東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:では、森辺さん、引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』という書籍から抜粋してお伝えしているんですけども、第2章の4番目の「国別の投資ポートフォリオが明確 戦略的な国別投資を行う先進グローバル消費財メーカー」とあるんですけれども、ここをちょっと。
森辺:そうですね、先進グローバル消費財メーカーって誰のことを言っているのかと言ったら、P&Gとかユニリーバとかネスレのことを言っているんですけど、彼らの投資のポートフォリオをアジア全体で開いたときに、中国とインドがもう著しく高いんですよ。これはなぜかと言うと、14億、13億の人口を抱えていて2大巨大マーケットじゃないですか、世界のね。ここを負けるということは、アジアを負けるということに等しくて。タイをどうするとか、ベトナムをどうするとか、フィリピンをどうするとか、そういう話が日系企業は多いじゃないですか。なんですけど、それも重要なんですけど、結局、中国で勝つと、中国の影響力がアジア、ASEANにも浸透してくるわけですよね。世界を飲み込んでいくわけですよね。一昔前だったら、中国で流行ったってそんなものは中国国内のデファクトスタンダードであって、世界のデファクトになることはないと言っていた世界がね、今、あらゆるインダストリーで中国で優位に立った商品であったりサービスは世界に浸透していっているわけじゃないですか。
東:うんうん。
森辺:それは、例えばエレクトロニクスの製品もそうだし、TikTokみたいなインターネットのサービスもそうだし、ありとあらゆるものがそうなっていると。そう考えたときに、やっぱり中国とインドは外せないよねって。露骨にね、手の抜き方がASEANとかだと結構あって。結局、これって中国で勝てば、そのいわゆるマジョリティがASEANも飲み込むだろうということをある程度加味してやっているという部分があるんじゃないかなというふうに思っていて、国別のポートフォリオは明確だねと。日本の場合はなかなかそれが不明確というか、どこもまんべんなくだらだらとみたいなね。なので、なかなかちょっと学ぶものがあるんじゃないかなというようなことを書いたんじゃないかなと思います。
東:なるほど。ここに図解で、84ページに、P&Gとユニ・チャームの子ども用のオムツのシェアと書いてあるんですけど、森辺さんがやられていた中国だとP&Gが18%でユニ・チャームが14%、インドだとP&Gが43%でユニ・チャームが38%。中国だと4%しか違いがないかなと思ってしまうんですけども、中国の市場の1%って結構大きいですよね、きっと。
森辺:大きいですね。あとね、ユニ・チャームがすごくて。かつてそんなにシェアはなかったんですよ、インドの追い上げとかもすごくて。
東:そうですよね。
森辺:花王さんとかもすごいんですけど、中国の追い上げとかね。なんですけど、このオムツはね、ちょっと戦いが結構別次元、やっぱり機械装置産業でラインに人がいない中でダーッとつくっていって、日本が最もオムツ1枚あたりの単価を安くつくれるんじゃないかということを言う人もいるぐらいですからね。なので、業界の中でも、結構、競争が特殊な競争なので、わざと図解を入れたんだけども。このオムツであれば、何とか頑張っているという、ユニ・チャームが健闘しているって。ユニ・チャームはちょっと別格なので、もう先進グローバル企業と呼んでもいい会社というか、呼んでもいいというか、先進グローバル企業だと僕は思っているので、だいぶ健闘がすごいですよということを紹介したくて。でも、その他のインダストリーだと、こんなような状況ではないんでね。
東:そうですね。
森辺:それはやっぱり、一番進んでいるオムツでもこうですよという図になっているのかな。
東:はい。分かりました。そうすると、投資ポートフォリオをやっぱりどうするかというのは、アジアだとアジアで考えていかなければいけないということですね。
森辺:そうですね。彼らの1つの特徴って、日本だと現地適合化が重要だみたいなところの議論にどうしても寄っていっちゃうんですけど、ちょっと待ってねと。大前提としてあるべきは、グローバルスタンダードをまず確立、つくる、世界標準をまずどうやってつくるかというのがあって。日本標準じゃなくてね。世界標準化をまずして、世界標準化したほうが圧倒的に投資効率がいいわけですよ。コストも安く済むし、プロモーション効率も上がるので。その上で変えるべきところは現地適合化をするという、この仕組みが先進グローバル企業はめちゃめちゃうまいので。例えばLuxのシャンプーって、世界中どこへ行ったって「Lux」って白人の金髪の人が出てきてガーッて髪の毛をなびかせるわけじゃないですか。
東:うんうん。
森辺:あれは1本のCMを世界中で使うわけですからね。多少カスタマイズしたとしても非常に効率がいいですよね。
東:はいはい。
森辺:オレオのクッキーとかもすごいじゃないですか。ネスカフェなんかもそうですよね。
東:そうですね。
森辺:だから、世界標準化を意識すると、投資効率というか、国別の投資ポートフォリオも明確になってくるということだと思います。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。