東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回に引き続き徳重社長をお迎えしてるんですけども、今回はどういう話を?
森辺:今回は、前回ちょっと最後お話をした、世界へ挑むとかアジアに挑むということが第二創業に近いんじゃないかと、ベンチャーに近いんじゃないかというようなお話をさせていただいたので、その辺についてテラモーターズの徳重社長に少しお話を聞いてみたいなというふうに思います。徳重さん、どうぞよろしくお願いします。
徳重:はい、よろしくお願いします。
森辺:前回終盤に、アジアでの取り組みというか、ビジネスをするということがそもそもベンチャー企業、マーケットを作っていこうとするベンチャー企業に近いんじゃないかというふうに私は思ってまして、その辺を徳重社長の経験をもとにお考えをお聞かせいただけたらなというふうに思うんですが。
徳重:そうですね、まずわれわれですね、今何を海外で、アジアでやってますかっていうと、ベトナムとフィリピンのほうで事業展開、工場を作ってやろうとしてます。まあ具体的には、そちらで製造して現地で電動バイクを、もしくは電動三輪を販売していくっていうようなことですよね。で、これは僕は非常にチャレンジングだと思ってまして、つまりベンチャー企業なのに、しかもアジアで最初から、しかもBtoBじゃなくてBtoCですよね。自動車部品メーカーが自動車会社に卸すのはお客決まってますから、われわれはもう、お客さんを今からクリエイトしていくんであって、しかも電動っていうアジアの人にとっても新しいカテゴリーのものをやっていくっていうことなんですけど、僕は最近読んでた本で、面白いなあと思ったのは、楠木さんって有名な人いるじゃないですか、「ストーリーとして」の。あの人が書いてて、グローバル人材とは何ぞやって、まあ今の話題のキーワードなんですけども、一つはいつもの話で、英語力ってあるんだけど、これは僕もそう思うんですけど、別にきれいにしゃべれる必要はなくて、つまりちゃんとコミュニケーションして、できるのかと。要は交渉できるのかと。僕らで言うと、例えば、僕は最近インドもよく行ってるんですけどね、インド人ブワーッと言ってくるんですよ、いろいろ。で、途中でとめて、「いやおまえはこれでこう、こうと言ったけど、これでこうじゃないのか」とかですね、真面目な日本人ほど全部聞いちゃって、あれインド人の言うこと全部聞いてるともう、数字がばっばっと。
森辺:そうですね。いや、本当そのとおりですね。9割5分は話してますもんね。
徳重:切り取ってやらないと、っていうかそういうのができればいいわけで、それってだから英語力も当然あるんだけども、それ以上に自分のプライドだったりとか自分の正義、会社、民族に対するプライドもあるでしょうし、っていうのも大事だっていうのがあって、だからそれのトータル的なところが1番。で、二つ目は確か、僕もいろいろ、ダイバーシティ、つまりそれ、日本の場合慣れてないですよね。ダイバーシティっていうのは、例えば民族が違うってだけじゃなくて、例えば世代が違うとか、例えば女性が入ってくるとか、日本ってやっぱりダイバーシティに慣れてない国の人なので、要はダイバーシティをウエルカムにアクセプタブルでいきましょうっていうのが2番目なんですね。で、3番目に面白いこと言ってて、要はアジアに、さっきおっしゃったとおりなんですけどね、アジアに出て行くとかっていうのは、要は道なき道、何もないところに、それもまた不確実な中に道を作りにいくようなものだと。だからそういう経験って、今の大企業の人たちって特にやったことがないから、つまり今までは決まったことを、これやれ、DOしろDOしろDOしろってやって、全くわけわからないところに、ジャングルに行かされて、何かやってこいみたいなね、開拓してこいみたいな、もうやったことない、未知の世界なんですよ。でも、で、そういうのが要は、何か苦手だとか、で、逆に今、僕もこれおかしいと思うんだけど、僕らだったらみんな若いやつ海外出たいって言ってるから、2週間前ぐらいに言うんですよ、辞令。おまえ今度ホーチミン行くか、とか言って。行くって言ってたけど行く?本当に行くか?って言って。2週間。それでビザとかも当然勝手に取ってこいとかね。あとはアパートとか、自分で行って決めてこいとか。何も決まってない中で行くんですよ。それはまたいい経験で、僕もアメリカ行ったときそうだし、一人で行ったから。例えばアメリカは全部そうなんですけど、電話代、電話代っていうか電気を引くのとか、水道代を開けるのでも面倒くさいんですよ。日本みたいにきっちりしてないから、聞いたときに来ないとか。でもその一個一個の面倒くさいのをやることから大事なんですよ。
森辺:ああ、それやっぱりわかります。
徳重:わかりますよね。でも大企業の人って多分わからないけど、丁寧な教育制度が整ってて、なんか過保護な感じですよね。で、戻ると、その3番目を聞いたときに「あ、そうだ」と思ったんですね。つまり僕らみたいなベンチャーはそれは当たり前なんですよ、常に。日本市場でやるぶんにも、ない道を作っていくとか新しいものっていうのをやってるから、僕ら的にはそれは普通なんですよ。つまり日々やってるオペレーションだから、それで何か違和感ないというかアクセプタブル、逆にアジアのほうがスピード感速かったりとか日本の評価めちゃくちゃされてるので、すごいやりやすいんですよね。だから僕は本当これは自分の体験でよく言ってて、例えば僕たちの会社の価値が100だとするでしょ。そうすると日本の場合どうしても30しか見てくれないんですよ。なんでかって言ったらベンチャーだからとか新しい市場だから、大手がいますから。でもこれ、アジア行きますよね。100なんですよ、会社の価値は。だけど300とか400なんですよ。なんでかって言うと日本の会社である。もうこれだけで圧倒的な優位性があるんですよ。それだけですよ。日本の製品、日本の会社、日本人は信用できると。まあみんなが言いますよ。僕が得意なのは東南アジアと台湾、インドなんですけどね、みんな言います。で、2番目は僕たちがEVで日本で実績ありますと。多分ここで聞かれてるオーディエンスの会社の方は技術があるとか、この分野ではNo.1とかね、実績が。これでOK。だからみんなOKなんですよ。ただ3番目がだめなんですよ。その3番目が僕たちが評価されてるのは、逆にほかの日本の会社ができてないとこなんだけど、起業家精神があると。つまり社長が一人で来て、すぐパッと話してわかりやすいし、コミットするし、みたいな、そのスピード感と起業家精神。コミットメントみたいなね、チャレンジ精神みたいな。そういうキーワードが3番目にあるから、ものすごい評価高い。逆に言うと、日本の普通の会社は3番目がないんですよ。それだけなんですよ。
森辺:そうですね。徳重さん、あの、日本企業のアジア展開支援してると、成功する会社と成功しない会社、つまりはわれわれみたいな支援者っていうのは成功する確率の高い会社を支援するっていう、そのほうがいいわけですよね、時間限られてますから。そのときに私がポイントとして思ってるのは、社長なんですよね。社長が自らアジアに行って、やらないとだめな企業サイズっていうのがやっぱりあって、100億、200億ぐらいの会社までだったら、やっぱり社長が自ら投資やらないと、アジアの事業なんて絶対ブレークしないんですよね。そんな中でやっぱり社長がそういう会社は、もうこっちからお願いしても支援をしたいっていう。逆に10億、20億ぐらいの中小企業でもやっぱり社長が徹底的にアジアだって言って自ら行ってっていう会社は不思議に成功してるんですよね。撤退していかない。通常3年、4年、5年ぐらいかかってブレークイーブンするところを、早かったら2年とかで。だからブレークイーブンする会社って多いっていうのは、本当そのとおりだなというふうに思いますよね。
徳重:僕もだから、それはすごい大事だなって思ってるのが、僕らの分野でもやっぱり日本市場とアジア市場って全然違うんですよ。つまり何が大事になるかってまあ、全然とは言わないけど、かなり違う。それを、やっぱりフロントで現場に行ってたら、決定権者が、わかるんですよ、よく。こんな違うんだと。でも多分、ほとんどのところは社長とか責任者はたまに、半年か1回かなんか行くぐらいで、どうだって言って。しかも現場を見るよりも、社員に会って、どうだって言うぐらいでね。本当にじゃあ彼らの生活とか、僕らだったら現地でバイク乗ってみるとか、そういう末端のレベル、で、やっぱりあとは大事なのは、現地の人といろいろ打ち合わせして、これ反応いいなとか反応悪いなとか、何を大事にしてるんだ、それは品質なのか価格なのか耐久性なのか、それもどの程度のやつなのかっていう、その肌感覚って僕はよく言ってるんですけど、それを決定権者の人が理解して経験して知ってるかどうかって極めて重要なんですよ。つまり最終的には現地にフロント行ってるやつに任せてるのはあるんだけど、上がってくる情報が理解できないんですよ、行ってない人は。僕の場合は例えばベトナムにもフィリピンにも任せて駐在してる人いますけど、一番最初、市場やるかやらないかの判断は僕が全部決めてるので、つまり最初だったらベトナムしようっていうときに、どこがいいのかなってまずはいろいろペーパーとかデータ調べて、日本でいろいろあって、満を持して現地行って、で、大体僕は、どうですかね、フィリピンとベトナムだったらそれぞれ25回ずつぐらいもう行ってるんですけどね、最初行って全体のスキム考えますよね。工場はこうで、パートナーはこうで、お客さんはこういうこと好きなのか、だからこのぐらいだとか、あとどういうふうなかたちで売ろうとかプロモーションどうするとか。いろんなことあるわけですね。
森辺:マーケティングの基本プロセスですね。
徳重:制度が何とか、あるわけですよね。で、その中でこれをこうやったら大体いけるだろうと。大体いけるだろうっていう、つまりさっきの話で言ってみると、ジャングルみたいなところに草ぼうぼうで売るわけでしょ。何が出てくるかわけわかんない。それを一応自分である程度かぎわけて草刈り取って、まあ道を、まあまあすごいガタガタなんだけど作ってあげて、一応ここを通ったら変なこと、特別な、なんか蛇にかまれて死ぬことはないんだと、っていうの作って、それで出してるんですよ。そこまで自分でやってるから現地からの来る情報がよくわかるんですよ。多分行ってないと、自分でやってないと、なんかよくわからない。「そんなの本当かよ」とか言い始めるんですよ。そんなことを毎回言い始めたら、現地は一生懸命やろうとしてる人ほどそう思うわけですよ。「なんだ、言ってもわかってくれないじゃないか」みたいなね。で、こっちはこっちで全然違う世界があるわけですよ、スピード感とかコンプライアンスとかいろんなやつが。で、こっちがやっぱり理解してないと、経験で、っていうのはすごい大事だと思います。
森辺:大事ですよね。例えば中国なら中国だし、ベトナムならベトナムだし、その日本の本社側の担当役員がベトナムや中国やフィリピンやインドネシアやタイを知らずして、そこの責任者をしてるわけですよね。
徳重:ああ、そんなケースがあるんですか(笑)。
森辺:そうするとやっぱり現地に送られて、まあ日本企業の場合、戦略なきまま「とにかく現地行ってこい」って、箱をポーンと作って、そこに駐在員が送り込まれて、駐在員が頑張って苦労してやっていくんですけど、ここの現地の意見が本社に伝わらない。だから現地が本社に「おまえが来てやってみろ」ってOKYっていうのはよく言われる言葉なんですけど、そんな状態になっちゃっていて、そりゃもうおっしゃってるとおりだなっていうのは支援していてよくわかりますね。あと社長の本で『世界で勝て!』という本の中に、139ページに、「スピード重視。リサーチは徹底的に」っていう話があって、今、草がぼうぼうのところをかぎわけて道作るっていう話あったと思うんですけど、アジアの市場って、僕よく例えるんですけど、真っ暗の夜の海だと思ってるんですよね。で、へりから海に飛び込んでいくっていうのがアジアなんですけど、真っ暗なんで浅かったら頭打ってぶつけちゃうし、もしかしたら下にサメがいるかもしれない、ウニがいて足を切るかもしれない。そんなときに徹底的にトップ自らがリサーチに参加をして、リサーチをする、可視化をしていくっていうことこそが第1ステップだなと思っていて、そこを結構軽視して、なんかよくわからないからパートナー、みたいな、そういう企業が非常に多いんですよね。
徳重:それは、僕たちも非常に重要なポイントだと思ってますし、僕はアジアでいろいろやってて、いろんな意思決定をしてきたのでもう随分慣れてきたんですけど、一番何が悩ましいかっていうとパートナーのところなんですよ。僕らもいろんな人に聞くんですよ。で、いろんな成功事例、失敗事例聞くんです。大体半々なんですよね。独資でやれっていうようなパターンと、
森辺:そうですね、合弁でいけと。
徳重:もしくは合弁でいけと。特におまえらみたいなベンチャーとか小さい会社はやっぱりパートナーはマストだと。で、いろいろ聞いていくとあんまり根拠もなかったりするようなときもあるし。だから僕はそれこそ非常に重要なポイントなんですけども、僕は、ちょっとこれいいですか書いて、まだ僕たちも実は進化の途中で、【コンコン】(14:25)については100%のアイデアで。ただ今、僕がロジックで考えるとすると何を思ってるかっていうと、ケース・バイ・ケースだと思ってるんですよね、合弁なのか、独資なのか。ただ大事なことはこの事業をその国でやるときの経営フェースは何ですかということがまず大事で、例えば、わかりませんよ、政府とのつながりとか、toCへのブランドが認知があるとか、もしくは販売網とか、まあいろいろありますわね、キーワードが。あとスピード感とか技術力とか製品力とか。で、理想は、このうちのこの三つは、俺たちは持ってようと。テラモーターズは持ってますと。でもあとの三つは持ってないなと。で、たまたまこのあとの三つはBっていうローカルの会社が持ってると。っていうのがあって、これが1番ですね。で、2番目に、かつそのうえでビジョンが共有できるところですよね、目指すべきは何ですかと。この二つがちゃんと合うのであれば、それはパートナーのほうがいいんじゃないのというふうに思うし、これの中の四個ぐらい俺たちが持ってて、頑張れば、もしくはローカルの人とうまく、合弁までいかなくてもね、これがカバーできるというんだったら、それは独資のほうがいいかもしれないです、とか。まあこれは資金力とかもあるかもですね、僕たちだったらね。とかですね、そういうことじゃないかなと思っていて、で、そこはもう少しロジカルに考えてもいいとこってあるんじゃないかなと、今思います。
森辺:それはもう、本当そのとおりだと思います。マーケティングの基本プロセスって、R、STP、MMって組んでいく、最初のRのときにマクロ環境とミクロ環境を分析してそれをSWOTに落として、自分たちの1位を見ていくんですけどね。そのときに日本の会社ってどちらかと言うと、マクロ環境、市場がどうだ、アジアが成長してる、そうだこうだっていうのは散々やるんですよ。ただ一番重要なミクロ環境っていうのはベンチマークじゃないですか。競争環境をどれだけ整理するかっていうとこなんですけど、ここはやっぱりメイドインジャパンだから強いみたいな。「俺たちは格上なんだ。アジアの皆さん、そら欲しいだろう」っていう、その頭がやっぱり戦略構築の段階から抜けなくて、で、SWOT分析が間違っちゃうんですよね。で、結局、今徳重社長がこれ書いたのって、SWOT分析そのものじゃないですか。なので、そこをやっぱりしっかり冷静に客観的に判断していくとパートナーが必要なのかそうじゃないのか、結構、実名出して言えないですけど、中国でやった会社さん、アジアでやった会社さんって、合弁で、リリースは大々的にボーンと出すわけじゃないですか、上場企業はね。けど何年かして見てみると、さらっとIRに提携解消と。結構それを分解して、なぜなんだろう、インタビューとかしながら、趣味で分解していくわけですよ、要因をね。そうすると、そもそもこれは合わないよねと。その欲しいパーツがうまく合ってないのになんでこんな合弁をやったんだろうっていうのはやっぱり多いですしね。合弁をやって15年間結局解約ができなくて、合弁をしたのにうまく利益も上がらないのに、契約を解約するのにさらにお金を積んだ、みたいな大企業さん結構いらっしゃってね、その処理の仕事っていうのもまた多いので、それはそうですよね。
徳重:まあアジア、アジアっていうか海外で僕はここが一番難しい判断になると思うんですね。ほかもいろいろやっていきますけど、ここはちょっと正解ないですね。本当、ケース・バイ・ケースになると。
森辺:そうですね、ケース・バイ・ケースだと思いますね。特に販路のところで、僕はパートナーというか合弁というか、そんなところが必要になってくるのかと。
徳重:面白い話で言いますとね、この前聞いた話で、これ面白いなあと思って。インドでね、東京海上って僕がいた損保の関係の会社ですけども、インドで合弁するときにどこと組んだと思いますかっていうのがあって、イメージあります?東京海上ですよ。ちょっと皆さんも考えてほしいんですけど、どこかっていうと、インドの肥料の会社(笑)。何かっていうと、さっきのこれと一緒なんですよ。東京海上はいい商品持ってます、サービス持ってます。だけどお客がわからないわけですね。それ確か医療保険だったか何保険だったか保険の名前は忘れちゃったんだけど、その保険はこういう属性の人が欲しいだろうと、ニーズがあるでしょうと。そのお客をたくさん持ってるのはこの肥料の会社のオーナーとか、なんか忘れちゃったんだけど、まあつまりちゃんとマッチングしてたと。だって普通保険会社と肥料の会社が合弁なんて、訳わからないじゃないですか、よく考えたら。だけどそれちゃんと、きちんと補完関係あるし、こっちは保険のことできないから裏切ることはできないし、つまりどっちもないとうまくいかないわけですよ。こういうのはいいですよね。僕は最初聞いたときはあれっと思ったけど、すごいいいアイデアだなと。
森辺:保険会社の発想、通常の発想だと現地の保険会社と提携してとかって、そういう発想になるんですけど。
徳重:はい。そうするとまた後で裏切られちゃうパターンとかもある。
森辺:実はコンフリクトがありますからね、同業種だとね。だから結構アジアだと異業種提携とかってすごく面白くて、結構アジアの成長してる会社っていろんな事業に手を出してコングロマリット化してるじゃないですか。ですからそれも一つありかもしれないですよね。わかりました。じゃあそろそろお時間になりましたので、また続きの話を次回進めていければと思います。徳重社長、どうもありがとうございました。
徳重:はい、ありがとうございました。
東:ありがとうございました。