東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の引き続きなんですけども、ディストリビューターの管理育成をどうやるのかというところの問合せも結構多いじゃないですか。「正直、ディストリビューター見つかりました。何となくはできているんですけど、ちょっとここで行き詰まっています」みたいなところでのご相談が結構多いので。それでよく聞かれるのが、セミナーとかで言われている管理とか育成で、「どうやったらいいんですか?」みたいなお問合せもいただくことが多いと思うんですけど。その辺は、やる土台がある前提で構わないので、どういうステップで、何をどうやっていかなきゃいけないのか。当然、ここだけでは話しきれないことのほうが多いと思うんですが、概略だけでも教えていただければと思うんですが。
森辺:シンプルに言うと、両者で決めた目標数値を両社で達成していくということがすごい重要じゃないですか。それを達成するためにKPIを設定しているわけですよね。そのKPIをできる限りシンプルに設定をして、あまりたくさんのことは管理しきれないから、シンプルに設定して。われわれが、例えば、消費財で言ったら、ストアカバレッジとインストアマーケットシェア、sell-inとsell-outだけ設定して、その数を追いましょうと。それが、できていなかったら、なぜこの子はできていないのかを一緒に考えてあげて、どうやったらできるようになるかを一緒に考えてあげるということをやっていく、それがまさに管理育成で。それ以外に何か製品知識勉強会とかセールス勉強会とか、いろいろやったらいいと思うんですけど、基本的にはそういうことをやりましょうと言っているんだけどね、僕、このテクニカルな部分よりも、重要なのって、管理育成を一緒にやろう、やってもらおうと思わせるマインドの部分の融合というか、統合みたいなことのほうが、僕はすごく重要だと思っていて。これって、今までなあなあでやってきた人が、いきなり「明日から管理育成しますので」と言って、管理育成されるわけがないですよ、ディストリビューターがね。
東:まあ、そうですね。
森辺:おまえら、年に何回かしか来ないしとか、駐在事務所があっても、「おまえら、分かっていない日本人が口出すなよ」と、「売ることはおれらに任せておけ、今まで通り」と。「プロモーション・フィーだけ出しておけ」みたいな、そういう話になっちゃうし、「小売になんて一緒に来なくていい。君たちが来たらカモネギにされるだけだ」みたいな、そういう話になるわけじゃないですか。それって、そもそもの前提として「君たちはいいものをつくることには長けているけど、それ以外は全く駄目だよね」という常識の中でディストリビューターと動いてしまっているから、今さら管理育成と言ったって無理なんですよね。だから、それは、無理だから教えても難しいなと。むしろ、それをやらせたほうがよくて。第三者にやらせて、例えば、われわれにやらせて、そこから今度一緒にやってみて、その中でノウハウを何年もかけて吸収していく、もしくはそこで得たノウハウを別の国で展開するみたいなことをしないとたぶん駄目で。これって、もう僕らの場合だと、ディストリビューターを発掘して選定するという、この選定プロセスのときからもう関わっているでしょう?
東:はい。
森辺:だって、こいつにしようというときに、どれぐらい鞭打ったら響くやつかとか、どれぐらいで折れちゃうやつかとか、どれぐらい約束を守るやつかとか、そういったものを探りながらやっていくわけじゃない?切った張ったしてね。
東:そうですね。
森辺:そうすると、もうそこから始まっているんですよね、管理育成のマインドづくりって。向こうも、ここと付き合うんだったらこれぐらい覚悟してやらなきゃ駄目だなと本気にさせるわけじゃないですか。最初から本気で「お宅の商品売りたいんだ!」なんて、本当の本気に本気に思っているところなんてそんなになくて。彼らが本気で思っていることを、さらに本当の本気にさせるために、どう彼らを奮起させるかということはすごく重要で。それってもうたぶん、前段階から始まっていて。だから、出来上がったものにいきなり「管理育成しましょう」なんていうのは、相当な抵抗があって、流れるプール右に曲がっているのに、左に回るみたいなね、そういうことをやるぐらいのたぶん覚悟がないと、なかなか難しいと思うんですよね。だからこそ、「自前だけでやるのは無理だよ」と僕は言うんですけどね。でも、そこってやったことないから難しいっちゃ難しいですよね。
東:まあまあ、イメージができないということですよね。
森辺:できないですよね。
東:なるほど。そうは言っても、まあまあ、切り出さないよりは切り出したほうがいいと思うんですよね。
森辺:うん。徐々になんですよ。日本のメーカーの場合は、ディストリビューターと、とにかくもめたくない、相手と摩擦を起こしたくないというのがすごくあって。もちろん引けないぐらい摩擦を起こす必要はないし、それは担当者は収める自信がないと、それは摩擦を起こしちゃ駄目だけど。でも、摩擦がないところに進歩ないというか、摩擦が起きて火花が飛ぶから新しいことが生まれて先に進むんだと思うんですよね。
東:そうですね。
森辺:それが何か肌触りいいことばっかりお互い言っていたら、たぶん、全く新しい方向には進まないから、ケンカ別れしちゃうんじゃないんだけど、いい意味でのケンカをする、そんなのは、たぶんすごく重要だと思うんですよね。
東:でも、海外のディストリビューターも、会議室の中でもめていても、ご飯食べたらケロッと忘れていますもんね、普通に。
森辺:まあ、そうね。だから、もめ方とテイクケアの仕方と、言うことはっきり言ったらいいし、駄目なことは駄目だし、いいことはいいし。だから、そこじゃないかな。別に大人だからね、そんな大声出してケンカするという話でもないし。
東:そうですね。
森辺:なので…。でも、そこって、やっぱり、僕も「どうやるんですか?」と言われても、それ、やり方じゃないからね、やったことあるかないかみたいな話で、何かマニュアルがあってやりましたとかという話ではないでしょう。
東:はい。
森辺:だから、そこってなかなか難しいと思うんだよね。そういう現場にどうやって居合わせるかというか、そういう話な気がする。
東:経験値のほうがものを言うということですよね。
森辺:ということだと思うんだけどね。
東:分かりました。でも、そこでディストリビューターの、何でしょう、言い方悪いですけど、首根っこを掴めるかどうかみたいなところも当然あると言いますよね。
森辺:もう、一貫して言えるのは、企業規模が1万倍違うのに、日本の製造業とディストリビューターと、完全にディストリビューター・イニシアティブになっているケースというのが本当に多い。たぶん、比率で言うと、2:8の8でそうなっちゃっているんですよ。ディストリビューターをしっかり首根っこ掴めているのって、たぶん2割ぐらいで。それって、日本人が優しすぎるという、そこがいいところなんだけども、ある意味、逆から言うと、へなちょこ過ぎるというね、そういう感じの世界じゃないでしょう、海外って。
東:はい。
森辺:だから、そこに僕は非常にもどかしさを感じるというか、「えっ、この会社、これだけこのディストリビューター悪いって分かっているのに、なんで切り替えないの?」というね。
東:なるほど。(笑)
森辺:いや、それは今日ここを切ってそこから新たなディストリビューター探すと言ったら、売上がストンと減るから、そういうことを言っているんじゃなくて。この人はこの人で置いておきながら、新しいところと着々と進めないと、もうこことやったって絶対売上は上がらないのはもう数字が証明している。なのに、何をまだ言っているんだろうみたいなケースってあるじゃない?
東:はい。
森辺:だけど、担当者の身になってみたら、そりゃあ、担当、自分の担当のときにそれやらなくてもいいよねと。次の担当のときでもいいんじゃないの?って、それは当然なるでしょう?
東:はい。
森辺:僕が会社勤めしていても、そうなるもん。
東:そうですね。(笑)
森辺:ややこしい。これ、そんなことやって、誰か評価してくれるのかって言ったらね、上司が評価してくれるんだったらいいけども。うーん、なかなか厳しいよね。
東:なるほど。分かりました。
森辺:ネガティブだね。
東:森辺さん、ちょっとここまでにしたいと思います。次回もよろしくお願いします。
森辺:よろしくお願いします。