東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』からちょっと抜粋して教えてほしいんですけど、そもそも第1章の辺りをやってなかったもので、「なぜ今、グローバル・マーケティングが必要なのか」、特に1-2の「なぜ“良いモノを作って売る“ではダメなのか」みたいなところに疑問を感じつつやっていらっしゃる方もいらっしゃると思うので、この辺からお話をいただければと思うんですが。
森辺:そう、『グローバル・マーケティングの基本』、日本実業出版社から今年1月に新たに出版された本なんですけども、その1章の中の「なぜ今、グローバル・マーケティングが必要なのか」ということですよね。これね、分かりやすく説明すると、競争環境と市場環境が大きく変わったからなんですよね。かつて「マーケティングが必要だ、必要だ」と言われてきてはいたものの、ここまでというか、これから必要になる次元に比べると、もう圧倒的にただ言われていただけだと思うんですよね。言ったら、「マーケティングが重要だよね」と言うものの、やっぱりモノ作りが重要で、良いモノをどれだけ作るかということをやってきた時代というのがずっとあって。それが1960年代とか70年代とか80年代、ピークは90年代までで、ハーバードのエズラ・ヴォーゲル教授が『Japan as No.1』と書いた、本を書いたのが1979年なんだけども、あそこがいわゆる全盛期ですよね。あの当時って、競争環境で言ったら中国企業の存在ってなかったわけですよ。なので、日本企業しか作れなかった。そもそも、アメリカの企業とかヨーロッパの企業が作っていたものを、より良く、より小さく、より安く、日本企業が作ったわけですよね。日本企業しか作れなかったからモノだけ作っていればよかったんですよね。マーケティングなんか必要なくて、ひたすら良いモノを作っていればよかった。市場も、日・欧・米の先進国市場だけだったでしょう?
東:うん、うん。
森辺:あの当時は、良いモノを作るということがもっと目に見えて取れたんですよね。白黒テレビをカラーにしましたとか、ブラウン管テレビを薄型にしましたとか、大きなコンポを小さくしましたとか、音楽を持ち運べるウォークマンを作りましたとか、大きな車じゃなくて小さな車にしましたとか、メンテナンスがあまりかからないモノを作りましたとか、何でも技術革新というか、イノベーションという捉え方が良いのかちょっとあれだけども、目に見て分かったんですよね。だから、ぶっちゃけ、「マーケティング、マーケティング」とかと言うものの、良いモノを作っていれば売れたんですよ。ただ、今は競争環境がガラッと変わって、中国企業が競争相手になって、彼らのほうが、より安く、より良く、より小さく作るわけですよね。そうすると、やっぱりマーケティングというのはすごく必要になってきて、それもグローバルでそれが必要になってきていて、これからますますたぶん、個も企業も、このグローバル・マーケティングというものは必要になってくるという、そういう時代が到来しているというふうに僕は思っているのかな。
東:はい、はい。
森辺:もっと言うとね、マーケティングって、僕、こういうものだと思うんですけどね、皆さんが作っているモノって本来100の価値があって、昔はね、その100の価値があるものをポンと出せば、みんな、「うわ、100の価値がある」とそのまま分かってくれていたと思うんですよ。ただ、今はこれだけ市場環境とか競争環境が変わると、本来100の価値のあるものを「はい、どうぞ」と出しても、それは10の価値ぐらいしか伝わらないんですよね。残りの90の価値をどう伝えるかということがマーケティングで、それをグローバルで展開するのがグローバル・マーケティングだから、だから必要だということなんですよね。
東:なるほど。分かりました。では、引き続き次回も同じようにしていきたいと思いますので、森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。