東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、調査について、前回、前々回とお話いただいたんですけど、欧米の先進的な企業は調査を投資と捉えていると。一方で、日本メーカーはどちらかと言うと費用に計上しがちだということをおっしゃったんですが、そこでの差が結構進出後とかという立ち上げのときに出てくるものなのか、その辺は、森辺さんが、いろいろ競合調査とか、いろいろ20年間見られてきた中でどう感じるのか、というのを少しお聞かせいただければと思うんですけども。
森辺:そうですね。すべての日本企業がそうだとは言いませんけども、どちらかと言うと、やっぱり日本企業というのは俗人的に海外展開を進めるところがあって。人頼みなところがやっぱり強くて、駐在する人の駐在歴で成功可否が決まっていくみたいな。でも、そのレベルだとやっぱり成功の度合いが小さくて、戦略に基づいてやっていないので、本社のね。グローバル全体を見た中の国別とか都市別戦略じゃないから、単純に本社に戦略ないんだけども、俗人的な駐在員のパワーで引っ張っていくみたいな。日本には人事ローテーションというのが当然、日本だけじゃないけどあるわけで、基本的には欧米の先進的な企業みたいに欧米人が行って、現地のリーダーを育てて、リージョナルヘッドクォーターからモニタリングするという構造にはなっていないでしょう?
東:はい。
森辺:基本的には日本人による統治と。これもローカリゼーションが重要だということでローカル幹部の登用とかというのはずっと言われてきてはいるんだけども、お目付け役がいたりとか、実際にはそうはなっていなかったりとか、でも、給料はなぜか日本人のほうが上とか、ちょっと不自然な感じがやっぱり多いですよね。そこが1つ大きな要因としてあって、人でやる、あと、これ、何て言うのかな、「分かっているから、俺」という感じが一番怖くて、海外って。僕、これだけやっていてもまだ分かんないと思っているから、「いや、俺、もう分かっているので、タイのことは」とか、「俺、もう中国のことは全然分かっちゃっているので」という人による俗人的な海外展開が一番怖くて。そういう人は分かっていると思っているから調べないんだよね。もしくは自分たちの駐在員の知っていること以上の知識を集めない。日本人の駐在員の知っていることの知識の領域なんて、もう本当に限られた領域なのに。僕、自分でも思うんですよ、自分の知っていることなんて本当に限られた領域だって。うちの現地の社員が何を見て何を知っているのか、というのはものすごい気になるし、「その先の現場がどうなっているのか」ってものすごく聞くでしょう?
東:はい。
森辺:だから、そういう視点というか、領域だけで物事を判断するという、そういう進め方が一番怖いから、俗人性が非常にあれなんじゃないかなと思うんですよね。
東:そうすると、対する海外の先進的な企業って、裏を返せば、あまり俗人的ではないんでしょうか?
森辺:そうね。仕組みとして俗人性は欠陥な仕組みだということが、もう企業文化としてあるわけなので。だって、これだけジョブホッピングはもう昔から当たり前になっているわけだから、その人がいなくなるなんていうことはもう前提で設計されているわけですよ。そうすると、その人にすべてが委ねられていたら、日本はもともと終身雇用で来ているから、辞めないということが前提で来ているというわけで、その文化がやっぱりまだまだ、これだけ日本も激しく転職が盛んになっても、そこの商習慣みたいなところは根強く残っていて、辞めない前提の考え方なんですよ。でも、アメリカの会社は辞める前提の考え方だから、基本的には俗人性をどれだけ除外できるかということが重要で。そうすると、どうなってくるかと言うと、やっぱり戦略、仮説みたいな話になるんですよね。なので、そこはやっぱりすごい重要なんじゃないかなと思いますけどね。世界のグローバルのコンサルティング、戦略系のコンサルティングファームとお仕事をすることがあるでしょう、われわれもね。
東:はい。
森辺:そうすると、彼らの仮説に対する異常なまでのこだわり、あれですよ、まさに外資の考え。日本のシンクタンクはあそこまで仮説にこだわらないから。だから、戦略系のコンサルティングファームを見てもそれだけ違うので、そうだと思いますけどね。
東:分かりました。今日は時間が来たのでここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。