東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回は「1P戦略」、「1P戦略」から品質の話につながって、税関の申告書の話になったんですけども、それって、例えば、ほかのところでも感じたりするところってあるんですかね?
森辺:チラシとかね。
東:あー、はいはいはい。
森辺:もう、めちゃめちゃいいチラシ、いい紙でつくるじゃないですか。
東:はい。
森辺:まずね、紙がすごい上等なんですよ。
東:あー、確かに。
森辺:日本の紙って。これ、紙の会社、製紙会社がね、素晴らしいからということもあって、われわれはそれに慣れているからいいんだけど、別に、欧米でもね、こんないい紙使ってないよという。
東:(笑)
森辺:アスクルで売られているA4紙がさ、めちゃめちゃきれいでしょう?
東:真っ白ですもんね。
森辺:真っ白でしょう? もっと不純物入りまくっているわけですよ、海外だとね。もっとざらざらしているわけですよ。でもね、それで十分BICのペンは走るわけじゃないですか。
東:うーん。
森辺:だから、全然問題ないのに、なんかね、日本はね、いいんだよね。紙はすごいね、いいなと思うよね、品質がね。
東:でも、なんか、ちょっと白いところに少し不純物があったら、ちょっと嫌ですもんね。(笑)
森辺:うん、そう。なんか、たまにね。
東:日本人的には。
森辺:使わないみたいなね。
東:そうそうそう。アジアとか、たぶんヨーロッパの人から言うと、あんまり、たぶん、「真っ白である必要はないじゃない?」みたいな、たぶん感覚があるんでしょうね。
森辺:あれ、たぶん、真っ白にするということは本当に不純物が少なくて。
東:そうですね。
森辺:高くなるんだと思うんだけども。それもそうだし、紙とかは比較的そうだよね、品質がいいよね。でも、何でもなんだけどね。今、パッと周りを見てもそうだけど。僕、幼少期、海外で育ってさ、日本に帰ってきたときに一番最初に感動したのはね、日本の内装。
東:はいはい。
森辺:壁紙とかさ、めちゃめちゃきれいなわけよ。
東:そうですね。
森辺:海外とか行くとさ、基本、壁紙なんて張ってないから、塗ってあるというね。
東:そうですね。(笑)
森辺:汚れたら、また業者呼んで塗ってもらうという、そういう感じだったからね。「いやー、きっちり壁紙をお張りになられるなー」とかって思うし。あと、壁とか天井とか床とかの角。角ってね、ずれているんだよね、ちょっとこの当て板みたいのがね。
東:曲がっていたりしますもんね、海外行くと。
森辺:うん。するでしょう。そういうのがないし、天井がちょっと浮いたりもしていないし、とにかく真っすぐなんですよ。トイレとかに行っても、海外とか行くと、明らかに便器が5個付いていたら、「あれ? なんで、ここの便器とここの便器の間がちょっと狭いんだ?」とかね、「これちょっと間違えちゃったのかな」とか、そういうのがすっごい気になるんですよ。「これ、便器、無理やり3つくっつけたけど、常時2人しかトイレできないじゃん」とかね、ああいうのも、まずないじゃないですか。
東:はいはい。
森辺:あと、マンションとかの扉でもね、「これ、隣の人と両方開けたら、ドアぶつかっちゃう」とか、本当にあるんだ、そういうのがね。「いや、安いところに住んでいるからだろ、おまえが!」って。
東:(笑)
森辺:そういうことじゃなくて。それ、めちゃくちゃ高級なところでも本当にあって。何を取ってもいいんだよね。
東:うーん!
森辺:最近だと、僕、Amazonで、引っ越したんですよ、最近ね。
東:はい。
森辺:引っ越して、ケーブルがごちゃごちゃなるじゃない、ばらばら。かみさんが、「これ、ちゃんとケーブルホルダーに入れて」とか言って、Amazonで買ったんですよ、そのとき。ケーブルを収納して壁にペタッて両面テープで貼って、そのパイプの中にケーブルを入れてケーブルを見えなくするやつがあるじゃない?
東:はいはい。
森辺:Amazonで買ったのね。中国製です。中国製よくなったとはいえ、やっぱり、何だろう、パイプっていうの? パイプが3本あるんだけど、切れ目がね、ちょっと曲がっているのよ。
東:(笑)
森辺:で、もう、すごい気になるの、僕、そういうのが。切れ目が真っすぐじゃないというの。それを日本のメーカーが中国でつくらせている、そういうパイプをね、もう1回買い直したの。その中国のやつね、両面テープ付きの3本、4本…、5本か、5本パイプが入っていて、いろいろコネクターとか付いていて2,600円ぐらいしたやつを、もう捨てて、わざわざ、もう1回、1本450円でメイコウ(実際にはサンワサプライ)というメーカーだったかな、日本のメーカーのやつを買ったのね。それはビシーッて真っすぐなのよ、切れ端がね。だから、例えば、そういうこととかね。とにかくね、真っすぐ!日本の。
東:(笑)曲がってないんですね。
森辺:曲がってないのよ。これがすごい気持ちいいんだけど、けど、まあ、何だろう。
東:それは、日本で戦ううえでは必要だけども。
森辺:必要!
東:一旦、日本の外とか、特にアジア新興国に出てしまうと、それがよく言われる過剰みたいな話になりがちになってきてしまうということなんですかね。
森辺:うんうんうん。で、その「何か」にもよると思うんだよね。ものすごい富裕層をターゲットに、ものすごい単価の高いものを売るんだったら、そうしたほうがいい。これは欧米はまさにそうでしょう? ヨーロッパなんかそうじゃない? 例えば、時計なんか見てもらったらいい。だって、クオーツのほうが時計の時間が正確だって言っているのに、電波時計のほうが絶対正確だって言っているのに、機械式時計を何百万、何千万で売ると言うんだからね。あれはもう、アート作品として売るわけじゃない?そういうものに関しては徹底的に品質にこだわったらいいんだよね。だから、お金が積める品質のこだわりと、積めない品質のこだわりというのがあって、もうステレオの値段はいくらというのがもう、中国メーカーがいる限り決まっちゃうわけじゃないですか、相場が。
東:はいはいはい。
森辺:そしたら、そこの単価を上げようと思うと、もう品質じゃないんだよね。品質+ブランド力だから、いかにそのブランドストーリーを付けるかということをやっていかないと、もうそのものの値段は上がらないわけですよ。なのに、日本の企業の多くは、まだまだね、品質を磨けば金額を上げられると思っていて、そこに大きな間違いがあって。金額は品質じゃ上がらないんですよね。金額はブランドじゃないと上がらなくて、そこをはき違えちゃっている企業がまだまだ多いので、絶対的なドリームプロダクトにはならないよね、日本のメーカーというのはね。
東:なるほど。そうすると、品質が金額に代わることはないと。
森辺:うん。もう、上限があるからね。僕はそう思っていて、なのに、なんで税関申告…、携帯品申告書類はあの黄色い厚紙を20年以上使ったんだと。
東:はいはいはいはい。
森辺:あんなもの、何でもいいじゃないかと思っちゃうわけね。
東:はい。
森辺:ああいうところにあれを使っちゃうということが、もうわれわれの、何だろうな、日本人の魂なんだろうね、きっとね。だから、企業が海外に出るときには、やっぱりそこを変えていかないと苦しいんだよね。文具にどれだけ品質こだわったって。文具メーカーさん、申し訳ない。でも、たかが文具なんですよ。たかがという言い方は本当に申し訳ないけど、文具の相場って決まっているわけよね。そしたら、ステレオセットにいくら品質磨いたって、たかがステレオセットで、もう決まっているわけですよ、相場は。そうすると、品質を磨くことによって金額は上がらないので、文具の単価を上げたければ、そこにブランドを乗せるしかないんですよね。品質は大切なんですよ、最低限の品質は維持しないといけないんだけども、やっぱりブランドを乗せる、そういうことをこれからの日本企業って、たぶん、やっていく必要があって。だって、品質はもう十分いいわけじゃないですか。そしたら、ヨーロッパのようなブランディングをそこにマーケティングのメソッドとして乗せていけたらね、僕、これからの日本企業ってすごいなと思っていて。今言った文具メーカーもステレオメーカーもね、どうやってこれからそこにブランドを乗せていくかということを考える。そしたら、ヨーロッパのメーカーにね、打ち勝つことだって全然僕はこれからできると思うから。そこをね、何だろう、肉体改造していくというか、そういうことがやっぱり本当に必要だなというふうに思うんですよね。
東:はい。分かりました。じゃあ、森辺さん、今日は時間が来ましたので、ここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。