東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、最後なんですけど、第6章、『グローバル・マーケティングの基本』の第6章で、ケーススタディのQ&Aというかたちになっていて。ケースが10個あってそれぞれに回答しているというようなかたちなんですけども。たぶん一番悩みどころは、ケース2つの「伸び悩む海外売上を改善させたい」というのがたぶん根本にあって、たぶんグローバル・マーケティングをどうしようかと考える方が非常に多いと思うんですけど。特に、これは大企業も中堅・中小も変わらないと思うんですけど。この辺、ここ、ケース2だけをちょっと取り上げて、いろんなケースがありますけど、ちょっとやっていきたいと思うんですけども。これは具体的にどういうことか。
森辺:これは、実際に僕がクライアントとか、あと、セミナーもそうですし、よく受ける質問、それらをまとめた10個なんですよ。こういう10個がよくあると。うちが課題を解決するということって、こういう10個で。一番が「伸び悩む海外売上を改善させたい」って、もうそれのために大企業はうちを使うわけなんですよね。なので、じゃあ、どうやってそれを改善させていきますかということを解説していて。伸び悩む海外売上なんだけど、なぜ伸び悩んでいるかというのは企業によってそれぞれ事情があるんですよ。都合があるんですよ。なので、それぞれやっぱりどう改善させるかといったら、方法はやっぱり微妙に変わってきますよと。ただ、共通して言えることは、もうディストリビューション・チャネルが弱過ぎるというのが、もうこれは10社いたら10社みんなそうなんですよね。ああだこうだ、いろいろ言い訳するんだけども、結局は既存のディストリビューション・チャネルじゃ、そんなの求めている売上に絶対いかないですよということを証明してあげて、上の了承を取ってチャネルを再構築していくという、そういう話になるわけなんですけど。そういう実際の事例を臨場感ある感じで書いたという。
東:例えば、じゃあ、伸び悩む売上、海外売上を改善させたいというところで、ボトルネックになっているのは、基本的にはディストリビューション・チャネルが弱いということなんですかね。
森辺:そう。この例は、ケース2でしょう。
東:はい。
森辺:菓子メーカーさんで、「早い国だと30年ほど前から国内の商社や問屋を活用して、また一部の国では現地のディストリビューターと直接取引をし、海外販売を行っています。ただ、ここ10年の傾向を見ると、一応は伸びているけども成長が伸び悩んでいるように感じると。この伸び悩みを改善し、海外売上を拡大したいです。どうすれば良いですか」という話なんだけども、結論から先に言うと、ずっと輸出ビジネスをやっているわけですよ、この会社はね。これ、ビジネスモデルとしては輸出でもいいんだけども、チャネル・ビジネスの展開しないと駄目だよねということで、なぜチャネル・ビジネスの展開をしないと駄目なのかということと、じゃあ、チャネル・ビジネスの展開をどうすれば良いのかということを解説しているという。なので、今までの1章から4章までのところと合わせて読んでもらうと、なるほどなということにつながっていくということなんですよね。
東:なるほど。
森辺:チャネルが弱いんですよ。だって、輸出でやっているから、港から港にモノを出荷していて、海外ビジネスというか、出荷ビジネスですよね、これね。自分たちの商品がどういう状況にあるのかということが分かっていないわけなので、それで売上を上げようとしても、ディストリビューターさんなのか、問屋さんの尻を叩くしかないわけじゃないですか。直接、ディストリビューターを使っていたら、まだ叩いても響きようがあるのかもしれないけど、国内の問屋さんとかを使っていたら、問屋自身も自分たちの商品が、例えば、その国のその先でどうなっているのかというのは具体的には分かっていないので、叩いても響かないわけですよね。
東:なるほど。
森辺:並行輸入ですからね。
東:そうですね。
森辺:だから、そんなことを書いているかな。
東:チャネル・ビジネスというのを、もう1度リスナーさんに、たぶん、ここが結構、非常に、輸出ビジネスとチャネル・ビジネスの違いというところが理解、何となく言葉で分かるけど、実感されていないリスナーさんも結構まだ多いと思うんですけど、そこの決定的な違いとか、森辺さんなりの違いをご説明いただくと、今のたぶんコメントって響くんだと思うんですけど。
森辺:輸出、僕はこういう用語を使っているの。「輸出型輸出ビジネス」と「輸出型チャネル・ビジネス」というふうに言っていて、最初のこの輸出型というのは、ビジネスとしては現地に法人がないので、日本から輸出をするということでいいと思うんですよ。ただ、輸出型輸出ビジネスというのは、日本の港でFOB Japanで商品を出したら、その先のことは基本的には知りませんと。海外から注文を取るだけ取って、出荷をして、はい、知りませんというのが輸出型輸出ビジネス。ひどいところだと、1発きりでリピートしません。じゃあ、リピートが仮に定期的にあったとしても、じゃあ、自分たちの商品が相手の港に着いた後、インポーターは知っているわけですよ。自分たちが輸出している先の企業だから。なんだけど、そのインポーターからどういう中間流通、つまりはディストリビューター、1次、2次、3次を通じてどういう小売に並べられて、B2Cの消費財だったら、それがどういうふうにレイアウトされて、どういう消費者が来る小売で、その消費者がそれを手に取って、何を思って買っているのか、なぜリピートしないのかとか、そういうことにメーカーが介在するから初めて商品というのは継続的に売れていくわけじゃないですか。
東:はい。
森辺:でも、それを輸出型の輸出ビジネスなので、基本的には港で送りだして、はい、バイバイという、それ以外のことには感知しないという。一方で、輸出型のチャネル・ビジネスというのは、あくまでビジネスモデルとしては輸出なんだけども、相手の港に着いた後、自分たちの商品がどういうディストリビューターに渡って、それがどういう小売にどう置かれて、どういう消費者が何を思ってそれを手に取って、買って食べて使って、リピートしているのかということを熟知するビジネス。これを理解すると、対策が打てるんですよ。輸出型輸出ビジネスは対策が打てないんです。なので、為替と景気のせいにするしかないんですよ。うまくいかなくなったら。うまくいっているときはいいんです。どんどん、どんどん、輸出が増えて、よっしゃ、伸びた、よっしゃ、伸びたってね。なんだけど、必ず天井が来る。天井が来たら、為替と景気のせいにして、対策が打てないと。一方で、輸出型のチャネル・ビジネスをしっかりやれば、対策が打てるので、どういう対策を打てばもっと伸びるのかとか、そういうことができるようになると。この輸出型のチャネル・ビジネスに変わらないと駄目ですよということを申し上げていると。
東:じゃあ、何が、売上が下がったときに対策が打てないのが輸出型輸出ビジネス。対策が目に見えて分かるので、きちんと対策ができるのが輸出型チャネル・ビジネスという。
森辺:そうですね。
東:そこは大きな違いであるということですね。
森辺:そうですね。
東:当然、小売、どの小売に配荷されていて、どういうかたちでチャネル戦略を立てているかによっても、そこは大きく変わってくるというかたちなんですかね。
森辺:その通りです。そうだと思います。
東:分かりました。では、最後に、『グローバル・マーケティングの基本』というかたちで1章から6章まで解説してきましたけども、最後にまとめで一言森辺さんからいただければと思うんですが。
森辺:ちょっと高めの本ではございますが、製造業の方には損はないと思います。B2Cの事例が種にはなりますが、B2Bの方も自分たちの事業に置き換えて読んでもらえれば十分に役に立つ内容だと思いますので、ぜひ皆さん読んでいただければと思います。また、これからも、こういうかたちでいろんな本を書いて皆さんのお役に立てればと思いますので、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
東:分かりました。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。