東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、『この1冊ですべてがわかる グローバル・マーケティングの基本』から、日本実業出版社から絶賛発売中ですけども、ここから前回に引き続き解説をしていきたいと思うんですけども。第2章の2つ目の項目で、「戦略の軸は中間層獲得」で、「中間層を狙わないならアジア新興国に出る意味はない」と副題がついてますけど、ここについて詳しく書籍には書いてあるんですけども、書籍で言うと74ページから、75、76、77、78と結構ページを割いてやっているところなんですけれども、ここについて解説いただきたいんですけれども。
森辺:中間層、この話もね、さんざん今までしてきたんでね、なんか自分のネタに飽きてくる芸人のようなね。
東:はいはい。(笑)
森辺:あれがあるんだけども。(笑)「それが一番いけない」ってビートたけしが言ってたんでね、「自分のネタに飽きたら駄目なんだ」ということを言ってたから、僕も。
東:(笑)
森辺:自分のネタに飽きないで「中間層が重要だ」と言い続けますけど。「FMCG(Fast Moving Consumer Goods)、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカーにとって中間層は最大で唯一のターゲットですよ」ということを申し上げていて。結構、日系企業ってアジア新興国に行くとターゲットが上振れしちゃうんですよね。
東:うーん。
森辺:なぜならば、日本の中間層、われわれはね、言ったら、所得がアジア新興国よりも圧倒的に高いわけですから、言ったら、つくっているものの品質も高いし、値段も高いんですよね。それを多少ダウングレードして向こうに持っていくんだけども、でも、多少のダウングレードぐらいじゃプライスは新興国の中間層に適したプライスにはならないので、「基本は上位中間層」とかという言い方で逃げてみたり、「まずは富裕層から」みたいな戦略になっちゃうんですよね。そうすると、例えば売る場所も変わってくるし、その場所で売るためのディストリビューション・チャネル、販売チャネルも変わってくるし、プロモーションのやり方も変わってくるという、全部が変わってきちゃうんですよね。ただ、食品とか飲料とか日用品なんていうのは、中間層をターゲットにしてなんぼで、彼らの所得が高いとか低いとか関係なくて、中間層というマスをターゲットにするからうまみがある商売なんですよね。
東:はい。
森辺:なぜかと言ったら、これは別に数十円、数百円のものを売っているので、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに永遠に買い続けてもらうかということがビジネスの肝じゃないですか。
東:うんうん。
森辺:これが1本の化粧水を売っているんだったら新興国でも富裕層を相手にすればいいし、ゴディバなんですと、チョコレート、高い1万円のチョコレートを売っているんですと言うんだったら富裕層でいいと思うんですよ。ただ、シャンプー売っていますとか、普通のね、食品売っていますと言うんであれば、やっぱり中間層をターゲットにしないといけなくて。結局、戦略って誰に対する戦略かという組み立て方をするので、中間層に対して。中間層がターゲットじゃないですか。ターゲットに対する戦略なので、そうすると、ターゲットがずれたりブレたりすると、戦略つくったのがブレブレになっちゃうんですよ。なので、口酸っぱく「中間層が最大で唯一のターゲット」と、皆さんのやることはこの中間層に売るためにどうすればいいのかということをひたすら考えてやるだけという。
東:うんうん。
森辺:ここを間違えちゃうと、あさっての方向へ行くことになるわけじゃないですか。
東:はいはい。
森辺:なので、そこを間違えちゃ駄目ですよという話を、たぶん、何ページにもわたってしているということだと思います。
東:うんうん。これは、じゃあ、先進グローバルの消費財メーカーは、基本的にはもうターゲットを中間層にしているということでよろしいんでしょうか。
森辺:うん。もう、ブレないですよね。そこがすごいところで、彼らは、戦略って方向なんですよね。方向と選択。どの方向にどう進むかという大枠の選択を決めるべき人が決めるというのが戦略で。その中身をね、より具体的な方法論とかを決めていく、つまりは戦術を決めていくというのがまさに現場のやることなんだけど。その「誰に」というところがブレているわけだから、そんなの戦略も戦術もないでしょ。なので、最後は「良いものをつくる」みたいな、わけの分からない理論になってしまうので、もうね、ターゲットってめちゃめちゃ大事ですかからね。
東:はい。
森辺:日本企業の場合は、ターゲットがあって戦略なのに、日本でやってきたことをベースに、「じゃあ、売れる人だあれ?」って、ターゲットがあとになるんですよ。だから、勝てないというね。本当にマーケティング的な観点で見ると、どこにこの問題があるのかというのがすごく分かりやすくて、いや、ターゲットが先で、例えば戦略があとなのに、戦略がもうすでに日本の戦略ありきで、それに当てはまるターゲットをあとで決めるというね、こんな馬鹿げた話はなくて。それが問題になっているということをしつこく書いているんだと思います。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。