第209回 【Q&A】ASEAN市場 – 複数のディストリビューターを活用した場合の不都合
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も早速、皆さんからの質問にお答えをしていきたいと思います。それでは今日の質問をちょっと読みますね。FMCG、大手食品メーカーさんからの質問でございます。「複数のディストリビューターをASEAN某国で使った場合、広告やマーケティング、カスタマーサポートはどうすればよいのでしょうか?」ということなんですが、「弊社はFMCGです。…複数のディストリビューターを活用した場合、広告やマーケティング、そしてカスタマーサポートのレベルがばらばらになってしまうような気がするのですが、そのあたりはどうすればよいのでしょうか?」ということでございます。
これは私が、この番組でもそうなんですけど、FMCGのようないわゆるFirst Moving Consumer Goodsと言われるのは、食品や飲料、菓子、日用品等の業界のことを指すんですが、そういった企業のビジネスの本質って、いかにたくさんの人たちに、いかに速い頻度で、いかに永遠に繰り返し商品を買ってもらえるかということが非常に重要なわけですよね。そして、アジア新興国、ASEANというふうに書いていますけども、ASEANのいわゆる小売流通の最大の特徴は、近代小売だけじゃなくて伝統小売がある。MTだけじゃなくてTTが存在する。そして、そのTTの比率が非常に高い。例えば、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンだと、8割9割がまだまだTTなわけですよね。ベトナムで言うと、3,000のMTに対してTTが50万店存在する。食品が置けるTTだけでも30万店存在して。最もMTが多いインドネシアですら3万5,000店ぐらいですね、MTが。うち3万店はアルファマートとインドマレットなので、残るMTというのは5,000店舗ぐらいになってしまうと。一方で、TTがどれぐらいあるか、伝統小売がどれぐらいあるかと言うと、300万店存在するわけですね。結局、TTで売らなきゃ儲からない。MTというのは高い棚代、リスティングフィーを取ったり、強制プロモがあるわけで。そんなところにもし商品を並べたら、これショーウィンドウみたいなかたちになるわけですよね。ショーケースなわけですよね。そこで高い費用をかけて商品を置くということは、いかにTTのストアカバレッジを上げて、そこで稼ぐかということが非常に求められるわけなので、物理的に1社のディストリビューターじゃ、それだけの間口に商品を配荷することはできない。つまり、到達させることはできないわけなんですよね。だから、「複数使いなさいね」というふうに、この番組で申し上げていて。P&Gとか、ネスレ、ユニリーバのような先進的な消費財メーカーは必ず複数のディストリビューターを使っています。エリアごとに分けて。それをやらないと、言ったら、ストアカバレッジが上がらない。ストアカバレッジが上がらないということは、売上が大きく拡大していかないということなんですよね。でも、この質問者の方は、それをやると広告やマーケティング、そしてカスタマーサポートのレベルがばらばらになるんじゃないのかということをおっしゃっているわけなんですが、そもそも「広告やマーケティング、カスタマーサポートって誰の仕事ですか?」と言ったら、メーカーの仕事なわけですよね。これ、決してディストリビューターの仕事じゃないので、ばらばらになってしまう気がするんだけど。それって、そもそもディストリビューターにやらせていいんですかという話になってしまうので。ちょっと何とお答えしていいのかあれなんですが、基本的にはメーカーの仕事であるということを理解しないといけないというのが1つ。
そして、一方で、ある一定のマーケティング活動やカスタマーサポート活動を仮にやらせたとしても、それってやっぱり明確な基準をメーカー側で持つ必要があって。例えば、「広告宣伝はこうしてください」「マーケティング活動に関してはこれとこれとこれだけをやってください」とか。カスタマーサポートに関してはもう完全なるカスタマーサポートマニュアルをメーカー側がつくって、それをしっかり育成をして管理をしていくということはメーカーの仕事としてやらないといけない、最低限でもね。広告やマーケティング、カスタマーサポートと言ったらメーカーでやるべきなので、それを仮にディストリビューターにアウトソーシングするということなんだとしたら、それは最低限メーカー側でそれをしっかり施行させる基準を持つということと、それがしっかり施行されているかということを管理していくということと、そのレベル感を高いところで維持するための教育の仕組みをしっかりするということの3つはやっぱり最低限やらなきゃいけないと思うので、そこはそうなんじゃないかなというふうに思います。
これ、現地に法人が、大手の消費財メーカーなので、ある国とない国があるんですよ。生産工場を、当然この会社はアジアに持っていますし。そうすると、現地法人がある国とない国と、輸出でやっている場合はもう物理的にカスタマーサポートなんて現地にできないし、広告やマーケティングもある程度ディストリビューターにお願いしないといけないので、現地法人があるとなしで程度の差が出てくるとは思いますが、基本的には広告やマーケティング、カスタマーサポートというのはメーカーの仕事です。それをディストリビューターにやらせるにしても、明確な基準をしっかりつくるということが重要だと思います。
本日は以上です。また次回お会いいたしましょう