東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:前回、「ターゲティング」について、森辺さんから少しお話をお伺いしたんですけども、もう1つ重要であるという「4P」のところに関して具体的に何なのかというのを。「4P」というのは、Product、Place、Price、Promotionという4つのPというのを頭を取って「4P」と言っていると思うんですけど、そこについて少しお伺いできないでしょうか?
森辺:はい。ターゲティングが重要ですねと。明確に自分たちのターゲットを決めましょうと。そしたら、そのターゲットが決まったら、そのターゲットから絶対にブレないということがすごく重要で、そのターゲットのための4Pを組み立てる。むしろ、ターゲット側から見たら4Cという表現になるわけですけども。4Pに関して言うと、例えば、仮に、FMCGでターゲットが中間層だと。こうこうこういう所得の、こういうエリアに在住している、こういう中間層というのが決まったら、その中間層のための商品、要は、中間層が求めている商品をまずあてていかないといけないんですよね。日本で売れた商品を、基本あてるじゃないですか。現実的にはそうなるんですけど、それがどれぐらい中間層に求められているかということをやっぱり考えなきゃいけなくて。メイドインジャパンの押し売りみたいなね、ことがなかなか、これ、食に関するものってできなくて。なぜならば、味覚に関係してくるから。これが、もっと早ければ、欧米の先進グローバル企業が、例えば、チョコレートを食ったことのないアジア新興国の人たちがまだいる時代に、チョコの味のデファクトってこれですよと言って、ひたすら口の中にチョコを突っ込んでいったとか、マックがハンバーガーってこれなんだよと言ってハンバーガーの基準をつくっていったという、ああいう時代に出ていくんだったらそれでいいんだけども、今ってアジア新興国の人でもたいがいのものは試したことがあって。そうすると、中間層の人たちが求める商品を、というのが絶対重要で、日本人が求める商品ではなくて、中間層が求める商品なんだということを、インサイトをね、ターゲットの消費者インサイトをやっぱり見るということは重要ですよね。あと、ここが僕、すごい重要なんだけども、FMCG、中間層の人たちが賄える価格、この賄えるというのがみそで、買うなんていうのは、高々FMCGなので、消費財なので、誰でも1回や2回は買えるんですよ。重要なのは、賄えるということで、賄えるって、僕の中での定義はね、自分たちの生活の中に取り込めるという意味で、いかに取り込める価格にするかということがすごく重要で、高くしてしまったから1回2回しか買えないよりも、安くして一生買い続けてもらうほうがいいわけですよ。現実的には、一生なんていうことはないんだけどね。ライフサイクルというのがあるから。でも、30年40年って買い続けてくれるわけだから、そういう賄える価格にするということと。あと、以前、東さんとお話したチャネルの話、強固な販売チャネルをつくる3原則みたいな話をしたと思うんだけど、これがまさにPlaceだよね。このPlaceが、日本企業はすごく弱くて、チャネルづくりをしっかりしていくと。このチャネルに関しては、前回の収録を聞いてもらったらいいと思うんだけど。最後、Promotion、最初の3つのPが何となくやっているから、Promotionにお金をかけるなんて怖いじゃない?だって、自分たちが、現地の人が求める商品を、現地の人が賄える価格で揃えて、チャネルもしっかりしていたら、よし、あと、Promotionだけだって、日本でそれでバンバン、バンバン、Promotionをしているわけでしょう?けど、アジアでPromotion費に腰が引けちゃうというのはまさにそれで、その他の3つのPが整っていないのにPromotion打てるかというのが、本来、本社側の意向で、なかなかPromotionが打てないので、いつまで経っても、この負のスパイラルに陥ってしまっているというのが1つ大きいんじゃないかなというのが、ちょっと長くなっちゃいましたけど。
東:そうすると、4Pの中で、森辺さんとしては、当然、商品の価格とか、商品自体は重要だと思うんですけど、やっぱりチャネルが比較的弱いんじゃないかという感じ?
森辺:そうですね。一番重要で。なぜ一番重要かと言うと、このゼロから10までつくれたら、チャネルの力でゼロから100は行かないんですよ。けど、ゼロから10とか、ゼロから20まではチャネルの力で、エイヤーってつくれるんですよね。ゼロのものに皆さん投資はできないけど、じゃあ、10や20売れたら、「あれ、これ価格もうちょっと変えたら売れるかも」とか、「あれ、これPromotionかけてみたらもうちょっといけるかも」とか、「あれ、製品ちょっと変えたらこうなるかも」という、プラスのポジティブな考え方ができるじゃない?そういう意味でもチャネルを最初にいじるという、物理的にチャネルをいじれば売上は10、20はいくんですよ。なので、チャネルが重要だということを言っているということですね。
東:結構、日本の商品自体は、昔からよくて、特にここ数年より10年、20年前のほうがよいものとされてきたわけじゃないですか。それを、東南アジア、中国含めて、B2Bと同じ構造でキャッチアップしつつあると。
森辺:はい。
東:企業によっては日本企業より大きくなっちゃっているところも当然あったりするじゃないですか。そうすると、結構、日本のものをその当時から輸入したいと思って、小さな代理店が日本のものを担いで大きくなってきたみたいな経緯なところもあると思うんですけど、そういったところに関しては、もうすでに、結構、皆さん悩んでいるのは、新規で行くところは新規のディストリビューターをどう見つけるのかというところと、もう1つは既存のチャネル、もしくはディストリビューターをどうするかという、たぶん2つの、大きく分けると悩みがあると思うんですけど、最初のほうはどういう悩みが多くて、どうしたらもっといいのになというところを、森辺さんが感じるのかというところを。
森辺:既存の。
東:そうですね。
森辺:なるほどね。例えば、多くの食品メーカーの場合だと、20~30年ぐらい前に何となく決めたディストリビューターというのがいて、それは多くの場合、向こうから話があって、ちょっと調べてみたら、まあまあなかなかやりそうかなと。当時のアジア新興国市場なんて、ぶっちゃけどうでもよかったわけですよね。だって、日系スーパーと言ったら一時期ヤオハンみたいなのがありましたけど、あんなものだったわけで、イオンもなければ何とかもないみたいな。
東:そうですね。
森辺:そんな中で、日本の商品担ぎたいなんて言う、売れるかどうかも分からないけど、珍しいディストリビューターがいたもんだみたいな感じで始まっていて、今、現在、強いディストリビューターって、もう20年前30年前と今と全然変わっているわけですよね。昔、強かったところが弱くなっていたり、昔なかったところが今強くなっていたりしているので、やっぱり今の時代のディストリビューターの競争力を見たときに、本当に今のディストリビューターでいいの?ということは、考えていかないと。例えば、今、何十億あるものを何百億に本当に伸ばせるディストリビューターと付き合っているのか、付き合っていないのかというのは1つ重要で。今、うちにもいっぱい来る相談って、ディストリビューションネットワークの再構築じゃないですか。それって、どういう議論かと言うと、今、付き合っているところに満足いっていないんですよね。「切るのは怖いけど、じゃあ、100%満足しているかと言ったら満足していないし、そこでずっとやっていっていいのか自信がありません」というお客さんが、メーカーさんがほとんどですもんね。そういうことをこれからのメーカーは考えて、チャネルの再構築というのをしていかないといけないんじゃないかな。一方で、新規というのは、今まで何となく決めてきたディストリビューターを科学的にしっかり決めていくということをやっていくという、前の収録で話をしたディストリビューターの3原則みたいな、選定みたいなところの話になるんだけど、そういうことが大変重要になってくるんじゃないかなと思いますけども。
東:分かりました。最後に、森辺さんが「ターゲティング」と「4P」が重要だということで簡単に最後まとめていただいて終わりたいと思うんですけど、いかがでしょうか?
森辺:製造業が海外で売上を上げるためのすべての要素、なぜ上がらないのか、どうしたら上がるのか、そのすべては「ターゲティング」と「4P」に尽きます。これはB2CであろうがB2Bであろうが、今一度、自分たちのターゲットが本当にどこなのか、そのターゲットに対して自分たちはしっかりと4Pが提供できているのか、うまくいっていてこれができているという企業は絶対にないはずなので、うまくいっていないということは、この「ターゲティング」と「4P」に絶対原因がありますから、ぜひ皆さん、一度自己分析をしてみてください。
東:分かりました。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。