東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回、「プレミアムな商品を東南アジアに展開するにはどうしたらいいんですか、なかなか苦戦しています」というようなかたちで、ストアカバレッジを増やすのか、インストアマーケットシェアを増やすのか、どちらかしか選択肢がないんじゃないですかと、なかなかどっちつかずになっちゃっているのが問題なんじゃないかというところをおっしゃりたかったんだと思うんですけど、どっちつかずになってしまう原因というか、そうなりがちなところがあるというのはどうしてなのかというのは、森辺さんなりの客観的な見方を教えていただければと思うんですが。
森辺:あのね…、戦略がやっぱりあまいんですよね。ないとまでは言わないんですけど、戦略が甘過ぎていて。例えば、調査がなめるような表面的な調査しかしていなかったりとか、基本的には消費者系の調査はしたけども産業系の調査をやっていないとか、具体的に言うと、競合のストラテジーの理解が全くないとか。基本的には競合と出て競合と戦うわけじゃないですか。特にFMCGなんて、スーパーに並ぶということは同じカテゴリーで並ぶわけでしょう?クッキーはクッキー、チョコはチョコ、ガムはガム、パンはパン、何とかは何とかってね。そうすると、やっぱり競合との戦いになってくるのに、競合の何となく、こんなすごいとか、シェアはこれぐらい持っているということは分かっていても。具体的に彼らが何社のディストリビューターを使っていて、どういうふうな専任営業マンがいて、彼らをどうマネージメントしていて、日々どういう動きをしているのかみたいな、その組織を束ねている部長はどういうやつなんだみたいな、そういう情報がないので、自分たちのセールス部隊と競合のセールス部隊の戦闘能力の差が具体的に分かっていないので、日々、差がどんどん出ていくみたいな、そういう状況がやっぱり多くて。調査をしていないので、インプットが少ないんですよ、日本企業は。インプットが少ないから、当然アウトプットななるべく戦略も少ないと。結局、ご相談に来られるときの相談のレベル感がものすごい大企業でもものすごい低いレベルでの相談になってしまっていて、これだったら進出する前にたぶん議論できたはずだし、進出する前に調査しておけばたぶん分かっていた問題を、出て何年かしてから再びというケースがほとんどというか、もう9割がたそうなんですよね。だから、もっと高い次元での革新的な戦略を打ち出したいみたいな話よりかは、もう本当に初歩的なところで転んでいるというのが、大手を含めて、FMCGは特にそうですよね。
東:そうなると、やっぱり進出する前にある程度戦略を持って進出する。輸出でも、当然、工場投資となれば、それなりに数十億というお金が掛かってくると思うので、それを掛けるまえに、やっぱりどういうことを事業計画としていくのか、競合は何をやっているのかというのは戦略として把握しながら戦略を自社で立てなきゃいけないということなんですね。
森辺:別に外部を使ったほうがいいとかコンサル使ったほうがいいということを推奨しているわけじゃないんだけども、自力でやれるんだったらやったらいいと思うんだけども。例えば、インドネシアに出るのに、インドネシアに駐在して事業したことがある人が戦略づくりに参加しているんだったらまだいいんだけども、そうじゃない領域でインドネシアの戦略をつくったり、フィリピンの戦略をつくったりベトナムの戦略をつくったりするわけじゃないですか。仮に事業を現地で駐在してやっていたとしても、駐在で行くというのは、企業にもよるけども、必ずしも戦略をつくるというので行くわけじゃないじゃない?
東:うーん。
森辺:決められた仕事を現地でやる、こなしますということで行くわけなので。じゃあ、駐在していたから戦略づくりができるかと言うと、必ずしもそうじゃないし、駐在していたから全部知っているかと言うと、そうでもないでしょう?
東:うんうん。
森辺:だから、そういう意味では、やったことない人たちだけで戦略をつくろうとするから仮説も甘いし、自分たちが何が分かってないかが分かってないという、そういう状態になってしまうという。だから、そこは日本に優秀なコンサルティングファームがないという歴史もたぶん大きく影響していて、結局、戦略系の強いところなんて全部欧米系でしょう?マッキンゼーにしろ、ボスコンにしろ、アクセンチュア。
東:そうですね。
森辺:だから、そういう意味ではやっぱりそこは非常にあると思うんですよね。そういうものづくりで進化してきた国だから、「別に戦略とかどうでもいいんです。ものさえしっかりつくっていれば私たちいいんです」で70年代80年代90年代グワーンっと上がってきたのが日本の企業のほとんどじゃない?
東:うん。
森辺:なんだけど、今、「ハードの重要性よりも、ソフトだ、サービスだ」と言われる中で、製造業も戦略が必要になってきていて、けどそれを支援する会社が少ないと。だから、僕はこんなことをやろうと思ってやっているわけなんだけども、そこが1つ大きな要因なんじゃないかなと思いますけどもね。
東:なるほど。そうすると、もう…。ただ、そうは言っても、結構もう出てしまっている、出ようとしている、出てもう数年が経つとか、数十年経つという企業さんのほうがもう圧倒的に。
森辺:多いですね。
東:たぶん多いと思うんですけど、そうなると、再構築なのか何なのか、それに対しての解決策を多くのリスナーさんは特に知りたいと思うんですけど、その辺はどうしたらいいですかね?
森辺:ここ5年ぐらい、圧倒的に増えているのは、健康診断したいという、自分たちの海外事業を。何をどうして、どうしたらうまくいくとかということよりも、「そもそも自分たちがやっていることって正しいの?間違っているの?競合と比べてどれぐらいの差異がそこにあるの?」みたいな、いわゆる自社の診断ですよね。それを内部でできないから、外部を使ってやるというのが非常に増えていて、うちの仕事もそういう仕事がかなり多い。だから、具体的に言うと、例えば、ベトナムの事業を10年こうしてやってきているけども、言ったら計画通りには進んでいないし、全くもって満足な状況ではないと。そうすると、何が問題なんだということをファクトベースで全部数字で出していきますということで。さらには競合と比べてどれぐらい劣っているのかということを、勝っているというケースはないんだけどね、ベトナムとかの場合。それを見ていく、そういう診断をするんですよ。それをやると、何が問題かが分かるじゃないですか。がんがどこにあるかというのが分かるわけですよね。そうすると、そのがんを切除できるがんなのか、できないがんなのかを判断して、できないんだったらもう撤退だし、できるんだったら治療していきましょうと。治療の方法はオペなのか、抗がん剤なのかみたいな、そういう話になっていくということですよね。
東:了解いたしました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。