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第136回 アジア新興国市場 オープン・チャネル・イノベーションとは

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、オープン・チャネル・イノベーションについてお話をします。

このオープン・チャネル・イノベーションという概念は、オープン・イノベーションのチャネル版だというふうに思ってください。オープン・イノベーションというのは、もう皆さんご存じ、自分たちだけで商品を開発するのではなくて、外部の力を借りることによって、自分たちだけでは生み出せなかったような商品を生み出していく、そして、それを早期に生み出していくということがオープン・イノベーションの意味ですが、それのチャネル版ですと。チャネル版ってどういうことかと言うと、日本の製造業、特に、B2Cの食品・飲料・菓子・日用品等の製造業は、アジア新興国市場の展開において、欧米の先進的なグローバル消費財メーカー、例えば、P&Gやネスレ、ユニリーバに比べて著しくシェアで遅れを取っていると。この遅れというものが、商品そのもののクオリティという意味での遅れというよりかは、チャネルの遅れであると。チャネルの遅れってどういうことかと言うと、アジア新興国市場、この番組でも何回かお話をしていますが、流通が非常に複雑ですと、日本や先進国のように、近代小売だけで形成されていなくて、伝統小売が非常に大きなシェアを持っている。その複雑な伝統小売への配荷を実現しないと、マーケットシェアは上がらないというジレンマがある中で、非常にチャネルをつくっていかないといけないという課題があると。日本の場合は、すでに流通、チャネルが存在していて、そこに商品をポーンと落とせば近代小売に一気に商品が流れるという、こういう市場。一方で、アジア新興国市場というのは、流通自体が存在しないというか、近代小売にしか存在していないので、伝統小売に関して言うと、自分たちでそのチャネルをつくっていかないといけない。ゼロからチャネルをつくっていくという、こういうことが必要になってくる。このチャネルをつくる行為において、自分たちだけでやっていては、そもそもナレッジもノウハウもない中でチャネルづくりがなかなか進まないという課題があって。仮にも今、すでに先進グローバル消費財メーカーと比べると、著しく遅れている。これ、ゆっくりやっていたら、どんどん、どんどん、差が開いてしまうので、そこにオープン・チャネル・イノベーションの考え方を組み込むことによってより早期に追い付き追い越していくというのが、このオープン・チャネル・イノベーションの最大の目的です。

この図を使って少し説明をしたいんですが、日本の消費財メーカーはどんな仕事がアジア新興国市場であるの?と言うと、大きく分けて3つ存在します。1つが、この図の通り、製品ですよね。いかに中間層が求める製品を開発するか。また、この製品というのは、プロダクトそのものだけじゃなくて、価格と一対になっているものですから、いかに現地の中間層が求める製品、商品を現地の中間層が賄える価格で生み出していくかということが1つの仕事です。もう1つの仕事が、それを届ける、消費者に届ける、小売まで届ける、小売の先に消費者がいるわけなので、小売まで届けるチャネルづくりをしないといけないというのが2つ目の仕事。このチャネルに関しては、アジア新興国市場で言うと、やっぱり8割ぐらいはまだまだ伝統小売で、2割が近代小売。そうすると、店舗数ベースで言ったら、99.999%伝統小売なわけなので、その何十万店、何百万店存在する伝統小売を含めてチャネルをつくっていくということをしないといけない。これが非常に大変なわけですよね。そして、3つ目は、小売の棚に届けた、配荷した、並べた商品を、いかに消費者にセルアウトさせるか。小売に並べるということは、イコール競合の商品と隣り合わせに置かれるということですよね。チョコレートならチョコレート、ガムならガム、スナックならスナック、洗剤なら洗剤というふうにカテゴリーで置かれるわけで、ドン・キホーテでもない限り、基本的にはカテゴリーで置かれる。つまりは競争にさらされるということですね。競争にさらされるということは、その商品をお客さんが手に取る。皆さんの商品を手に取るという、この行為をさせるためには、当然ながら、プロモーション投資をしていかないといけない。この3つが大きく分けて製造業の消費財メーカーのアジア新興国市場における大きな仕事なわけですね。

そうすると、この中でメーカー自身が絶対にやらなきゃいけない仕事と、メーカーがやらなくてもいいんじゃないのかと、オープン・チャネル・イノベーションの概念をふんだんに使って、より早期に時間を買っていくという考え方が適合できるんではないかというものがあるわけです。この、まず1つ目の商品というのは、これは絶対に差別化により優位性が求められるわけですよね。A社もB社もC社も、同じ商品をつくって売るということは絶対にあり得ないので、いかに他社がつくれないようなものをつくっていくか。そして、いかに他社よりも消費者に求められる価格設定をしていくか。これはまさに差別化が必要なので、オープン・チャネル・イノベーションとか他社と云々という話ではない。メーカーが独自で完結しなきゃいけないもの、これが1つ、商品ですよね。

一方で、プロモーション、これも差別化が求められる。A社もB社もC社も同じCMを流す、もしくは、同じBTLをやって、こんなことは絶対に存在しないので。差別化による優位性が求められるのは、これプロモーションもそうですと。そうすると、この商品ということと、プロモーションというものは、誰かにお願いできる範疇のものではないわけですよね。皆さんが、製造業の皆さんが、消費財メーカーの皆さんが自身でやらないといけない。

一方で、このチャネルというものは、外部資源の活用と共有化ができる。どういうことかと言うと、チャネルの差別化、競争優位性、チャネルの差別化による競争優位性によって外部資源を積極的に活用して共有化することにより、交渉優位が求められる。何を言っているかと言うと、結局、チャネルって、消費財の場合、A社もB社もD社も、売りたいところって一緒ですよね。小売店1、小売店2、小売店3、小売店4、小売店5、売りたい小売というのは一緒で、そこにどう配荷するかなんていうのは、どのメーカーも一緒なわけですよね。そうすると、その配荷自体を共有するということは、まず1つできるということと。あと、アジア新興国市場は伝統小売の存在、流通、伝統小売流通の複雑な構造のため、チャネルをつくるということが非常に困難であると。だから、先進グローバル企業に遅れを取ったというのが、今の日本の諸費材メーカーなので。それを外部の資源を積極的に活用することによって早期に進めていく。自分たちの会社にノウハウもナレッジもないと、知識も経験もない中で、何とか苦労してやっていくスピードと、いわゆる正確性、それよりも、外部の専門家、われわれのような専門家にお願いをして、チャネルをつくっていくということのほうが圧倒的に速いわけですよね、チャネルができあがるのが。重要なのって、チャネルをつくることではなくて、つくったチャネルでどうやってメーカーが本来やるべき商品、いい商品をどうやってプロモーションをしてお客さんの手に取ってもらうかということのほうが重要なので。チャネルそのものというのは、決して自分たちでつくる必要はないんですよね。チャネルは重要だけども、自分たちでつくる必要があるかないかと言うと、別にそういうことではない。何やら、私の会社の宣伝をしているようで、大変恐縮ですが、基本的には、このチャネルというものは共有をして外部資源をどんどん活用をしていかないと、もうすでに開いてしまった、欧米先進グローバル企業との差や、今、非常に成長著しい中国やアジアの企業との差、これをやっぱり埋めていくということが、日本の消費財メーカーが、今、真っ先にやらなければならないことなので。分からないことを自分たちで何とか苦労して、やっていけばというステージは、とうの昔に終わっているんですよね。これ、20年前だったらそのやり方でよかったかもしれない。ただ、アジア新興国、ASEANの次は、メコン経済圏だ、インドだ、アフリカだと。すでに、中国の製造業はもうアフリカにまで手を付けていると。欧米の先進グローバル企業もアフリカに手を付けている。そんな中、ASEANで足踏みをしていて、インドにまだ躊躇しているような日本の消費財メーカーが、外部の資源を活用して共用をしていかなければ、決してこのグローバル市場でのマーケットシェアというのは、差は縮まりませんので、このオープン・チャネル・イノベーションという概念を積極的に使ってみてはいかがでしょうか。

それでは、皆さん、今日はこのぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。