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第137回 アジア新興国市場 企業活動の中心は「マーケティング」であるべき

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、日本の製造業のグローバル展開における1つの大きな課題についてお話をします。この今日お話する課題は、非常に日本の製造業にとって根本的な課題で、ここを大きく変えていかなければ、日本の製造業がグローバルで本当の意味で成功するということはなかなか難しいと思います。今日は、日本企業の、日本の製造業のグローバル市場における課題について一緒に学んでいきましょう。

もうすでに画面が出ておりますが、どういう課題かと言うと、日本の製造業は企業活動の中心になかなかマーケティングを置けていないというのが、これはグローバル市場において、特にアジア新興国市場において非常に大きな課題になっている。じゃあ、彼らは何を中心に置いているのかというお話なんですが、やっぱりものづくりになってしまっている。ものづくり、製造業にとってものづくりというのは非常に重要な1つのファクターであるということは、もうこれは間違いない。ものづくりがしっかりできていなければ、これは企業が成り立たないというのは、その通りだと思います。ただ、必ずしも今現代の製造業のあるべき姿というのは、ものを自分たちでつくっているということが製造業のあるべき姿ではない。例えば、Appleなんていうのは、自分たちでものをつくっていないので、ものづくりというよりかは、いかに世の中に求められているものを設計をして、生産そのものは別にどこがつくっていてもいいわけですよね。そうすると、昔ながらのものづくりというものが企業経営の中心にあっては駄目で、マーケティングが中心になければならない。Appleコンピュータなんていうのは一番分かりやすい例で、彼らは非常にイノベーティブな素晴らしい商品を生み出していくわけですけども、企業活動の中心に決してものづくりはないわけですよね。ものづくり自体は台湾のフォックスコンがやっていて、遠く離れた台湾にある。じゃあ、彼らの企業活動の中心には何があるかと言うと、やっぱりマーケティングがあるわけですよね。マーケティングの父、フィリップ・コトラーは、マーケティングをこういうふうに定義しています。マーケティングというのは、商品やサービスを開発して、企画・開発して、生産して、それを在庫して、流通して、それを販売して、代金を回収して、そして、アフターサービスをするまでの一連の流れをマーケティングと呼んでいて。企業活動というのは、このマーケティングが絶対的にベースになければならない。その周辺に、この図の通り、その周辺に今言った一連のプロセスがあるわけで。企業活動というのは、絶対にマーケティングが中心にないといけない。にもかかわらず、日本の多くの製造業は、やっぱりものづくりが中心にあって、自分たちはいい原材料を使って、高い技術力でいいものをつくっているんだと。だから、世界で売れるはずなんだということでマーケティングがおろそかになってしまって、私がこの番組でも過去にお話したかもしれないですけど、1P戦略、いわゆるものを売っていく、ターゲットに対してものを売るというのは、4Pが最適化されて、マーケティングミックスが最適化されて初めてそれが実現するにもかかわらず、1P戦略。これはもう、プロダクトだけしか考えていない戦略。もしくは、もう常にプレミアム戦略、自分たちの商品はプレミアムということでプレミアム戦略、ものだけを押し出していく。事実、日本のB2BもB2Cも、グローバル市場において、アジア新興国市場において、商品の品質は非常に高いんだけども、それがその現地に求められている商品なのか、否かということに関しては、これは必ずしもそうじゃなかったりするわけです。オーバースペックとか、too muchなスペックだというふうにずっと言われてきて。まさに家電の領域ではそれが大きな問題となって、多くの日本の家電メーカーが消えていった、製品が消えていったというのが1つあるわけなので。製品じゃないんですよね。マーケティングを置かないといけない。このマーケティングが中心に置かれていない証拠に、日本の企業、特に大企業、中小企業なんかもう完全にですけども、CMOという役職があまりにも少ない。これは、CEOとかCOO、チーフエグゼクティブオフィサーとか、チーフオペレーティングオフィサーとかと同じで、チーフマーケティングオフィサーの略ですけども、非常に重要な幹部職の役職であって、アメリカを中心とした欧米のグローバル先進的なグローバル企業では、このCMOというのは必ず設置されている。企業活動の課題をマーケティング観点で考えて解決をしていく非常に重要な部署で、COOやCEOと同じぐらいの影響力を持つ、そんなポジション。こういうポジションが、まずないわけですよね。従って、マーケティング観点で物事を見れないし、ものづくり観点で物事を見ていく。事実、日本の製造業の、いわゆる経営者には生産中心、開発中心の人間が非常に多くて、マーケティング出身者ってなかなかないわけですよね。言ったら、営業出身者というのはいるのかもしれないですけど、営業というのはまさにこのマーケティングの中の、さっき言った1つのパートで、商品を企画、開発、生産、在庫、流通、営業して、販売をして、そして、代金回収して、アフターサービス、その1つのパートなので、営業がまた上にくるというのもおかしな話で、やっぱりマーケティングを駆使しないといけない。じゃあ、なんで、このマーケティングがグローバル市場でなかなか中心に置かれないのか。今の日本のグローバル化が苦しんでいる要因というのは、本当にマーケティングで、ターゲットに対して4Pが最適化できない。自分たちはいい商品をつくっているので、これを売りたいんだと。自分たち中心のプッシュの取り組みを海外でやっていて、なかなかマーケティング概念になっていないというのが非常に問題で。

じゃあ、なんでこのマーケティングが企業活動の中心に置けないのかと言うと、日本国内では、基本的にはあまりマーケティングってもう必要ないんですよね。すべてが出来上がった土台の上で事業をしていますから、マーケティングを根本的にやる、考えるということはあまり必要なくて。マーケティング=B2Cが対消費者との間でやるプロモーション的な話でしょう、という概念が非常に大きいわけですよね。なので、B2Bの企業なんかを集めてセミナーをやるときに、マーケティングの基本的な知識が非常に少ない。これはもう、B2Cと比べても、B2Bの企業は非常にマーケティングの概念がなくて、B2Bの企業なんていうのは、マーケティングなんて、それはB2Cが消費者相手にやる川下の話でしょうって、こんなぐらいの概念しか持っていない人というのが非常に多い。こういったことを変えていかないと、グローバル市場というのは、これはマーケティング戦争なので、営業で戦える市場でもないし、もうマーケティングの戦い。このマーケティングが企業活動の中心に置けなければ、今、一時よくても、それは持続性が全くない。サスティナビリティが全くない状態で進んでいくことになるので非常に危険。いかにマーケティングマインドを持って企業活動の中心にマーケティングを置くかということが、日本の製造業に今、求められていることで。もう、ものづくりは、日本の製造業は、どの国の企業よりも、どの国の製造業よりも完璧にできる。このものづくりというものを引き続きしっかり強化していくということは重要なんだけども、それ以上に、やっぱりマーケティングを中心に置かなきゃいけない。いいものをつくって売れるんだという時代はもう、とうの昔に終わっているわけですよね。いいものさえつくって売れるんだというのであれば、なんでシャープは台湾の企業の救済を受けなきゃいけなくなったのか。今、復活してきて僕も応援していますけど、なんで三洋という会社はなくなっちゃったんだと、なんで日本の家電メーカーはB2Cの事業をどんどん、どんどん撤退をしてB2Bに移っていっちゃったんだということのロジックが証明できない。従って、マーケティングを中心に置いて、ものづくりじゃなくてマーケティングを中心に置く。そして、このマーケティングを中心に置ければ、日本企業の得意としているものづくりがさらに素晴らしく力を発揮していくという、そんなことにもなっていくと思いますので、日本の製造業は企業活動の中心にとにかくマーケティングを置くということをグローバル市場で考えていってもらえればと思います。

それでは、今日は時間が来ましたので、これぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。