東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
<本のご紹介>
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東:森辺さん、前回まで、前々回と靴下の話をして、ブランドとものづくりというのは両輪ですよねというところで話していたんですけど、これはたぶん靴下だけじゃなくて、今、われわれが主力でやっているFMCGとか他のものもそうだと思うんですけども、その重要性について、もう1回森辺さんなりの理解というか、なぜ大切なのかというのを教えていただければと思うんですけど。
森辺:もちろん、ハイラグジュアリー・ブランドと言われるもののブランドと、あと、車とかもそうかもしれないけど、日用品とかそういうものに対するブランドって、何をどう訴求すればいいのかということはそれぞれ違うよね。例えば、食品とか日用品とかって言うと、分かんないけど、アース製薬さんとかだったら、とにかくアース製薬のものを買っておけばよく効くみたいな、蚊がよく死ぬみたいな、これぶら下げておけば大丈夫でしょうみたいな、そういう、アースのつくっているものなら安心みたいなのあるじゃない?食品メーカーだと、明治さんがつくっているものだったら体によさそうだから子どもに飲ませるみたいな。俺、子どもに赤ちゃんのときにミルク飲ませたからね、とか、チロルチョコなら子どもにあげてもいいかなとか、そういう安心・安全を食品とかには求めるというか。それこそ、会社でスタンプ押すじゃん、「済」とか、これ、シャチハタでしょうみたいな、Xスタンパー買っておけば何となくいいから買っておけみたいな、そういうのあると思うのよ。そういうブランドをどうつくるかだと思うんだよね。安心・安全をイメージさせるブランドとか、よく効くとか、信用力に近いものなのかもしれない。これってまさに品質じゃない?
東:そうですね。
森辺:例えば、Xスタンパーの品質、いわゆるアースノーマットの品質、よく効く品質とか、明治のいろんなお菓子の食品、牛乳でも良いけど、ミルクでも品質、それから、チロルチョコの品質ということだと思うんだけど、これってまさに本当に品質みたいなので。一方で、ハイブランドの世界に行ったときに、アパレルでもいいよね、縫い方とか何とかとか分かんないけど、その品質だけよくしたって、これ人は買わなくて。
東:確かにそうですね。
森辺:なんで行列に並ぶの?と思ったのが、若い子を見たら分かると思うんだけど、原宿に並んでいるじゃん、よく。パンケーキでも並んでいるのかな?と思ったら、限定のTシャツが出るからとか言って並んでいるわけなんだけど、それって結局、別に服のあれで並んでいるわけじゃないでしょう。服の品質で並んでいるわけじゃなくて、何だっけ…。
東:ブランド?
森辺:シュプリーム。若者ストリートブランド、社長がつかまっていたけどね。
東:はいはい。(笑)
森辺:シュプリームで並ぶとか。
東:ナイキの靴とかですね。
森辺:ナイキの靴とか、エアジョーダンで並ぶとか、そこがまさにブランディングだと思っていて。ハイラグジュアリー・ブランドになればなるほど、そのがすごく重要になってくるという。そこには品質はもうあるということは大前提で。
東:そうですね。
森辺:日本企業が間違えちゃいけないのは、品質良ければすべて良しだと思っていて、そんなところ見てないんですね、もう。品質が良いなんていうのは大前提ですと。それ以上にどういうブランド価値が備わっているか。要は、これを持っているということで持った人が誇らしくどれだけ思えるかどうかなんだよね。そういうものをどれだけつくれるかという。例えば、簡単に言ったら、なんでみんなフェラーリとかランボルギーニを買うの?と言ったときに、もう本当にフェラーリ、エンツォフェラーリさんの歴史が好きなんですとか、ランボルギーニのこの…V12、あれ、V12気筒のエンジンが好きなやつとか、そんなやつ0.1%ぐらいなものだよ。
東:(笑)そうですね。
森辺:だいたい乗ったら女の子にモテるとか、見られるとか、誰も乗ってないからとか、自分だけが乗っているからとか、そういう自分が誇らしい気持ちになれるからじゃん。
東:うんうん。
森辺:だから、うちのつくったものを使うことによって、使い手がどういう気持ちになれるのかということを考えることがブランディングだと思っていて。うれしいじゃん、自分の好きなブランドのものを着ていたりとか持っていたりすると、嫌な意味でね、俺、金持ってるぜとか、そういう低レベルの次元の話じゃなくて、うれしいじゃない?
東:うん。
森辺:だから、そういう幸せを与えるのが、僕はブランドだと思っていて。それはインダストリーによって、今言ったように安心・安全をブランドに入れないといけないインダストリーもあれば、そうじゃないインダストリーもあるから、そこにやっぱり経営資源をどんどん、どんどん、投下をしないといけないんじゃないかなと思うんですよね。
東:そうすると、やっぱりそれは時間がかかるものですけど、始めなければブランドは構築できないというのもジレンマとしてあると思うんですけど。
森辺:ある。だって、レクサスってもう何十年やっている、彼たち?
東:結構やっていますよね。
森辺:うん。やっとじゃない?
東:はい。
森辺:やっとだけど、まだメルセデスベンツには遠く及ばないわけでしょう?
東:そうですね。
森辺:それがブランドの難しさだよね。世界に一番最初に車をつくったメーカーがメルセデスベンツなわけだけど、その100何十年の歴史の中で、やっぱり彼らがつくり上げてきたものに追いつこうとしているわけだから、普通のことをやっていては、ただでさえ遅れているわけだから、強烈なブランディングを、マーケティングをしないといけないというね、すごく思うんですよね。
東:そうすると、今からでも遅くないからやっぱり始めないことにはいけないということですね?
森辺:うん、うん。だって、中国メーカーもそれに気付いて、サムソンなんかは完全に気付いているでしょう?
東:はい。
森辺:サムソン、かっこいいじゃん。20年前、サムソン、何それって?
東:確かに。(笑)
森辺:三ツ星電気って三菱電機のパクリですか?という話だったのが、今、見てよ。サムソンのほうが三菱電機より圧倒的にかっこいいし、三菱電機って何?という世界になっているでしょう。
東:はい。
森辺:ファーウェイだって、まあ、ダサかったよ。
東:そうですね。
森辺:ハイアールだってね。東さん、中国へ行ったときにね。
東:そうですね。
森辺:ハイアールの冷蔵庫を売っていて、ばかにしたでしょう。これ、戦後に売っていたやつじゃんみたいな。
東:はいはいはい。
森辺:なんだけど、今は彼らのつくる洗濯機とか冷蔵庫のほうが圧倒的にかっこいいもん。
東:そうですね。デザインは最新ですよね。
森辺:最新だよね。で、安いわけでしょう?
東:そうですね。
森辺:だから、抜かれちゃうよねという。ブランドもない。ただ、品質良いです。でも、値段もそこそこ高いですという状態だね、今。それで、どんどん、どんどん、衰退していっちゃったインダストリーというのはいっぱいあるわけだから、そろそろ本気で気付こうぜということなんだと思うんだよね。
東:分かりました。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。