東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の続きなんですけども、ちょっと時間をかけてディストリビューターの介在度を増やして、情報を開示してもらうような関係性づくりにすると。3年間ぐらいかけたほうがいいんじゃないですかという森辺さんのアドバイスがあったんですけども、何となく1年ごとの区切りで、どういう段階をステップアップしていったらいいのかみたいな、大枠で構わないんですけども、教えていただければと思うんですが。
森辺:信頼関係ってやっぱり接してる時間だと思うんですよね。一緒にユーザーを回ったりとか、一緒にいろいろなところに行ったりとか、それこそくだらない話かもしれないけど、遠方のユーザーに一緒に車で行って道中いろいろな話をする中で、見えないところで人間関係が徐々に出来上がっていったりするわけなので、時間ですよと。その中で、やっぱり1年目って、僕なんかは最初の1年を現状の可視化をする年だというふうに決めるんですけど。要は現状が全く分かってないわけじゃないですか。特に、いわゆる担当が何年かに1回、日本のメーカーとかだと変わっていって、前任から引継ぎはしたものの現地の状況がよく分かっていないし、ディストリビューターの社長には会ったことあるけども、基本何がどうなっているのかは分かっていないと。これをやっぱり可視化していくということをやらないといけないし、自分たちだけで可視化できるという、内部から可視化できることと、内部からではどうしても可視化できないことってあるんですね。客観的に外から見ないと、自分たちのディストリビューターの競争力がどれぐらいなのかとか、競合と比較したときにどうなんだ、上なのか下なのかみたいなね。そういうところは外部を使って可視化していくわけですけども、まず問題、現状を可視化するということをやって。現状を可視化して、可視化すると対策を組めるので、その対策を一緒にやっていこうというのが2年目の年ですよね。1年間現状を可視化する中でいろいろなコミュニケーションを通じて、ディストリビューターとの関係性がより近くなりますから、2年目に、「じゃあ、こういうことを変えていきませんか」って、1つの小さな実績、これをつくるということを2年目にやって。1個の小さな成果が出ると、実績が出ると、次、次、次ってつくりやすくなるので、それを2年目にトライをして、3年目にそれを思いきり拡大させるみたいなかたちでやっていかないと、急に何かこちらから一気に要求しても、たぶんディストリビューターは言うことを聞かないし。1年目の現状の把握というのが、現状を把握したときにディストリビューターから要望がいっぱい出てくるので、まずそれを受け入れるということですよね。takeだけ先にしようとしても絶対無理なので、彼らの要望をある程度飲むべきところは飲むということをやっぱり1年目にやる。そのための可視化なので。現状把握なので。その後、今度はtakeをしていくという。takeといっても協働で一緒に成長していくという話なので。必ずしもtakeかということでもなくて、実はgiveなんだけどね。でも、そういうことをしていかないとなかなか難しいんじゃないかなと思います。
東:なるほど。そうすると、1年目は現状整理をまずすると。現状把握して、それにとって戦略というか、対策を。
森辺:うん。考えて。
東:立てて、2年目に1つ実績をつけて、3年目にさらに積み上げていくみたいな感じで。
森辺:うん。やっていくのが、たぶん一番よくて。たぶん、そういう会社って、10年とかじゃなくて、本当に20年とか、30年とか、そういう感じでやってきましたという会社がもうほとんどだと思うので、それを3年で風向きを変えるのだって結構大変で。ずっとプール右向きに流してきたのに、左に流しますよって、それ、急に流れは変わらないので、やっぱり2~3年は最低でもかけないと駄目なんじゃないかなと思いますけどね。
東:3年かけた後って、どこかで急に距離が縮まるものなのか、ある程度やっぱりじわじわじわ…なのか、というのはどういう感触ですか?今まで森辺さんがやられてきた中で。
森辺:相手あってのことなので、もちろんそこに差は大きく出るし、メーカー側も誰がどういうふうにやるかによって、Aさんだったらなんかムカつくから嫌だけど、Bさんだったらめちゃめちゃいいとかっていうのも当然あるわけなので。ただ、そんな俗人的な話をしていたら始まらないので、そこはそこで残るものの、やっぱりメーカー側がマーケットを熟知して提案する、現状把握した後に対策を考えるじゃないですか。
東:はい。
森辺:その対策案が優れていれば優れているほど、ディストリビューターは一緒にやろうという気になりますよね。
東:うんうん。
森辺:だって、自分たちのほうが優れていると思ったら、実はメーカーがものすごく優れていて、メーカーの言うとおりにやったら全部うまくいくわけだから。欧米の先進的なグローバル企業ってまさにそうじゃないですか。メーカー側のほうがその国のことをよく知っていて。ディストリビューターが頼っているわけですよね、そのメーカーの戦略にね。だから、日本のメーカーに本当に足りないのは、ものづくりはもう完璧に分かっているんだけども、「売る」という、現地で売るということをあまりにも無視し過ぎた、任せ過ぎたみたいなね、そこをやっぱり熟知しないといけない。そこを熟知するためには、マーケットをスタディするということをやっぱりやらないと駄目ですよね。だから、もっと調査をやったほうがいいと思いますね。
東:分かりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。