東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、徳重社長を引き続きお迎えしてるんですけども、どんな話をしていきましょうか。
森辺:はい。テラモーターズの徳重社長をお迎えして、今日は最終回になりますので、徳重社長の、このテラモーターズを作った理念とかビジョンとかにも関わってくることだと思いますし、今の日本に必要な要素でもあるのかなということで、徳重さんがよく言われる、メガベンチャーを作るというところのお話をお聞かせいただきたいんですけど、多分リスナーの多くはまだメガベンチャーというものを理解してない方も多いんじゃないかなと思うので、そのあたりから。
徳重:そうですね。メガベンチャーっていうのは僕が勝手に言ってる言葉なんですけど、簡単に言うと例えば、僕の定義では売り上げ1000億円超の会社ですとか、あとは非常に具体でわかりやすい例で言うと、インテルだとかAppleとか、まあサンは子会社にされたけどサン・マイクロとかオラクルとか、Google、フェイスブックとか、ツイッターとかいろいろあると思うんですけども、EVで言ったらテスラもそうなんですけども、こういう会社ってたかだか10年、20年ぐらいの会社が多いんですよね、設立。で、急成長して何千億、何兆円の会社になって、結果、今アメリカ経済を引っ張ってるわけですよね。で、アメリカ経済を引っ張ってるのはトラディショナルなGEとかIBMとかもあるけれども、やはり成長して引っ張って雇用を生んで税収を生んで国を牽引してるのはそういう会社なんですよ。で、僕はやっぱり、なんでこういうのが日本から生まれないのかなっていうのがまずあったのがありますと。で、これが定義なんですけど、それをよく言うと、それってなんかシリコンバレーだけ特殊だよ、みたいなのよく言われてたんですよ。だけど、最近僕、アジアによく行くじゃないですか。で、アジアに行くときには僕も徹底的に政治とか経済とか歴史なりゆき政策を調べていくんですけども、台湾行ったとき僕びっくりしたんですね。台湾、台湾行ったのって2年前が初めてぐらいで、台湾全然行ったことなかった。で、台湾のこと知ろうと思って、いろんな台湾に関すること全部読んだんです。そしたら台湾の産業政策とか見て驚いたんですね。何かっていうと、台湾もフォックスコンっていうのが一番有名なあれですけど、この10年20年でビッグプレーヤー全部入れ替わり、まあ全部とは言わないけど、10のうち8は入れ替わってますよ。だからつまり伝統的なところはほとんど下、まあ逆に言うと伝統的なところはぼちぼちしてんだけど新しいところはどんどん成長したということなんですね。このアナログからデジタルの時代に垂直から水平で、アメリカが頭、企画をコンセプトを考えるところで、アセンブルを台湾の会社がやってきたから、エイサーもそう、まあエイサーは自分でも作ってるけども、ASUS(エイスース)とか、あれも自分で作ってるけど、ファブレスから進化するとかですね。また、フォックスコン、僕直接聞いたのびっくりしたんですけどね、1990年の8月にフォックスコン、投資した人がいると。で、フォックスコン知らない人がいるからちょっと申し上げるけども、例えばAppleのスマホを作ってるとか、任天堂のwiiのアセンブルをしてたりとか、最近と言うか1年前にシャープを買収しようかみたいな、買収というか出資しようかって言った会社ではあるんですけども、まあアセンブルはやらんといけんけども、この会社ですね、今なんと10兆8000億円の売り上げなんですよ。日本で10兆超えてるって多分10社ぐらいしかないですよ。トヨタが18兆ですからね。で、この会社ですね、なんと1990年の8月に投資した人、僕、台湾で会ったんです。で、損したって言うから、損したっていうかだめ、失敗したっていうから何でだと、フォックスコンだからね。いや、3倍か4倍のときに売っちゃったんだよって言って。当時1990年の8月、彼投資したときね、売り上げなんと25億円なんですよ。25億円ですよ。25億円ってその辺の中小企業でしょ、その辺の普通の。今10兆8000億ですからね。っていうのがまあ20年ちょっとですけどね、台湾ってそんな会社たくさんある、まあフォックスコンほどはあれにしても、近い会社いろいろあるわけ。だから台湾にもあるわけ。で、中国、最近のHTCもそうですよね、中国にもあるわけですよね。で、なんで日本だけ生まれないのかなっていうのが僕が、さっきの第一回目で言わせていただいた、やっぱりメンタリティだと思うんですね。で、僕は大企業辞めて、自分の役割とか何かなと考えたときに、自分の役割って、まあ自分の何がユニークですか、つまりアメリカの場合って、ディファレンシエーションっていうか、何が違いますかっていうことがあるので。僕は起業家でありながら、日本に対する思いもすごくあるんですよね。で、かつ世界の市場もわかってると。僕の日本に対する思い入れで言うと、世界はすぐに大きく変わって、だめになる会社もあるけど成功してる会社もあると。大企業が全部だめなわけじゃなくて、日本のね、例えばアメリカだってイーストマン・コダックっていう大企業が2000年に世界で9番目だったけど、今つぶれてますから。アナログ、デジタルのトレンドに行けなくて。だから別にアメリカだって変わらないやつはだめになるわけなんですけども、要は何かって、つまり向こうで、シリコンバレーで見たりとか今アジアで見たときに、やっぱり日本の大企業があまりにも情けないので、もうあの動き方してたら僕は勝てないと思うわけですよ、そのスピード感とかリスクテイク、コミットメントを見ると。じゃあやっぱり、メガベンチャーというかスーパーなベンチャーしかないんじゃないかと、これが僕は日本の成長戦略とかの柱に本来あるべきで、さっきの自分の役割で言うと、起業家でかつ、まあベンチャーができて、ベンチャーの世界にいて、かつ日本に対する思い入れもないとこういう気持ちにならないので、かつ世界の市場がわかってるってかけ算をすると、ほとんどいないと思う。そうすると、それは僕がやる役割なのかなみたいな使命感に落とし込んでるんでしょうね。で、もう一つのキーワードは、世界観と歴史観で言うと、今は世界観ですよね。今、世界はこうなってますと。そうやってんだからやってんでしょうと。あともう一個大事なこと思い返したんで言うと、僕さっきの失敗したときに、大学浪人のときとか結構いろんな起業家の本読んでて、それがすごい今の自分のベースになってるとこがあって、僕が感動した一つの話が、ソニーの盛田さんの話があって。何かっていうと、ソニーがまだ東京通信って言われてたときに、10年目ぐらいなんですけど、海外やるか?と。海外やってみるか?って、盛田さんが先に視察行くんですよ。まずアメリカ。そしたらびっくりしたんですね。こんな超高層ビルが建ってる、こんな国と戦争したのかと。それともう、すっげえショックを受けたんですよ。で、次にドイツ行くんですよ。ドイツ行ったらまたショック受けるんですよ。同じ敗戦国なのに10年でこんなに復興してると。全然違うと。もうこりゃだめだと。海外無理だと。次どこ行ったかってオランダ行くんですよ。ここである出会いがあって、それがソニーっていうのを生んだと僕は思ってるんですけども、オランダって日本と同じちっちゃな国の何もないところっていうイメージで行ったんです。そしたら、電機メーカーでありますよね、フィリップス。フィリップスが、見たんですよ。こんな小さな農業国だったのに技術力を持って世界で戦ってる、すごいことになってる会社があるというのを知ったんです。それで彼は大いにそれにインスパイアされて、これだったら俺たちもできるじゃないと。フィリップスがやってんだったらと思ったんですよ。それで帰ってきて興奮して、日本に帰ってきて、東京通信をソニーっていう名前に変えたんですよ。世界でこれから入ると。僕はこの話すごい覚えてて、つまりやってる事例があったんだったらできるでしょと。ほかの事例で言うと、これもちょっと話違うけど、宇宙に初めて人工衛星飛ばすっていう話があってアメリカとソ連が競争してて、どっちが先だったか忘れた、確かアメリカが先なんですけど、無理だって言われたんです、ずっと。だけどアメリカが多分先だったんだけど、アメリカが先にやったら、無理だ無理だって言われてたんだけど、できたっていうのがあったら彼らね、すぐ次の年にできたんですよ。別に情報流れたわけじゃなくて。つまりできると思ったからできちゃったみたいなのがあって、何が言いたいかっていうとだから、そのアナロジーでくると、シリコンバレーできてると。でも今のHTCとか台湾もできてる。中国だってできてる。なんで俺たちにできないのよ、みたいなのが今の僕がアナロジーできてて、っていうのがあるのもあるし。まあ今のが世界観だとすると、もう一つ歴史観っていうのがあって。日本人だとどうしてもそういう世界の話をすると、世界の人だからできたんでしょ、日本人無理でしょ、みたいに言う人いるんですよ。僕は決してそうじゃなくて、だから歴史を勉強しろっていう話なんですけども、そのソニーとかホンダとかそういうのもありますけども、それ以外にもすごい事例たくさんあるんですよ。僕は最近よく話してるので言うと、ANAの話をよくしてるんですけど、ANAって僕も知らなかったんですけど、飛行機乗って今度見てください。NHっていう飛行機の名前なんですよ。NH915とかNH286とか。で、NHの略って何か知ってますかって、言われたことあって。知ってます?NHの略って。
森辺:はい、社長の本に書いてありますよね。
徳重:ああ、書いてるか。NHって「日本のヘリコプター」なんですよ。僕これ知らなくて、情けないことに。ある人から聞いて勉強したんですけど。
森辺:僕も知らなかったですよ、本読むまでは。
徳重:で、要は当時からJALがあったわけですよ。JALがあったときに飛行機作ろうと思いますかっていう話でしょ。で、ヘリコプターから始めてるんですよね。それもどこからきてるかっていうと、使命感なんですよ。つまり戦後パイロットが職失って、パイロットのために何か仕事作らなきゃいけないって、農薬散布から始めたからヘリコプターと。それがANAになったんですよ、みたいな。だからその、今のみんな頭よくなったんで、できるできないからくるんだけど、昔の人は結構使命感からきてるんですよ。僕もう一つ大好きな話で最近よくしてるのが、新日鉄の会長までやった、経団連の役だった永野さんっていう人がいるんですけど、この人も当時は通産省の人とかは、戦争に負けたときに、これからは観光と農業でやっていくと。そうしたら海外周りを見てた人が、やっぱり重工業だろうと。ただ、そりゃ重工業がいいのは決まってるわけです。ただ、資源もない、土地もない、ノウハウもない、人材もない、お金もない、何もない。ベンチャーと一緒じゃないですか、ないないづくし。で、当時の、新日鉄の永野さんは、いや、これは要るんだと。だから「鉄は国家なり」ってあったじゃない。だからプライドありますよね。ありましたよね、昔。で、どうやったかというと、ないないづくしだったんだけど、世界銀行の偉い人をわざわざ日本に連れてきて、飲ませ食わせして、彼が骨董品が好きだって聞いてたから骨董品を日本中から集めて渡して、気に入られて融資を受けて始めるんですよ。これってどうやっちゅう話じゃないですか。っていうのからやってたわけ、大企業のもとになる人たちがね。それって今のアジアの世界、すごい似てるんですよ。
森辺:そうですよね、似てるんですよね。そっくりですよね。
徳重:はい、そういう世界が。っていうのがいろいろ僕の中でミックスされてて、今の日本の世界だけから見ると、今のメガベンチャーって頭がおかしいのかってなるんだけど、今の世界で起こってること、日本で昔やってきたことを捉えると、決してそれってありなんじゃないのっていうのもあるし、あと僕が好きな話で、歴史の話で言うと僕『坂の上の雲』が好きなんですけども、あれ言ってみたら、当時ベンチャー国であった日本国が、帝政ロシアに勝つわけじゃないですか。あれも特攻隊みたいな話じゃなくて、戦略的思考と、さっきのマーケット調査ですよ、分析と、気概ですよね。パッションとロジックが両方あって、ベンチャーと僕、全く一緒だと思っていて、強いものに勝つ前にちゃんと大きいところとパートナーシップを結んで、資金調達に高橋是清は走り回って、あとはどうせ負けると、厳しい戦いはわかってたから、アメリカに最初からうまいことPRしてとかですね。あと現場では秋山兄弟がいたりとか、多分戦争する前に山本権兵衛ってのがいて、薩摩町でおかしくなってた年功序列の組織をばっさり切って実力主義の組織に変えるとかね、すごいことをいろいろやって、全部がミックスして勝つわけですよね。これ、奇跡です、世界史の奇跡って言われてますけど、こういうことをやった。特にこれインド人とかもよく知ってるので、そういうの非常に評価してるわけですよね。それも一つやっぱり僕たちがきっちり勉強というか思い出してやれれば決してできなくはないでしょうみたいな、そういうところからきてるんですよ。だからそういう使命感まで落とし込めれば、クレイジーっていうのも別にウエルカムになるしね。僕は山口県なんで、そういえばシリコンバレーって、クレイジーってすげえほめ言葉で、シリコンバレーでクレイジーなやつだって言われたら最高のほめ言葉なんですよ。で、もあるし、僕山口県なんですけど、そういえば、吉田松陰の本を最近読んでたら出てたんですけど、情熱と狂気が時代を動かすという言葉があるんですよ。狂気ってクレイジーじゃないですか(笑)みたいな。だから結構、歴史が違ったりとか時代が違って国が違っても、何か同じこと言ってるのかな、みたいなね。
森辺:その温度感で今のアジアの経済成長ね、7%、8%、9%ってするわけじゃないですか。一方でここ20年、0.9%とか平均で、成長してるとやっぱりその温度感がすごくずれてる、今の日本とアジア。その中で戦ってもなかなか勝てないし、確かにソニーがウォークマンを生んだ時代もそうだし、キッコーマンだって欧米で活躍した時代っていうのは、彼らはやっぱりマーケットを作っていったし、起業家だったし、すごくチャレンジしてましたよね。それがなんかこの40年50年ぐらいの中で少しぬるま湯に浸かりきってしまって、国内がやっぱり大きかったじゃないですか、国内市場が。これがまた、僕は問題だなって思っていて、2050年までに人口がどんどん減少していくと。ある期間の予測では1億人をきりますと。もう少し過激な予測では8000万人をきりますという数字が出てるんですけど、これが人口8000万人になって、いわゆる生産人口というか労働人口がさらに5000万人ぐらいになって内需がどんどん縮小していくわけなんだけども、それがまだなだらかじゃないですか。言ったら1億人でも大国だし。
徳重:それすごく僕は重要なポイントだと思ってまして。僕の中では勝手にそういうふうに僕は意識づけしてるんですけど、僕、しかもアジアよく行ってるじゃないですか。で、よく現地で広告とか見ると、悔しい思いもするんですけども、僕の中ではもう第3の敗戦じゃないですけど、もう負けたことにしてるんです。圧倒的に、日本が。つまり今みたいなこういうゆでガエルみたいな状態じゃなくて、もう圧倒的に負けたと。まあ負けたことにしてるんです、自分の中では。そうするのはそれは重要で、何かっていうと、サムスンとかがなんであそこまでなったかっていうのを研究したときに、サムスンもあれ別に急になった、急になったっていうか、イベントがあったんですよ。何かっていうと、98年のアジア危機なんですよ。つまりあのときの前からサムスンの会長は、変われ変われってずっと言ってたんですよ。おまえら変わらないと。でもやっぱりそうは言っても韓国も大きな経済ですから、なんか会長言ってんだって変われなかったんですよ。ところがアジア通貨危機が起こってIMFが入ってきて、韓国に、みんな金没収ですよ。テロがあって、もう国にも会社にも頼れないと。もう俺たちの力、手でやっていくしかねえというふうに、国民は本当にそのときに惨めな思いをして、なったんです。つまり本当、リーマンショックみたいな感じ、国自体がつぶれたわけですよ、1回。だからこそサムスンがあって、そのあとに会長はフランクフルト戦略って有名なのがあって、もう子どもと妻以外は全部変えろっていうのがあって、そこからサムスンだよね。って要はマインドセットになったわけですよ。という意味では、日本も都度おかしくなってるんだけど、ずっとなってる、20年間。でも20年前って今でいったら大きなダウンがあるわけだけど、それがゆでガエルのように数%ずつ落ちてるからわからないわけですよ。だから僕はもう1回負けたというふうにすれば、よし、もう1回これからだというふうなことだと思うんですよね。っていうことは僕は非常に、だからマインドのところは極めて重要だなと思いますけどね。
森辺:逆にそのマインドセットができちゃえば、ゆでガエルばかりだから(笑)、チャンスは大きいっていう話ですよね。
徳重:いや、本当にそうだと思います。
森辺:いや、本当それはそうですよね。でも確かに日本からメガベンチャーが生まれてなくて、今国内でははやされてるようなITネット系の会社も、基本的にはシリコンバレーのビジネスモデルの模倣モデルを国内でやっていて。
徳重:まあ相当ゲームみたいなの多いですからね。
森辺:そうですね。大きくなってきてるから、ああいうものではなくてもっとグローバルで戦えるメガベンチャーっていう、そういうイメージですよね。
徳重:そうですね。それを本当に日本から出せば、で、多分突破するのは、突破するやつは本当に頭がおかしくないといけない、僕みたいなやつしかないと思っていて、僕、またいいことに山口県出身なんで高杉晋作とかもいますんで。
森辺:大好きなんですよね。
徳重:彼は突破力あると思ってるんですけど、やっぱり信念もあったし。ただやっぱりさっきの野茂の話じゃないけど、今野球選手みんな行ってるわけでしょ。サッカー選手もそうじゃないですか。誰か一人やれば、僕はできるというふうに思ってるんですよ。ただ誰かやらないとイメージにならないんですよ。ビジオとかHTCとか言っても。
森辺:生まれてないですもんね。
徳重:まあ、それをやりたいのが、僕がやりたいことなんです。
森辺:なるほど。いやなんか、徳重さんだったらやれる気が、この対談を通じて、してきましたんで、ぜひ。
徳重:いや、まだまだこれからなんですけど、本当に。
森辺:頑張っていただきたいですよね。じゃあすいません、そろそろお時間が来ましたので、4回に続いて、徳重社長、どうもありがとうございました。
徳重:はい、ありがとうございました。
東:ありがとうございました。
森辺:また機会があればぜひよろしくお願いいたします。
東:よろしくお願いします。
徳重:はい、またよろしくお願いします。ありがとうございました。