第18回 ぬるい!から脱却はまず意識改革
東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:それでは森辺さん、前回マーケットメイキングとかマーケティングクリエーションっていうところの話をさせていただいていると思うんですけど、今韓国が結構、LG、サムスンって注目されていると思うんですけど、前回ハイアールとかそういう話が出てきたと思うんですけど、リスナーの中にはハイアールって何となく聞いたことはあるけど、それが中国メーカーって正しく認識はされている方がいるかどうかっていうと、まだまだそんなに多くないような気がするので、韓国だけじゃなくて今アジアの中でどういうプレイヤーが成長してきているとかっていうのは、森辺さんなりにどうですかね。
森辺:韓国の話ばっかりがメディアなんかでは目立っていますけど、今こういう中国と日本でね、尖閣の問題で中国へのスポットライトはあまり日本では当たっていないけども、中国にもものすごくたくさんの企業がいて、ハイアールというのは今世界最大の家電メーカーさんになっているんですかね。で、中国にもハイアールだけじゃなくて、康佳(コンカ)という会社もあれば、美的(ビテキ)という会社もあるし、家電だけじゃなくて自動車でいったらBYDとかっていう会社もあって、BYDなんていうのはリチウムイオン電池の世界の1位とか2位とかね、そういう会社で、この会社ももともとBMWのロゴのパクリのようなロゴを車にくっつけて、BMWじゃなくてBYDなんつって、10年くらい前だと世界中からばかにされていたような会社なんだけど、今だとそのロゴの使用をやめて、物まねから始まったような会社がいつしか立派な一流企業になっちゃっているっていう、そういう企業が中国にはたくさんあるし、アップルの製品をつくっていることで有名な台湾のFoxconn(フォックスコン)とかね。それからマレーシアだと、最近だとLCCの話題がすごく多いから、そこの社長、非常にすばらしい、トニー・フェルナンデスさんだったかな、エアアジアの社長さん。あれなんかもマーケットメイキングをまさにかなり早期からやってのけた社長さんですし、アジアの企業っていうのは、日本にいるとなかなか知らないけど、ものすごくやっぱり多い。インドもタイもそうですけども、ものすごくすばらしい企業が、これがもう、80年代とかだったら想像もつかない、町工場のおっちゃんっていうような人たちしかいなかったですよね、東南アジアなんていうのは、企業っていうのは。あと全部国営でしたから、それがどんどん民営化されて、いつしか日本の企業よりも巨大になって、ハイアールが世界一の家電メーカーだって、アメリカなんかものすごいですからね。アメリカの家電量販店に行くと、ハイアールの冷蔵庫一色ですし、インドもそうですし。中国13億人口いるじゃないですか。普通に考えて、ハイアール、そうだそうだ、日本だとサンヨーを買って、アクアっていうブランドでね、日本でもCM流していますけど、13億に冷蔵庫売るのと1億2,000万に冷蔵庫を個社売るのとどっちがいいのっていう話でね、そりゃ売り上げも利益も時価総額も変わってきちゃうよっていう話で、やっぱりそういう企業と戦っていってるっていうのが今の日本のメーカーで、だから白物も撤退をして、黒物にフォーカスをすると。ただ一方で、黒物を作ってるアジアの会社っていっぱいいるし、もしかすると家電メーカーは家電を作ることをやめないといけないかもしれないと。テレビを作るメーカーが日本にこんなにたくさん必要なのかっていうと、もしかしたらそうじゃないかもしれない。もっと次の世界にいかないといけないし、もっとマーケットを作っていくっていうことをやっぱりやっていかないといけない。もともとテレビなんか、アメリカのGEと、あともう一個の会社が。
東:そうですね。ヨーロッパのフィリップスとかですよね。
森辺:とかね、ああいうところがつくっていたものを日本企業が奪ってったわけですよね。で、彼らはそこで、今の日本企業と同じ状況になって、けどGEもそうだしフィリップスもそうだし、あれだけ大きい企業になっているっていうのはそういうことであって、例えば日立なんかすごいですよね。家電にもう力入れてないですよね。そこでさらに大きくなっていくっていう、ああいう経営判断を日本のメーカーもやっていかないといけないし、今中国や韓国やアジアの企業に日本の家電メーカーさんがやられていることっていうのは、僕たちが20年、25年前に欧米の企業にやったことなんですよね。そのとき欧米企業がどうやって危機を乗り越えたのか、こういうことをやっぱり学んでいかないといけないし、いつまでも後ろ髪引かれるような状態でいると、今、株価が本当に恐ろしい状態になっているような日本の家電メーカーのようなことになってしまうっていうのは、一つありますよね。
東:そうですよね。IBMなんかまさにそうで、ハードからソフトへ転換して、パソコン事業部はレノボに売っちゃいましたもんね。
森辺:そうですよね。あれもものすごい経営判断で、IBMといったらパソコンの会社で、International Business MachinesっていうのがIBMのもともとの略称で、それが今ではソフトであったりコンサルテーションであったり、システムであったり、そういう方向にどんどんどんどんかじを切り直していってる。で、これね、結局、大企業だけの話じゃなくて、そういう成長著しいアジアの企業ってみんなベンチャーですよ、もともと。当然国営から民営化されたっていう巨大なベンチャーってのもありますけど、やっぱりベンチャーで始まってきていて、日本の中堅中小企業であったとしても、日本の大企業がアジアで本当に勝っていけるかっていったらわからない、これはね。今までの日本企業だったら、そうだって、いいものを作ってりゃお上が買ってくれる、大企業が買ってくれるって、この発想でアジアに追従していったらよかった。ただもう、恐らく僕がこの10年見てきているアジアの企業であったり、日本の企業のアジアでの現状でお話をするんであれば、中堅中小企業さんが大手ばっかりに追従をしたアジア展開をしていても、もう僕は先はないと思っていて、やっぱり中堅中小企業もマーケットを作るっていうことをやっていかないといけないし、マーケティングやっていかないといけないし、僕たちは中小だからできないとか、僕たちは中小だからいいものを作って上から買ってもらうしかないんだって、そんな発想、アジアの中堅中小企業は持ってないんですよね。で、多くの中堅中小企業の社長さんとお話をしていると、やっぱり、ぬるい。アジアやりたい、やらなきゃいけないんじゃないか、そのうにゃうにゃうにゃうにゃした状態で何年も何年も、結局一歩も進んでないじゃない社長、と。今何社も、地方も都内近郊も含めて、月1回僕のところに会いに来て、彼らと何をやっているかっていったら、3年後に社長の会社がアジアでどうなるべきか、どうなりたいかっていうことをベースに、それをブレークダウンして、今年はこういうことをやる、来年はこういうことをやる、再来年はこういうことをやるっていう、そんな取り組みをやっているんですよ。だからそうやって、すごく本気な社長はね、月に1回しっかり東京来て僕のところに来て、そういう組み立てをやって、3年後に自分たちはグローバル化するんだっていうね、そういう立派な社長は当然いらっしゃるんでね。まあ一概には言えないですけどね。
東:そうですね。さっき出たLCCのエアアジアの話なんかも、LCCなんかも日本の企業は完全に出遅れているというか、エアアジアが10年前くらいからこつこつとやってきたのに対して、もう最近ですもんね。
森辺:そうですね。あれも、エアアジアさん、2000年代多分前半、1年とか2年とかそういうレベルで、多分エアアジアって聞いたら、マレーシアの会社だって知らない人も多分多いんじゃないかなって思いますけどもね。あのトニー・フェルナンデスっていう社長さん、要は、ああいう社長さんね、別にマレーシアで育ってマレーシアで教育受けてマレーシアで事業やっているんじゃないんですよね。ああいう人たちって、結局、欧米に留学をして欧米の大学出て、そういう人たちがマレーシアに戻ってきてとかタイに戻ってきて、フィリピンに戻ってきて、インドネシアに戻ってきて、そこで事業を、いわゆるグローバルなレベルでやってるわけですよね。だから英語ができるとかできないとか、語学がどうだとか、異文化理解が浅いとか低いとか、もうそういう次元をとうに通り越しちゃっているから、そういう優秀なアジアの経営者と、本当に日本は戦っていけるのかっていう、そこですよね。
東:そうですね。エアアジアなんかは最近のニュースだと、某大手航空会社との提携が解消になってしまったり、企業文化が違うというか、そのスピードが違うことによって、日本企業はついていけないんですかね、あれは。
森辺:そうですね。まあ実際何があったかっていうのはあれですけども、某大手というのはANAだと思うんですけど、あと一社はJALだからね、ANAとJALと比べたときに、やっぱりANAの方がまだベンチャー企業と合いそうなイメージをわれわれは受けていますけども、やっぱりあの、エアアジアの取り組みを見ていると、スピードも何もかも、多分日本の企業とは違う。よく一時期、合弁、合弁っていって、海外合弁散々やって、なかなかうまくいかないって、これ、そうなんですよね。多くのアジアの企業が言うのは、判断が遅いと。リスクがリスクがって言うんだけど、リスクなんてあるに決まっているじゃないっていうことをやっぱり言われていて、今回日本企業側の気持ちも当然わかるんだけど、戦略がしっかりあると、リスクってマネージできるんですよね。けど戦略がないからリスクがマネージする方法が見当たらないので判断がつかないっていう、単純にそれだけで、わかっていることみんな判断できるじゃないですか。「ここから跳べるか、大丈夫か。」「うん、これは経験則からいって大丈夫だ」、だから跳ぶわけですよね。けど、「どうなんだろう。これ跳べるのかな。何なんだろう。」っていうのは、いわゆる、そこがわからないからであって、やっぱり、わからないことを可視化していくっていう作業が日本企業は圧倒的に抜けていて、だからパートナーに頼りきるみたいな、そんな合弁が非常に多いから、何かこう、うまくいかないんだろうなっていうのはすごく感じますよね。
東:先ほども言われた、ぬるいところから、これも中小も大手も一緒だと思うんですけど、アジアの企業から見たら。そういったぬるいところから脱却しなければ多分勝ち目がないっていうのは、多分みんなが気づき始めたというのか、敏感な人は気づき始めたと思うんですけど、じゃあこれ、気づき始めたところで、マーケットを作るとかマーケットクリエーションっていうところにいきなりいけるかっていうと、なかなかそうはいかないんじゃないかなと。
森辺:いかないですよね。だから実際はね、マーケットクリエーションをすべきだとか、マーケットメイキングをしないといけないと、これは概念としてね、総論として僕はそうだと思っていて、じゃあそれを具体的にどうやるんだっていったときに、社内の人でやっていくわけですよね。で、その人がいない。で、採用をして、そういう人が入ってくるかっていったらそうじゃなくて、決してこれって、語学ができるからとか海外勤務経験があるからマーケットクリエーションができるんじゃなくて、マーケットクリエーションって、これは新しい発想で新しい事業を異国で作っていくっていう、このポッドキャストでも何回も言っていますけど、創業ともう同じなんですよね。
東:第二創業って言われていますよね。
森辺:第二創業とね。で、それをどれだけやっていくかっていう話だから、やっぱり僕は3年後の自分たちのTo be像というか、なるべき姿、なりたい姿、アジアでですね。これをしっかり設定をしたうえでやっていかないといけない。で、社内にリソースがいないんだったらそこに投資をして、コンサルタントでも何でも、私でも、別に私の宣伝をしているわけじゃなくてね、一緒にやっていかないと進めないわけで、僕もお受けする仕事とお受けしない仕事あるので、別に宣伝目的で言っているんじゃないですけどもね。わからないんだとしたら、やっぱりわかる人と一緒にやっていかないといけないし、僕もお客さんの自立化の支援をしているので、いつかそこから離れてってもらわないといけないし、支援をするときによく思うのは、僕らの商売っていうのはお客さんを成功させてナンボなわけですよ。そうすると、成功の可能性の低いお客さんは受けないと。なぜならば風評がどうしても出ちゃうから、やっぱり成功確率の高いお客さんの支援をしたいと。僕が言っているこの成功確率が高いとか低いっていうのは、事業そのものもそうなんですけど、その前に企業のマインドなんですよね。3年後にこうなるんだっていう目標を掲げて、そこに投資をしていかないといけないから、お金を使わずアジアで何とかやりましょうって、そういう企業が本当に多くて、そこにはやっぱり投資しないといけないんですよね。その投資ができない。で、3年なんてすぐじゃないですか。3年経ったときに、3年前の自社の状況に振り返ってみると、一歩も動いてないんですよ、アジアでね。やっぱりそこを変えていかないといけなくて、中堅だから中小だからそれでいいんだって、そういう考えじゃだめで、そこは大手から中小までやっぱりすごくきっちり変えていかないといけないっていうのは、僕は多くのお客さんと接して、すごく思いますね。
東:なるほど。まず、じゃあ、3年後のTo be像を明確にすると。で、明確に、一人でできる、まあ大企業さんは一人でできるかもしれない。ただ大企業の中でもなかなかそうはいかないってところは、やっぱりそれは専門家に投資をすべきだと。
森辺:そうですね。で、専門家もいろいろいるんでね、しっかり見極めていかないといけないんですけど、大企業でも実際はできてないですからね。やっぱり企業の都合をマーケットに押しつけるっていうのはすごく多いのでね。そうですね。やってかないといけない。
東:その、投資っていったときに、これは一般的なイメージでいうと、欧米企業は比較的先行投資となると、比較的大胆にというか、きちんとやりますよね。で、日本企業というのは、どちらかというと、外部に対しての、特に外部に対しての先行投資っていうのは、なかなか、ただでやりたいとか、やっぱりお金をできるだけかけずにやりたいっていうのが先行して、なかなか先行投資に踏み切れない企業が、実際多いなって感じるんですけど。
森辺:そのとおりだと思いますよ。なので日本企業のアジア展開はマクロ調査で終わるわけですよ。ミクロ調査全くやらない、どういうことかっていうと、市場があるのかないのか、市場性がどうなんだっていう、マクロ環境ばっかりを調査するわけですよ。で、この調査も実際は銀行の支店担当者呼んで、銀行に、タイどうやねん、ベトナムどうやねん、マレーシアどうやねん、みたいな情報をただで持ってこさせると。で、それをベースに事業計画を組み立てていく、みたいなことをやられるわけなんだけれども、本当はミクロ環境に含まれる、競争環境を徹底的に分解をして、自分たちがその市場で本当に勝てるのか勝てないのかっていうことを両建てで見ていかないといけなくて、そこにやっぱり数百万、数千万の投資はね、していかないと、アジアでは絶対勝てないですよね。
東:そうですよね。
森辺:出たら億の投資ですから、出ちゃったらね。出る前にいかにそれを可視化をして、で、またね、アジアもそうなんですけど、タイミングってビジネスで重要じゃないですか。例えば、どのタイミングでアジアに出るかってことはすごく重要で、例えばタイに出ようと、インドネシアに出ようと。今ものすごくインドネシアがすごいんだけども、3年後に出た方が、いわゆるROI、return of investment)が高い可能性もあるし、この事業ってね、タイミングすごい重要なんですよね。
東:そうですね。
森辺:そこを見極めるためのものなんですよ、事前の投資ってね。今出て3年間収益上がらずに、まあ先駆者利益だっていう発想も当然あるんだけどもね、やるのか、それとも3年後に出たほうがいいのか、それはやっぱり、しっかり考えていかないといけないし、早く出ればいいみたいなね、早く出て、行って学ぶんだ、みたいな発想でほとんど戦略持たずに行って、駐在員送り込んで、よし、おまえ頑張ってこいって。じゃあ駐在員もくさるし、駐在員が5年間駐在して得られる現地のものなんていうのは、やっぱり限界がありますよね。
東:そうですね。
森辺:だからそこにしっかり予算を組むっていうことを、僕はしないといけないと思いますけどね。
東:その、競争環境すらわからないで、マーケットメイキングとかマーケットクリエーションってのは、そもそもできないですよね。
森辺:できないですよね。だから、これから呼びますけどね、インテルの元社長の傳田(信行)さんとか呼びますけど、僕はインテルっていう会社は日本の中堅中小企業さんとか、まあ大企業も、特にいい事例になると思うんですけど、あの会社っていったら、40年前、45年前はベンチャーなわけですよ。その辺の町工場と同じ会社なわけですよね。それがあれだけの成長をしたっていうとこには、やっぱり徹底した戦略、ベンチマーキング、こういうことがあるんでね、また傳田さんにもその辺は詳しく聞こうと思っていますけども、そんなことをすごく思いますね。
東:そうすると、マーケットメイキング、マーケティングクリエーションっていうことをやっていくには、まず日本企業ってどっからとりかかるべきですかね。
森辺:まず社内のリソース見渡したほうがいいですね。プロジェクトチームを立ち上げられるだけの社内のリソース、ヒューマンリソースがあるのかないのか。で、これをいきなり採用で外から人を入れてきてやるっていってもなかなか無理で、ほぼ終身雇用に近いようになるわけじゃないですか、一回採用したらね。で、それを入れても、まず自社のDNAを新しく入ってきた中途の社員とね、
東:引き継がなきゃ…。
森辺:引き継ぐっていうのに3年かかり5年かかりってやっていたら時間がなくて。やっぱり専門家に相談するっていうか、私に相談してって、いい、あの…。
東:(笑)。
森辺:そう言うと宣伝になっちゃうんですけど、まあ僕も、時間もあるんで、お受けできる、できないもあるけどもね。やっぱりそれ、誰かつけたほうがいいですよね。
東:そうですね。
森辺:やっぱり支援者もいろいろなんで。いろんな支援者がいるから、そこはしっかり選んでいかなきゃいけないし。それを3年越しでやっていくっていうことは、やっぱりやっていかないといけないと思うんですけどね。
東:わかりました。じゃあ今日はもう、そろそろ時間なので、森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ええ、ありがとうございます。