東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の続きなんですけども、仮説が甘いというところと、その原因はやはり情報量が足りないというところだと思うんですけども。もう1回、前回お聞きになっていないリスナーさんにも分かるように整理して教えていただきたいんですが。
森辺:今、日本企業のグローバル展開、海外展開の至らない部分ということで確かお話をしたと思うんですよね。どういうところに気付きますかと、いろいろなお客さんからいろいろなお話をいただくときに、知識量が全然足りていないと思うんですよね。その知識ってどういうやって得られるか、情報とか知識とか。情報を何十にも重ねて経験をしてそれが知識になるから、情報ですよね、情報量が足りない。この情報というのは、自分たちが得ているような情報ではなくて、本当に調べないと手に入らないようなレベルの情報。結局、戦略ってアウトプットですよね。そのアウトプットを出すには、インプットという情報がないとアウトプットは絶対出ませんと。インプットがいくら大きくても、たくさんあっても、知識と経験を掛け合わせて初めてアウトプットの戦略ができるので、必ずしもインプット=アウトプットにはならないんだけども、最低限インプットがないと、インプットない、知識ない、経験ないでは、ないない尽くしで失敗するのは目に見えているでしょうと。であれば、もっとやっぱり調査して調べないと。例えば、市場環境をもって調べないと。競争環境をもっと調べないと。競合はこことこことここだというのは分かっているんだけども、じゃあ、その競合が具体的にどれぐらいの脅威なのかということを数字で分かっていない。自分たちの使っているディストリビューターの競争力も数値で分かっていないので、ほとんど何も分かっていないんですよ、数値ではね。そういうことを数値で比較して初めて自分たちがこれぐらい優れているとか、劣っているということが分かるので、じゃあ、その差異をどう埋めていこうかということを今度考えるという思考ができるわけですよね。でも、それがやっぱり全くできていないというのが今の現状、日本の大企業、製造業で。大企業でできていないからね、中小企業なんかないに等しくて。中小企業は実は必要ないんだけども。大企業はそういう状態です。なので、やっぱりここを付け加えていくということをしないと駄目なんじゃないかなというふうなことは、もう長年強く思うことですかね。
東:そこはやはり、最初やるとしたら、情報量を増やすというところからやらないと、どうしてもそこはずっと足りないままになってしまうという感じなんでしょうか?
森辺:仮説が甘いので、取りあえずやってみるとなるんですよね。取りあえずやってみるということは非常に重要なんだけども、高い仮説を持ったうえで取りあえずやる。要は、めちゃめちゃスピーディーに高い仮説をつくって、そして、めちゃめちゃスピーディーに取りあえずやるっていうことの連続なんですよね。この一形態が高くて速ければ速いほど、成功確率は速くなるし上がっていくということなわけじゃないですか。だから、より速くより高い仮説をつくって、そして、それをより速く実行して、また仮説を修正して次に進んでいくということを、連続的に繰り返していかなきゃいけないんだけども。そもそも情報量がないから仮説が弱いですと。そもそも動きは速いほうじゃないから、ゆっくり取りあえずやってみるみたいな。そしたら、遅い・浅いみたいな、こういうことになってしまって。じゃあ、その代わり何があるのか?というと、根性論みたいなところで、下積みを積んでいけばいつかは成功するみたいな、そういう感じで、今、世の中は進んでないじゃないですか。
東:グローバルに入っていると。
森辺:80年代、90年代、2000年代ぐらいまではよかったんだけど、いわゆる石橋を叩いて階段を一歩一歩登ってという話なんでしょうけど、今の中国の各インダストリーの成長と言ったら、飛び石というか、段抜きで飛んでいくみたいな話だから、やっぱりそういう今までの戦い方では難しくて、超高速に情報を集めて仮説をつくって試してみるみたいなことをやらないと学ばないよね、というのは非常に思うので。
東:それはやっぱり競争環境が、森辺さんが言ったように、中国メーカーとか、アジア各国でも地場のメーカーが力を付けてきているというところがやっぱり非常に大きいんですかね?
森辺:それはそうですよね。だってもう、僕、本当に今でも、冷静に当たり前のように中国製を使っていますけど、20~30年前のことを思うと、「あの中国が」と。だって、今、中国のどの都市だってあんな巨体な、もうどの都市も東京みたいになっているじゃないですか?
東:うんうん。
森辺:あんなの20年前、想像すらできなかったのに、こんなことになっているわけなので、やっぱりそれは思いますよね。30年前のタイの企業とか、インドネシアの企業とか取引するにも値しない、買うなんていうことは想像すらしなかったような企業が、今は日本の企業よりも大きくなっていたりとか、そういう話なので、やっぱりもう、「ものがいいから調査なんて要らないんだ」なんていう、そういう時代じゃないんですよね。
東:そうすると、結構、中国とか海外のそういった地場のローカルメーカーというのは経営の仕方というのはやっぱりちょっと欧米よりという感じなんですかね?
森辺:そうですね。だって、あの企業を動かしている世代がやっぱり欧米で教育を受けてきたような人たちの層で企業が動いているので、日本みたいに、かつての日本の経済成長を支えた層がいまだにこの日本企業をコントロールして、その後の層だね、その後輩の層がコントロールしていると思うんだけども、中国の場合は全く違う次元で企業の統治がされているわけだから、そこはやっぱりなかなか厳しいよね。
東:そういう競争環境を見ても、より情報量、もしくは仮説力を高めてよりスピーディーに行動するということがより必要になっていっているということですかね?
森辺:なっている。現場の若手の20~30代は、その仮説が必要ですと。でも、会社の中には材料がなくて、予算を使って調査をして、その調査をベースに仮説を立てなきゃ駄目ですと。別に、この今いる大企業の20~30代の人たちって、お金を掛けて調べて仮説をつくるという力もあるし、仮説をつくってそれで終わりかと言うと、それをしっかりアクションに繋げる力だってあるんですよ。なのに、調査をして仮説をつくるとか、戦略を高めるということの重要性を、その決済をジャッジする人がいまいちピンと来てないから、昭和の世代の人たちだから、そこで予算がつかないという問題もやっぱり非常に…。
東:企業によってはある。
森辺:大きくあるんだよね。こんなことを言うと…、怒られちゃうよね。
東:(笑)
森辺:でもね、本当にそういうのをよく見るから…、そうですね。
東:そうすると、現場は現場なりにやっぱり危機感があるということですよね。
森辺:あると思いますよね。だから、若手は日本人の、日本の大企業に就職しているような20~30代の一流大学を卒業した人たちは優秀ですからね。
東:そうでしょうね。
森辺:だから、仮説が足りないなんていうことには気付いているし、社内にはそんなリソースはないということも分かっているし、ということは新規で調べないきゃいけないということも分かっていて。調べた情報をベースに仮説をつくる能力もあって、つくってそれでおしまいかと言うと、その仮説をベースにアクションする力まで備わっているんですよ、彼らにはね。なんだけども、企業としてそれを良しとする文化がやっぱりなくて、「おまえ、何言ってんだ」と、「そんな調査ばっかりしやがって」と、「とにかくやってみろ!」みたいなね、「いやいや、もうそういう時代じゃないでしょう」という話なので。苦労してやってみるみたいな、その上に成功があるみたいな、それは科学的じゃないよね。
東:なるほど。じゃあ、簡単に最後にまとめていただくと、少し長くなってしまいましたけど。
森辺:調査をしましょう!ということでございます。情報を収集して、そして仮説の確度を高める。高い仮説があったうえでアクションをするのと、何もない、もしくは低い仮説でアクションをするのでは、もう得られる結果が全然違うし、一番のがんは、自分は高い仮説を持っていると思い込んでしまっているというケースが非常に…。
東:少なからずあるという。
森辺:うん。なので、外部の客観的な意見を聞きながら仮説を高めていくという、もうこれがスピードと勝負の勝敗を決める一番のポイントだと思うので、ぜひ最低限の情報は持ってほしいなというふうに思います。
東:分かりました。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。