東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続き、品質についての話なんですけど、インバウンドの話にだいぶ逸れてしまったんですが、たぶん要は、アジア新興国の人々にとってよい品質とはどんなものかという定義なのかというところが話題だと思うんですけど、その辺をもう少し深く、何か森辺さんが感じたこととかエピソードを持って説明してくれると分かりやすいと思うんですけど。
森辺:アジア新興国の人たちとわれわれ日本人の人たちの普通の品質、例えば、まあまあ普通の品質の基準値が全然違うということを理解しなきゃいけなくて。いやいや、そうは言ったっていい品質のもの好きじゃないか、アジアの人たちも。それはインバウンドを見たら分かるじゃないか。あれだけいい品質のものを買い求めるじゃないかという議論になっちゃうんだけど、それに対する答えは、いやいや、それは訪日インバウンド観光で来ているからですよと。日本人がハワイに行ったらハワイアンクッキー買うのと一緒で、アジア新興国の人たちが日本に来たら品質のいいものを買うと。なぜならば、品質がいいものというのは、日本の代名詞だから。これはハワイに行ったらハワイの代名詞、ハワイアンクッキー、フィリピンに行ったらドライマンゴー、韓国に行ったら辛ラーメンとか、それはおれだけかもしれないけど、分からない、アメリカに行ったらビーフジャーキーとかね、その代名詞なものを買うというだけの話だから、それは違いますよと。じゃあ、この品質の基準がどれぐらい違うのかと言うと、例えば、日本人ってJALとかANAにしか乗らないと思うんです。僕もずっとANAを使うんだけども。たまに飛行機がなくて、現地のエアラインに乗るとか、ちょっと値段安いからそっちに乗るとかというのが、年間通じてあります。そうしたときに、非常に僕は、飛行機の中で日本のクオリティと海外のクオリティがものすごく違うんだなというふうに感じるときに、いやいや、意外に近くなってきているなとかというときもあって。例えばなんだけど、ヘッドホンとか、海外の航空会社に乗ると、めちゃめちゃいいヘッドホンがあるんですよ。ノイズキャンセリングの付いためちゃめちゃでっかいジッパーでギーッと開ける箱に入っている、BOSEか何かのやつね。うわ、高いヘッドホンを貸してくれるんだなと思って。でも、それが基本的に3個に1個壊れているんです。
東:(笑)はいはい。
森辺:結局、離陸してから、僕が映画を見始められるのって1時間半とか2時間経ってからなんですよね。けど、それ、「I‘m sorry.」とは言われるけども別に普通で、それにいちいちイライラするのは日本人だけみたいなね。その3個に1個聞こえなくてもイライラしないんですよ、それは普通だから、向こうの人ってね。でも、日本人はめちゃめちゃイライラして、たぶん2時間後には切れているみたいな、それってすごい顕著に違いを感じるなみたいな。彼らにとっては、BOSEのノイズキャンセリングのヘッドホンを入れているということが重要で、それが3個に1個聞こえなかったら替えがあるので替えればいいという、そういう感覚。日本の航空会社に乗ると、基本的には殺菌か何かしてあって、きれいにビニールで包んであって、1回洗いましたよ的な感じで配られるでしょう?
東:はいはい。
森辺:だから、ああいうのじゃないと気持ち悪いとなっているんだけど、基本的にほかの航空会社だとそんなことはないので、きれいにしました的なビニールには入っていない。そういう違いとかも、僕はすごく感じるんですよね。
東:そうすると、海外の人は基本的に3回に1回壊れていても、替えればいいじゃんというような感覚があって、日本人はなんで壊れているんだみたいなところに行きがちみたいな、そんな話なんですかね。
森辺:何か…、うん。その海外を一派ひとからげにするつもりはないんだけど。
東:そういう傾向値として。
森辺:傾向値として、そういうことがあって。これってメーカーを見ていても分かるんだけど、例えば、日本の電化製品って壊れたら保証書を持ってサービスセンターへ行って修理するのに待ってみたいなことを散々やってきたけど、最近ってもう、「部品どこが壊れたか言ってください。送ります。送ったらそれを送り返してください」みたいなね。
東:そうですね。
森辺:壊れることを前提でつくっているから。もう交換すればいいじゃんみたいな。10個に1個、壊れたら交換すればいいじゃんみたいなね、日本企業は、100個に1個も壊れないみたいな、1,000個に1個も壊れないみたいなね、そこの基準で、外人はそんないちいち、壊れたからって、音が出ないからってイライラしないよというね。
東:(笑)
森辺:そこ非常に重要だなと思うんですよね。
東:その違いがあって、品質を考えて値段を設定していかないとなかなか中間層には広まっていかない、ということを森辺さんはおっしゃりたいというんですかね。
森辺:そう。僕も日本人だし、日本のこういうところすごい好きなんだけど、繊細過ぎるというか、フライトアテンダントと言うんだっけ、今、スチュワーデスとは言わないんだよね。
東:言わないですね。
森辺:何て言うの、ああいう人。
東:フライトアテンダント。
森辺:フライトアテンダントね、見ていても分かるんだけど、もちろん、航空会社の教育方針によっていろいろあると思うんだけど、日本の航空会社と、海外の航空会社、なんで日本人が日本の航空会社に乗るかと言ったら、あの接し方、何か分かる?
東:分かります、それ。(笑)
森辺:言語が違うとかじゃなくて、「森辺さま、本日もご搭乗いただきまして誠にありがとうございます」って、もう、ちょっと、そんなに顔を近づけられても困るというぐらいに、うわーっと来るでしょう?
東:(笑)そうですね。距離感が近いですね。
森辺:うん。もうもう、本当に本当にありがとうございますというのを顔いっぱいに出して、うわーってやってくるというか。僕がちょっとゴミを持っていると、「あー、お取りします!」、わーっていう感じでしょう?
東:はいはい。
森辺:いやいや、僕、そんなに偉くないし、そんなにお金払っているわけでもないから、そこまでしてもらわなくても構わないんだけどなといつも思って恐縮をするのね。一方で、海外のエアラインに乗ると、「Thank you very much, Mr.Moribe.」ぐらいでしょう。普通というか。
東:そうですね。
森辺:「何かあったら声をかけてね」みたいな感じで。そういう違いがあって、日本人ってああいうのに慣れちゃっているんだよなという。それをもっと、「Hey!」という、何て言うの、適当にという感じで全然いいのになというのはすごく思って。それをおもてなしとかって言っちゃうんだけどね。だったら、エミレーツとか、あと、カタール航空とかに乗ったら。
東:SQとかね。
森辺:うん。SQとかもそうだけど、めちゃめちゃすごいわけですよ。
東:そうですね。
森辺:それはお金という対価を支払うことによって、そのサービスがこう…。
東:得られる。
森辺:うん。得られると。しかも、お金を払っているからさらにすごいんだよね、サービスが。だから、そこが日本のいいところでもあるんだけど、もう少し、たぶん、次の10年20年はチューニングしていく必要があるのではなかろうかなという気がするんですよね。
東:分かりました。ちょっと話が逸れがちになってしまいました。
森辺:うん。だいぶ逸れたね。
東:次回チャネルのFMCGの本題に入りたいと思いますので。
森辺:すみません。
東:森辺さん、よろしくお願いします。
森辺:お願いします。