東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、今日はリスナーの方から質問を受けているんですけども、商品名は伏せたほうがいいのかなと思ったのでこちらで勝手に伏せますが、日本ではなかなか、たぶん知られている商品で、ちょっとカテゴリーを言っちゃうとバレちゃうかもしれないので、カテゴリーはちょっと置いておいて、多少高額な、アジアとか東南アジアに持っていくと少し高額にはなると思うんですけど、「プレミアム感を出して売りたいです」と。「今後、なかなか売上に苦戦しているんですけども、どうしたらいいですか?」みたいなご相談が来ているんですが。Podcastということで、一般メディアなので少し匿名というかたちにはなるんですが、一般的にこういう場合ってどうしたらいいですかという。
森辺:FMCGだよね?
東:そうですね。FMCGですね。
森辺:これね、たぶん日本のFMCGの課題って総じて同じなので、一部の国の一部の企業の例外を除いては、たぶん総じて問題は一緒で。結局、戦略はプレミアムという戦略なんだよね。日本から持ってきている、もしくは現地でつくっているんだけど、日本のメーカーの商品ですと。なので、ちょっと割高と。そんな中で、MTにしか置かれていなくて儲かりませんっていうのが、日本企業の多くの課題なんですけどね。当たり前っちゃあ当たり前なんですよね。別にプレミアムの戦略で売るということは、別に悪くはないので、それをするならそれで結構なんですけど、ただ、FMCGという領域がまたこれすごく複雑で。FMCGのビジネスの最大のポイントって、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかに繰り返し永遠に買い続けてもらうかっていうことがビジネスの肝なわけですよね。そうすると、絶対にもう数なんですよね、数の勝負と。なので、中間層を狙いますというのが絶対なんですよ。そうすると、1本5,000円、1万円する化粧水を売っているんだったら、これは富裕層で結構だし、日本でも富裕層を相手にしているFMCGなんだったらそれで結構なんだけども、日本で中間層を相手にしているんだったら、やっぱりアジア、ASEANに出ても、これは中間層をターゲットにする必要がありますと。その中でプレミアムで敢えて行くわけでしょう?
東:はい。
森辺:ここがまあ…、さっき、悪くないと言ったんだけど、そもそもの発想が、自分たち、日本の商品で格下のアジアに行くからプレミアムだと言っているだけのプレミアムなんだったら、それはちょっとお門違いだという話で。やっぱり、日本でも中間層を狙っているんだったらアジアでも中間層を狙わないといけないし、仮にしっかりとした、なぜプレミアムの戦略を取っているかというしっかりとしたロジックがあったとしてね、あったとして、でも伸びないMTにしか置かれてなくてというのであれば、もうこれ、原因1つで、いわゆるストアカバレッジが足りないという話なんですよ。つまりは間口が足りない。もっと分かりやすく言うと、置かれている店舗数が足りませんという話になっちゃうんですよね。数千店舗ぐらいにしか置けなかったりするわけじゃないですか。
東:うんうん。
森辺:そうすると、当然、数千店舗にしか置いていないので、1日にどれだけ頑張って売ったって限界数というのがあるので儲からないですよね。もしそうしたいんだったら、方法は2つしかなくて、やっぱりMTだけじゃなくてTTまでストアカバレッジを伸ばすか、いやいや、もうプレミアムなんて絶対MTでしか売らないんですというのであれば1日で売れる量を増やすしかないです。縦軸を増やすしかない。そうすると、何をするかと言うと、前者はストアカバレッジを増やすので、チャネルを強化してストアカバレッジを増やしましょう。後者のインストアマーケットシェアを上げるということはもうプロモーション投資をするしかないんですよね。問題は、多くの日本企業は「自分たちはプレミアムだからいい商品なんです」と言ってMTの棚に並べるんだけども、それを消費者に訴求しきれていない。いや、そういう戦略なんだったら、逆に、なんでプロモーションに投資しないんですか?という話で、もうどっちかじゃないですか。
東:はい。
森辺:もう、ストアカバレッジを広げるのか、プロモーション投資してインストアマーケットシェアを上げるのかという。だから、ここが「男は黙ってサッポロビール」でね、このおれたちの良さを皆まで言わずとも分かってくれよみたいなことを言っていても、日本では通じるかもしれないですけど、なかなか海外だと通じないよねというのが1つ問題なのかなと思いますけどね。
東:なるほど。
森辺:ちょっとはっきり言い過ぎていたら、すみません、視聴者さん。
東:(笑)そしたら、ちょっともう1回分かりやすく整理すると、プレミアムで売ること自体を、すぐ商品を変えるってなかなか時間がかかるし、日本で売っているものをたぶん変えようとすると、なかなか抵抗感もメーカー側としてはあると思うんですけども、そうした場合、プレミアムでいくということは仕方がないと割り切った場合、解決方法というのが2つあるとおっしゃったと思うんですけど、1つ目はどういうことで2つ目はどういうことかというのを、ちょっともう少しかみ砕いて教えていただきたいんですけど。
森辺:1つ目はストアカバレッジを上げること、つまりは売られている店舗数を増やすことですよね。でも、これは限界があって、MT以外ではそんなプレミアム商品は売れないので、TTなんかでは売れないので、そうすると絶対数というのはMTの絶対数になっちゃうわけですよね。あと、ものによってはホレカ、いわゆるホテル・レストラン・カフェを狙うというのは1つあるかもしれないですけど、基本的にはもう売り場は限定的ですよと。売り場が限定されちゃうんだったら、むしろ縦軸を伸ばす。インストアマーケットシェアを上げる。要は、1店舗あたりの売上をもう爆発的に回転させるしかないですよね。じゃあ、これ1店舗あたりの売上を爆発的に回転させるには何が必要かと言うと、プロモーション投資が必要なわけですよ。なので、いやー、自分たちはプレミアムだからチャネルは強化しません。もう置く場所はこのMTだけですと言うんだったら、その置いたMTで爆発的に売れるためのプロモーション投資をしないと駄目よ、チャネル投資しない代わりに、ということを間違えっちゃってるんです、多くの日本企業はね。
東:なるほど。
森辺:チャネルも、TTもやりたくないからチャネル投資はしないけども、MTには取りあえず置いてプロモーション投資もしないと。いいものだから黙っていても売れるでしょうみたいな、極端に言うとね、それは駄目ですよという話ですよね。
東:分かりました。じゃあ、森辺さん、今日は時間がきてしまったのでここまでにして、また次回、引き続きよろしくお願いします。
森辺:よろしくお願いします。