小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林真彩です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:森辺さん、本日のPodcastなんですけども、東さんにナビゲーターをバトンタッチしてお送りしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
森辺:お願いします。
東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:どうも、東さん。
東:はい。森辺さん、今日はどんな話をしていきましょうか?
森辺:いや、何でもいいですよ。
東:(笑)
森辺:何でもいいですよというか、どんな話をしましょうかね。品質の話、どうですかね。お客さんのところに行っても、品質をどこの基準に設定をしてアジア新興国に出ればいいんだというところで、いつも議論になると思うんですよね。比較的大きな議論で、この品質の問題ってチャネルに非常に密接に関わっていて、いい品質のものを売ろうとすると、当然価格が高くなりますと。価格が高くなると、当然いわゆる…。
東:中間層にはいかない。
森辺:うん。中間層にはいかない。伝統的な小売には並べられない。そうなってきたときに、この品質というのが1つの日本企業のアジア新興国進出の大きなボトルネック的なところになっているような気がしていて。それについてお話をしたいなと思います。
東:分かりました。では、商品の品質ということですかね。
森辺:そうですね。従来、昔から長いことずっと言われてきているのというのは、日本企業は品質がいいというね、むしろ、品質がよすぎてオーバースペックだということを散々言われてきていて。品質がいいということを売り物にしているわけじゃない?日本企業って。一方で、そのいい品質のものを訪日観光のインバウンドでは買い求めて爆買いをして帰っていくという世界が、銀座を中心に存在はしていると。ただ、それがアジア新興国の市場に当てはめたときに、それがマジョリティ化というと、必ずしもそうじゃないわけだよね。そうなってくると、われわれ日本企業がインバウンドでやるときは日本人が求める品質レベルでものを売っていたらいいんだと思うんだけど、アウトバウンドで海外に行くときって、その品質のレベルを下げるというよりかは、下げると言うと印象が悪いので、調整しないといけない。そこになかなか企業として踏み出せないところがあって。海外担当の人はそのことをよく分かっているんだけども、開発とか生産が「何言ってんだ。それで問題があったらどうするんだ」みたいな議論になるわけじゃないですか。これって、どう解決していくべきなのかなみたいなことをここでディスカッションしながらヒントを導き出していけたらなという、前置きがめちゃめちゃ長くなったんだけど。
東:(笑)
森辺:そういうことを考えているんですけどね。
東:そうすると、インバウンドでは今の日本の品質でいいけれども、ここ、今年はそうでもないかもしれない、ここ2~3年ですかね、インバウンドが非常に好況だったじゃないですか。そうすると、企業は基本的にはインバウンドを見がちになってくると思うんですけど。まず、それに関しては、森辺さんはどうだと思いますか?
森辺:言われているのが、以前の本当に高級品の何百万、何千万、何億円の爆買いは一旦収まったわけじゃない?そこからいわゆる消耗品を買うようになって、ドラッグストアで売っているようなものですよね。そういう医薬品とかお菓子とか化粧品とか、そういったものの爆買いの波が来て。今、それが落ち着いていて、何となく聞かれるのが、海外なんか出なくてもインバウンドでいいじゃんと言っていた企業さんもいたんですよ、ここ何年かは。
東:特にインバウンドで。
森辺:インバウンドで儲かっている会社は。
東:儲かっている会社さんはですよね。
森辺:うん。ただ、僕はそのときから、「いや、このインバウンドのメリットをアウトバウンドに生かさなきゃ駄目ですよ」と言っていたんですけど、やっぱりインバウンドで儲かっていると、わざわざアウトバウンドで出ていってまで稼ぐって面倒くさいじゃないですか。なんですけど、インバウンドがちょっと足踏みし始めている。それは、もちろん日韓関係の問題も大きく影響しているんだけども。そうすると、「やっぱりアウトバウンド重要だよね」みたいなことを言っている会社さんはいて、まあまあ、そんな状況ではあるのかなと思うんですよね。
東:そうすると、インバウンドに向いているとなかなか、新興国でのいい品質の定義というのが違ってくるということですよね。
森辺:これって、考えると分かりやすいんだけど、前にも少し話したかもしれないんだけど、ハワイに行ったときにハワイアンクッキーを買うじゃない?われわれね。日本人だらけでしょう、あの店。あのハワイアンクッキーをハワイに行ったときに買うわれわれ、あれが日本のローソンとかファミマに売っていたら買うかと言ったら、絶対買わないわけですよね。そうすると、ハワイに行くからあのハワイアンクッキーを買いたくなるという話で、訪日観光客も日本に来たから品質のいい日用品を買いたいという。
東:わざわざ高いのに、ということですね。
森辺:うん。高いのにというね。それと一緒の感覚で、日本人が80年代90年代に世界に衝撃的な印象を与えたんですよ。それは高品質という、とてつもない衝撃的な印象を与えて、それがまだまだ世界の人にはこびりついていて。だんだんその差がなくなってきたとは言われているものの、「日本に行ったら高品質なものを買おう」と思っている人たちがいるから買うわけだね。「ハワイに行ったらハワイアンクッキー買おう」というのと一緒で、「アメリカに行ったら何かアメリカっぽいものを買おう」とか、というのと一緒の感覚で「日本に行ったら高品質なものを買おう」みたいなね。じゃあ、それを現地に当てはめたときに、フィリピン人がフィリピン国内で超高級なものばかり買おうなんて思わないわけですよ、生活品において。そこを結構はき違えちゃっていて。「アジアの人は高品質が好きなんだ。メイドインジャパンだ。プレミアムだ」みたいな状況に読み間違えちゃっているという、そこが僕は非常に問題だと思うんですよね。
東:それって、例えば、そもそも論だと思うんですけど、なんでじゃあ、フィリピンの人が、日本に来たら買いたくなって、フィリピンの現地にいるときに買いたくならないのかというのは、何となく理解している方はいらっしゃると思うんですけど、森辺さんの理解だとなんでだと思いますか?
森辺:要は、代名詞なんですよね。品質がいいものというのは日本の代名詞で、日本に来たらそれを買うというのが一緒で、僕らがフィリピンに行ったらマンゴーを、ドライマンゴーを買うじゃないですか。
東:はいはい。
森辺:ドライマンゴーがフィリピンの代名詞だからなんですよ。アメリカに行ったら、ビーフジャーキー、僕だけかもしれないですけど…。
東:(笑)
森辺:買うわけですよ。それは、アメリカの代名詞だから。
東:それはちょっと、森辺さんだけかもしれないですね。(笑)
森辺:だけかもしれないけどね、でも、ハワイに行ったらハワイアンクッキー、それは代名詞だからという話で、インバウンドで買うものというのは代名詞なものを買うわけですよね。日本と言えばこれだよね!というものを買うわけ。フランスに行ったらこれだよね!というものを買うわけだし、イタリアに行ったらこれだよね!というものを買うわけで。でも、自国に行ったらそれ買わないですよね、これだよねというのはね。だから、そこの違いが非常に大きい。いろんなデータにもよるんですけど、観光のときの財布の緩み方って、日々の財布の緩み方の何十倍も大きいというのでね。
東:そうですね。
森辺:なので、全然、棚に置いたときの手の伸ばし感が違うって、もう何十分の1になるわけですよ。
東:なるほど。
森辺:そこに価格が大きく乗っかかったら、それは選ばないよねというね。
東:なるほど。分かりました。ちょっと今日はここまでにして、次回引き続き、この話をさせていただきたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。