東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、結構、今ご相談いただくのが、ディストリビューターの切り替えについて、上からは「早く切り替えろ」と言われるけども、現場としては「これでいいのかな」という気も思っている、「ギャップに悩んでいます」みたいなのを、軽くご相談ベースではあるんですけれども、そんな悩みだったり、ご相談を受けることがちらほらあるんですが。その辺の当然切り替える理由があるんだと思うんですけれども、たぶんうまくいっていないから当然切り替えを考えていて、切り替える先は、もう継続することが前提で切り替えろ、みたいな感じになっちゃっている企業さんが結構多いのかなというような感じがしますが。その辺ちょっと、森辺さんのお考えをお聞きしたいんですが。
森辺:日本企業の場合、売上が思ったようにいかないから、よりいいところに切り替えようということはあまりやらない。本来であれば、そこをたぶんやらないといけなくて、販売戦略とかをしっかり見て、ここの会社のケイパビリティだと、もうこれ以上売上は伸びないから切り替えていこう、みたいな切り替えは大賛成なんですけど。基本的に、頑張っていて売上が伸びないけどもっと頑張ろうみたいな、そこは切り替えないよね。じゃあ、なんで切り替えるかと言ったら、コンフリクトが起きるから切り替えると。例えば、汎用品は合弁先がつくって、プレミアム品は日本との合弁会社がつくるみたいなね。とか、例えば、財閥でも、製造はしないと、基本的には合弁会社でしか製造しないと言っていたのが、自分たちだけでも製造し始めるとか。自分たちがつくっているほうの商品をより優位に売るというか、より力を入れて売って、合弁先でつくったものは、合弁で工場つくって、そこでつくった製品はあまり身が入らない、みたいな。こういうときに切り替えようかという話になっていくケースが大概だと思うんですけど。だいたい「急いで切り替えろ」と、基本的には「全部任せて大丈夫なところに切り替えろ」と。「早く切り替えろ」と、「全部任せてバンバン売ってくれるところに切り替えろ」と、こういう無茶難題が上から飛んできて、下は泡食うという、こういうケースが多いですよね。それで、駆け込んで来られるわけなんだけども、「そうは言われても…」という。
東:(笑)
森辺:そうすると、また同じことの繰り返しになりますよみたいなね。要は、またそれでディストリビューターを適当にとは言わないけども、大きいところ、ある程度、ネーションワイドにできるところ、そこと契約して。向こうもこっちのプリンシパルがケツに火が点いているのは分かっているわけだから、それなりの交渉をしてくるでしょうし。そことまたやって、またやっぱりうまくいかなくて、みたいな。「うまくいかないループ」みたいのにはまるわけなので、そういうときこそ、もう一旦腹を据えて、ゆっくり決め直したほうが、僕はいいなと思うんですけどもね。まあまあ、各社さん、事情があるんだろうとは思うんですけど。
東:森辺さんが、「ゆっくり腹をくくって、ちょっと考えたほうがいい」というところには、どういった考えがあるのか、というのをもう少し教えていただきたいんですけど。
森辺:例えば、今、付き合っているところと何かしらの問題が生じて、3カ月以内にディストリビューターを変更しないといけないということになったとしても、結局、それはなんでそんなに急ぐかと言うと、今、例えば、FMCGで、分からないですけど、10億円とか20億円ある売上が落ちちゃうわけじゃないですか。
東:うんうん。
森辺:落ちちゃうから、それを落とさないように、間を空けずに新しいところを入れるという話なわけですよね。それって、既存のところとまず、尻まくってけんかして関係を終えるというのは、どんなことがあっても絶対しちゃ駄目なことだから。それが、いきなり20億円が0円なんてなることは絶対あり得ないんですよ。それが3カ月だろうが、それを12カ月かけてディストリビューターをゆっくり変更、選ぶ間にね、12カ月の間に徐々に下がっていくというのはあったとしても、基本的にその既存のディストリビューターも売ったら売っている分だけ利益が出るわけだから、そんな極端なことをしなきゃいけない終わらせ方をしようとしているということは、まず間違いなんだよね。ある程度、友好的にやっぱり終わらせるということは非常に重要で。友好的に終わらせると、次のディストリビューターをアポイントするから、それまで既存の今まで通りの業務でお願いしますと。新しいディストリビューターが決まったら、そこから直接連絡をさせるので、引き継ぎの手配をお願いしますと。そうすると、小売のバイヤーにアナウンスを入れてくれて、小売のそのバイヤーのところに新しいディストリビューターが行って、小売に迷惑が掛からないように引継ぎをするというのは、そういう流れになるわけなんだよね。
東:そうですね。
森辺:既存のディストリビューターも小売に迷惑は掛けられないから、そこは別にやるんですよ。そんな、いじわるしてとか。
東:嫌々でもやるということですよね。
森辺:やるんだよね。それって、もう話し合い次第というか、交渉次第というか。だから、そんなに焦って替えちゃうと、結局また失敗することになるから。本当に自分たちがなぜこことやって失敗したのか、ということの検証をしっかりやって、じゃあ、次のディストリビューターはどういうところであるべきなんだということをもう1回しっかり調べて、このときに自分たちだけの目線で決めない。より多くの専門家の意見を聞いて、コロナだって専門家の意見を聞いているでしょう、政治家の皆さんね。
東:そうですね。
森辺:だから、専門家の意見を聞いて「本当にここでいいのか」ということを決めて、最終的に判断をすると。これに、じゃあ、3カ月で切り替えるのか、半年かけるのか、もしくは8カ月、10カ月、最悪1年かけたって、僕はしっかりと時間をかけて切り替えたほうが、後々また失敗しちゃったら、それでまた損するんですよ。
東:そうですね。
森辺:1年2年はどうせ付き合うじゃないですか、新しいところと。
東:はい。
森辺:3年目ぐらいから「どうしようか。やっぱりここ駄目だね」という話になって、4年5年引きずるわけですよね。だったら、しっかり時間をかけたほうがいいんじゃないかなというふうには思うんですけどね。
東:分かりました。きりがいいので、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。