東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続きなんですけど、ディストリビューターを切り替えるときに、上からは結構「短期間で売上を維持できるように切り替えろ」というのが飛んできて、ただ、現場としては、結構疑問を持っているリスナーさんだったり、お客さんが多かったりするんですけども。森辺さんの考えは、「ある程度腰を据えて引き継いでもらって、新しいところを決めたほうがいいんじゃないか」ということなんですけども。その辺をもう少し、引き続き教えていただきたいんですが。
森辺:まず、ディストリビューターの切り替えを、突如として3カ月とかいう短いスパンで行うということ自体がそもそも間違っています。どんな理由があろうともね。だって、別に「今まで付き合っていたところがいきなり3カ月で替えなきゃいけない事情って、どういう事情なんですか?」という話なんですよね。
東:そうですね。
森辺:今まで付き合っていたところと、やっぱり引き継ぎを含めてしっかり話していくということは非常に重要だから。まず、そんなに3カ月で替えなきゃいけないということは、相当なけんかをしているという話なんですよ。過去の、今までのところとね。もう、それはプリンシパルとしては、どんな理由があったとしてもやっちゃ駄目。向こうが、仮に法律違反をしようが、約束破りをしようが、ビジネス上、怒って得することなんて1つもないわけなので、けんか別れはしないということがたぶん1つなんですよね。それをやっぱり考えるとすると、そんな短期間でディストリビューターを、3カ月とかで、短期間でディストリビューターを替えるということ自体が起こっているということ自体が、もうまずもって間違っているというのが1つです。じゃあ、仮に100歩譲って、そういう急ぐ状態になったとしても、次のディストリビューター選びをまたラッシュして決めてしまうと、当然これはまた大きな失敗の始まりなので、そこはきっちり、なぜ今は、過去失敗してしまったのかということと、次のディストリビューターのあるべき像というのはどういうところなのか、ということをしっかり理解をしたうえで絞り込み、発掘調査をして絞り込んでいくということをやっぱりやるべきだなというふうには思いますけどね。
東:なるほど。それは、例えば、焦って探したときに、当然、華僑…、ディストリビューターは華僑系が多いと思うんですけど、華僑のディストリビューター側は、結構、日本企業の足元を見たりして、たぶん交渉が不利になったりするということも起きるんですかね、やっぱり。
森辺:うん。日本の企業よりも、「そうですか。そんなに困っているんですか。分かりました。ご事情察します。私どもに任せてください」と、それをどこまでそう思うかだよね。ビジネスですからね。「この人たち困っているんだな」と。もちろん、「助けてあげよう。私たちに任せてくれ」とは思っているんだけども、「その代わり、こっちにたっぷりメリットもらいますよ。だって、困っているんでしょう?」と当然なっちゃうわけなので。
東:はいはい。
森辺:日本ではそういうビジネスのやり方はしないかもしれないですけど、アジア新興国に行けば、そういうビジネスのやり方が普通なので、それはそういうことになりますよね。
東:そうすると、ディストリビューター側からは、当然、ディストリビューターに有利な条件で契約を、契約交渉ですかね、契約交渉してくるという話なんですかね。
森辺:うん。「任せておいてくれ」と、「全部、うちで引き継いでうまくやりますよ」と。「その代わり、うちはこれぐらいのマージン掛かりますよ」ということで、たぶんマージンの比率が高いとかね。あと、一旦はあまり大差ない条件で契約まいたとしても、その後、あれこれ言ってくるという。だって、困っているからね、向こうはね。
東:はいはい。
森辺:飲まざるを得ないというか、飲むかという話になっちゃうと思うので、そこはやっぱりそうですよね。
東:そういうときって、非独占・独占とか、契約期間とかも、やっぱり言われてくるんですかね。
森辺:そうですよね。この非独占か独占かというのは、また、これも別の機会にしっかり話したほうがいいと思うんですけど、基本的には正解論と言ったらそんなに安易に独占契約を与えないというのが1つだと思うんだけども。日本企業の場合は、理由なき非独占なんですよね。事実上独占なのに、一応、何かあったら困るから非独占を与えておくみたいなね。だったら、向こうからコミットメントを取って独占与えたほうがよっぽどいいじゃない?みたいな。だって、どうせ1年契約でそのコミットメントの進捗状況によって独占を継続するかしないかを決めたらいいだけの話なので。独占契約をあげるということは、実はそんなに悪いことではなくて、むしろプラスに自分たちの交渉を持っていける要因で、どうなるか分からないことに非独占にするんだったら、何かあるかもしれないから、一応、リスクヘッジとして非独占にしようというのが日本企業の契約でしょう?
東:はいはい。
森辺:それだったら、僕は独占を与えたほうがいいと思うので。まあまあまあ、それは別の機会にまた話をしますけども。そこもそうだし、マージンもそうだし。あと、まずもって戦略がこっちありきじゃなくて、先方ありきになりますよね。だから、「いや、うち、今まで付き合ってきたところが駄目なんだと、新しいところをお願いしたい。ぜひ、お宅すごそうだから、お願いしたい。よろしくお願いします。われわれの商品、これです!」みたいな。なので、売ることの戦略に一切介在しないということをまたやろうとするわけじゃないですか。だから、そこもまたうまくいかない要因の1つだと思うんですよね。
東:はいはい。
森辺:でね、僕、何を言っても、結局、相手のパートナーがそうなってしまったというのは、僕はプリンシパルの責任だと思うんですよ。悪意のあるディストリビューターなんて1社もいなくて。僕、過去に新興国いろいろ見てきましたけど、結局、日本のプリンシパルが付き合うディストリビューターなんて、悪意のあるディストリビューターなんて1社もいないですよ。いくら新興国と言ったって、反社会的勢力なんかと組むわけそもそもないわけだから、ある程度、善意のディストリビューターと組んでいるんですよね。なんだけど、彼らが結局自分たちの利益を極度に主張するような傾向に走ってしまうというのは、これはプリンシパル側のミスコミュニケーション以外の、僕は何物でもないと思っていて。こんなの、誰が交渉するか、誰がコミュニケーション取るかで、いくらでも相手の言動を変えることというのは、僕はできると思うんですよね。いろんなケースを見てきて、いろんなメーカーとディストリビューターのいざこざを見てきて、なぜここまでディストリビューターがこんなふうになってしまったのかと。なぜここまでプリンシパルに反旗を翻したんだと。契約当時はそんなことは1ミクロンも思っていないはずなんですよ。
東:当然そうですね。
森辺:なのに、3年後にそう思ってしまったという要因は、自分たちにあるんだよということを、僕はやっぱりプリンシパル、メーカーがしっかり反省しないと、ディストリビューターなんて、所詮ディストリビューターですよ。彼らに何の事業の選択権もないんですよね。メーカーの商品がなければ何もできない。これが、財閥であろうが、同業のパートナーであろうが、所詮はアジア新興国のパートナーなわけですよ。そうすると、やっぱり日本のプリンシパル、メーカーがどう動くかによって、彼らの対応も、僕は決められることがほとんどなんじゃないかなと思うんですよね。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。また次回、引き続きよろしくお願いします。
森辺:ありがとうございました。
東:ありがとうございました。