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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 46 3C分析でファクトを把握する

著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長

インプットの手段である「3C分析」と「4P分析」

インプットの手段としてよく取り入れるのが、「3C分析」と「4P分析」です。これらは過去に本コラムでお話しした「マーケティングの基本プロセス」の中の一部として組み込まれます。「3C分析」は「R」(Research/調査・分析)の一部で、市場分析のための方法です。市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つのCを分析することにより、ビジネス環境の事実を把握するものです。近年は、3Cに二つの新たなCとなる中間顧客(Customer)と環境社会(Community)を追加し、5C分析が主流になっているが、まずは3Cが基本となるので、ここでは3Cを中心にお話をします。
「4P分析」は、別名「MM」(Marketing Mix)の手法で、商品(Product)、価格(Price)、販売チャネル(Place)、販売促進(Promotion)の4つのPの視点から自社と競合他社を比較し、課題を見つけ出す方法です。

「3C分析」でビジネス環境を客観的に把握する

参入戦略を立てる時に大変有効な手段となるのが、3C分析です。自分たちが照準を合わせている市場が一体どんな市場で、そこにはどんな敵がいて、自分たちの力はどれほどのものなのかを客観的に判断し、事実を把 握することにより課題が明確になり、課題が明確になると改善策を考えることができるのです。
まず「市場:Customer」については、机上のデータ分析に加えて現地でのフィールド調査を実施し、「マクロ」と「ミクロ」の2つの視点から市場の実態を可視化していきます。マクロでは人口構造や可処分所得などの一般的なマクロ情報、ファンダメンタルズに関する情報に合わせて、中間流通と小売流通、そして消費者に関する情報を収集していくとよいでしょう。また、海外市場だけに、マ クロ情報では、外資規制に関する情報の可視化も重要です。
 「競合:Competitor」については、現地でのフィールド調査を実施し、同市場で戦う競合他社の実態を可視化します。特に競合の、「近代小売(MT)、一般小売(GT)、伝統小売(TT)における参入状況」、「主要近代小売における棚取り状況」 「ディストリビューターや、ディストリビューション・ネットワークに関する情報」の3点にフォーカスして定性と定量の両面から明らかにしていくとよいでしょう。「自社:Company」については、自身の会社の現状の取り組み実態を可 視化します。「組織体制」と「ディストリビューターを含むオペレーション」の2点がどう現地での売上やシェアに反映されているのか、競合と比較した時に十分な体制なのかを、定性と定量の両面から明らかにしていきます。
3C分析で最も重要なのは、ファクトの把握です。どれだけ事実を客観 的に捉え、把握できるかです。市場、競合、自社に関する事実を客観的に捉え整理することが大変重要なのです。

「4P分析」で自社と競合他社を徹底的に比較する

「4P分析」では Product、Price、Place、Promotion の4つの視点から自社と競合他社を比較します。自社についての4P分析だけでは不十分で、4Pは競合他社と比較しなければまったく意味がありません。比較することで初めて、自分たちには何が足りていて、何が足りていないのか、その状況からどうしていくべきなのかという議論ができるのです。
「Product」についてはフィールド調査を実施し、現状の競合他社や先進グローバル消費財メーカーと比較した時に、中間層をターゲットに、近代小売、伝統小売へ広く流通させる上で製品について改善すべき課題を見つけ出し、梱包形態やパッケージ、入り数など、それぞれ具体的にどこをどう改善すべきなのかを整理します。「Price」についてはフィールド調査により、主要近代小売における価格を競合他社と比較します。また、中間層をターゲットとして、伝統小売市場でストア・カバレッジを拡大させる上で受け入れられる価格帯を、競合他社や先進グローバル消費財メーカーと比べて整理し、課題と改善策を明確にしていきます。「Place」についてはフィールド調査を実施し、競合他社と比較した時の自社の販売チャネルの戦闘力を可視化します。「自社とディストリビューターの体制」「ディストリビューション・ネットワーク」「ディストリビューターのマネジメントの方法」の3つの観点から比較し、自社の営業担当者の数や役割、ディストリビューターの数や規模、役割における課題と改善策を明確にしていきます。
このPlace、つまりは販売チャネルの構築が最終的には一番重要だというのは、これまでにお話ししてきた通りです。「Promotion」については、競合他社や先進グローバル消費財メーカーが店頭でのセールスプロモーション施策でのBTL(Below the Line)、マス広告であるATL(Above the Line)それぞれにおいて、どれくらいの予算をどのようなタイミングで、どこに投下しているのかを明らかにします。また、先進グローバル消費財メーカーの多くは獲得店舗数に応じて計画的にプロモーションを実施しているので、それらを具体的事例とともに整 理していきます。
 チャネル力でストア・カバレッジを上げながら、プロモーションでどのようにインストア・マーケットシェアを上げているのかを分析していくのです。それにより、自社のプロモーションへのヒントや課題と対策を明確にすることができます。

正しい3Cと4Pをベースに革新的な参入戦略を描く

このように、「3C分析」で事実を客観的に把握し、「4P分析」で自社と競合他社を徹底的に比較することにより、課題が明確になり、その課題に対する対策を考えることこそが参入戦略を策定することなのです。3Cに関する質と量の高い情報を徹底的にインプットし、事実をあぶり出し、課題を明確にする。その課題に対して、知識と経験を持ち寄り対策 を考える。この一連のプロセスが緻密であればあるほど、革新的な戦略をアウトプットできる可能性が高まるのです。