を向けないと、国内の業績落として海外やるって、要は、どっちが先に実績が出るかと言ったら、投資した分のリターンが、ROIが速いかと言ったら、圧倒的に国内じゃないですか?
東:はい。
森辺:そしたら、僕でも東さんでもね、日本の食品メーカーの社長になったらね、確実に国内をてこ入れするでしょう。弱い地方都市を、例えば、やるとか、首都圏やるとかね。だから、短期で見たら、やっぱりそうなると思うんですよ。なんですけど、その会社の本当に長期の、長期と言っても、10年じゃ全然短くて、20年30年考えたときに、やっぱりこれ、特に消費財なんて人口あっての話じゃないですか。そうするとやっぱり、そこをしっかりと考えていくということを、少しこの30年間ね、あまりにも国内市場がよかったから、かすれて見えたアジア新興国市場というのはね、やっぱり今そのつけが来ていて。でも、今、チャンスだと思うんですよ。なぜならば、今までって、物言う株主とか言って、怖いおじさんがしばらく前にはテレビに登場していましたけど、今って、会社って本当に株主だけのものですか?と。金融資本主義って本当にいいんですか?みたいなことをすごく言われてきていて。例えば、SDGsとか、サスティナビリティとか、社会課題をどう解決して企業が成長していくかとか、ミレニアル世代なんて「金儲けだけじゃもう就職しない」って言っているわけでしょう?いかに社会課題を解決するかとか、いかにグローバルでそういったことをやっていくかということに目が向いているので、余計にアジア新興国の中間層、貧困層を狙ったビジネスを会社として本気で取り組むということは、一方でサスティナビリティとか社会課題をどう解決するかみたいなことにものすごくつながるので、逆にやりやすいと思うんですよ。今、やらなかったいつやるの?みたいなね、そんな時代に来ているんじゃないかなと思うんですよね。
東:分かりました。そうすると、そうは言っても、インバウンド需要が結構あって、みたいなところは企業からするとあると思うんですけど、そこについては次回のほうがいいですかね?
森辺:そうですね。時間ですよね。
東:はい。じゃあ、森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。