東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き、タイに関してなんですけども、小売構造があって、悩みも前々回お聞きしているんですけども。そうすると、一般論で構わないので、B2Cでこれからやっぱりタイにもう1回力を入れたいとか、さらに売上を上げたいと考えているお客さん、日本企業さんは多いと思うので、具体的にそれでどうしたらいいのかという大枠の、ざっくりとしたものでもいいんですけども、方向性を教えていただければと思うんですが。
森辺:各社の課題を聞いていると、ディストリビューターに対する課題感が非常に多くて、「本来ここに売りたいんだけども、なかなか売れないんだよ」と、「入ったはいいんだけど売れないんです」と、ディストリビューターといろいろ調整しているんだけども、向こうには向こうのあれがあるし、自分たちも、言ったら、いろんなことがよく分からなかったりするわけだから、ディストリビューターに言われちゃうと、そこで話が「まあそんなものなのか…」ということで終わってしまうけど、実はそうじゃないんじゃないかという疑念も持ちながらやっているという状況でなかなか前に進めないと。自分たちも確証がないからディストリビューターに言われてしまうとそこで終わるんだけども、でも、きっとディストリビューターの力が及んでいないんじゃないか、小売に対してね、そういう疑念もあるみたいなね、そういうことなんですよ、いろんな会社の話を聞いていると。
東:はい。
森辺:僕、これはタイに限らずなんですけど、よく言っているのが、「誰と売るか」ということよりも、「誰に売るか」のほうが圧倒的に重要で、なぜか日本の消費財メーカーって、「誰に売るか」よりも「誰と売るか」を事業をやっているうちに優先しがちなんですよね。本来は、「誰に売るか」だから消費者じゃないですか。その特定の消費者っていうところに本当にフォーカスをしなきゃいけなくて。例えば、価格があまりにも高過ぎるってね、「中間層が重要だ」と言っているのに価格が高過ぎるというのは、そもそも誰に売るかということから目を背けちゃっているということなんですよね。
東:はいはい。
森辺:目を背けて「誰と売るか」、いわゆる「どのディストリビューターに任せようか」みたいなところに神経がいきますよと。じゃあ、消費者はちょっと一旦置いておいたとしてね、「誰に売るか」ということで、「いわゆる中間層が一番買い物をしている小売ってどこなの?」「セブンイレブンです」となったら、ディストリビューターよりも何よりもセブンイレブンが一番重要じゃないですか。だって、「誰に売るか」なんだから、「誰と売るか」よりもね。中間層が「誰」でしょう?
東:うん。
森辺:その中間層が一番買い物をしているのがセブンイレブンだとしたらね、「誰に売るか」って、「セブンイレブンに売るか」ということが重要だから、ぶっちゃけディストリビューターなんてどうでもいいと。そうすると、セブンイレブンと話を決めてしまったほうがね。セブンイレブンと話を決めると、例えば、タイの構造なんかはCPじゃないですか、セブンイレブンって。
東:はいはい。
森辺:そしたら、CPの中に流通会社があるわけでしょう、問屋さんがね。
東:はいはい。
森辺:そこを指定してくると、彼らとしては自分たちのグループ内でお金を回したいわけですよ。問屋機能を外には出したくない、CPグループの問屋を使いたい、そして、CPの小売のセブンイレブンで売りたい。そうすると、グループの中でお金が回るじゃないですか。
東:はいはい。
森辺:そうすると、やっぱりセブンイレブンと話をつければ、そこから自然と「ここのディストリビューターを使ってください。マージンはこの比率で結構です」と、もう薄々のマージンで指定されるわけですよね。そうしてしまったほうが早いから、言ったら、「誰と売るか」なんていうのは一番最後に考えればいいという。そこを結構順番を間違えている企業が新興国なんかは特に多くて。新興国って特に分からないじゃないですか、何が起きているのかね。
東:そうですね。
森辺:何が起きているのか分からない、よく見えないところになればなるほど不安だから、「誰と一緒にやろうか」ということに気がいくんだけども、そうじゃなくて、一番重要な本質は「誰に売りたいのか」なので、新興国に行けば行くほど「誰に売りたいのか」にフォーカスをするということが僕は重要だと思っているんですけどね。
東:なるほど、分かりました。
森辺:時間ですね。
東:はい。では、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。