東:こんにちは、ナビゲーターの東忠雄です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:それでは森辺さん、引き続き村山社長にお伺いしているのですけれども、どうでしょうか。
森辺:村山さん、私1つお聞きしたいことがあるのですけど。なぜ世界のアクセンチュア。村山さんが入社したときは旧アンダーセン・コンサルティングだったと思うのですが、ここからインバウンド「やまとごころ.jp」を創業されたのかなと非常に不思議に思うのですけれども。非常にエリートの集団の会社で、入れる人が非常に少ないような会社を退職して、なぜインバウンドに目をつけたのか。その辺りの話からお聞かせいただければなと。
村山:まずインバウンドに興味を持ったのは、学生時代、私は高校まで郊外なのですが、その後大学からアメリカに留学したのです。そのときは、グローバルに活躍できるビジネスパーソンになりたいみたいな、おぼろげな思いがありながら、海外へ留学したのですが。そのときにまず思ったのが、日本の情報があまりにも海外に発信されていないというところで問題意識を感じたのです。あとは、アジアから留学生というのはすごくたくさんいるのですが、彼らはすごく自己主張が強いのです。そういうところを見ていると、日本はやはりもっと海外に情報発信をする力、人材育成が重要だなと。自分自身は海外に行ける機会があったので、日本と海外をつなぐ仕事をやりたいと思ったのが、まずはそもそもの原点なのです。その上で、自分自身が日本の魅力は何を伝えていったらいいかと考えたときに、日本の商品、サービス、いろいろなものがあると思うのですけど。自分の興味、関心が一番高かったのは旅行。自分自身が、旅行が好きで、海外にいろいろ行ったり、旅行することが好きで。日本の温泉であるとか、観光資源という部分は、世界に誇るものがあると思いますし、自分の興味関心とも合致したので、それでインバウンドをやりたいなというふうに思い始めたのが、アクセンチュアにいたときなのです。結局入ったときは、何をやって良いか分からなかった。ただ、世界と日本をつなぐ仕事をやりたいとおぼろげに考えていて、アクセンチュアを5、6年いろいろと仕事を進めていく中で、そろそろ30になるし、30前に起業しようと。そのときに、しっかり考えたときにインバウンドというテーマが出てきたというところですね。なので、ビジネスとして伸びるとかは本当に後付けで、まずは自分のやりたいこと、日本の何を発信していきたいかと考えたときに、観光という領域に当たったというのが実態のとこです。
森辺:なるほど。この観光インバウンドのビジネスなのですが、全体的に市場はどうなのですかね。基本的なところからお話いただけると、リスナーの皆さんも分かりやすいかなと思うのですが。そもそも、我が国にとってインバウンドというのはどんな重要性があるのですか? 村山:まず、インバウンドは国内のマーケットの中で、少ない、伸びているマーケットの1つかなと思っています。それは、やはり大きな枠組みで捉えると、日本国内では少子高齢化の傾向は突き進んでいるわけで、2005、6年を境に生産人口が下がり始めていて、将来的に見ると、今の1億2,000万の人口が、どんどん1億を切っていくという中で、やはり伸びるマーケットは何かと考えたときに、外国人観光客に日本に来ていただく。当時、2003年からビジットジャパンキャンペーンが始まったのですが、その当時は本当に500万人ぐらい年間。今は800万人強の外国人観光客の方が来ているのですけれども、その数字がまずどうなのかといったときに、実はまだまだ少ないのですね。諸外国を見ると、例えばフランスとかで言うと、人口が4,000万人ぐらいに対し、6,000万、7,000万人の観光客がフランスに訪れていると。それは大陸の地続きだからというところもあったりするのですけれども、それを差し引いたとしても、やはり圧倒的に多いですね。人口以上の方々が来ている。島国のイギリスを例にとったときに、やはりイギリスも2,000万人ぐらい来ているのです。アジアの他の国でも、やはりタイとかでも1,500万人を超えていますし、そういう意味では、日本のポテンシャルはこんなものじゃないのではという考えも、官公庁初め民間の方も思っていて、そういう意味では、今後、国の方では、2,000万人、3,000万人ということで、外国人観光客を増やしていくという制作も出しています。現状はそれに対して800万人というような状況ですね。経済規模の部分でいうと、1,000万人ぐらいで大体1兆円という形で、3,000万人となったときには3兆円ぐらいの規模になるというような形で、国の試算が出ています。
森辺:そうすると、結構インバウンドの数字を伸ばすというのは、経済効果を上げる上では非常に重要な指数になってくるということですよね。
村山:そうです。やはり観光は裾野が広いので、外国人観光客は日本に飛行機で来ますし、宿にも泊まるし、飲食で食事も食べますし、買い物もしますし、交通機関にも乗りますし、いろいろなところで経済活動するのです。なので、かなり多くの日本国内の事業、サービスの方々とか、不動産も含めて、外国人観光客が多少なりともビジネスを持ってきてくれるというところはあると思うのです。
森辺:なるほど。そうすると、2050年に人口が1億人切りますとか、8,000万人ぐらいになってしまいますみたいな、いわゆる少子高齢化の問題があって、8,000万人とか1億とかって結構十分な人口じゃないですか。ただ、問題は生産年齢の人口がどれぐらいいるのかで、3人に1人は高齢者で、本当に仕事ができる、いわゆるGDPの成長に貢献できる生産人口というのが4,800万人かな。それぐらいになってしまったときに、いかにそれ以外の、海外の観光客でそれを補っていくかみたいな、そんなイメージなのですかね。
村山:先を見ている経営者の方々とかは、うちによく相談に来られるのですけれども。例えば飲食店で今後、今は全然食べていけていると。給料も払えるし大丈夫なのだけれども、今後5年、10年考えたときに日本の若者は、例えば飲食でお酒を飲まないと。そういう状況にもある中で、どうしていこうと考えたときに、やはり外国人観光客。彼らのマーケットが伸びている、そこに対して、何も今手を打たなかったら、結局5年後にも来ないですよね。なので、今から先行投資というのが分かるので、それをちょっとやっていきたいと。基盤づくりをしていきたいので、相談に乗ってほしいと。そういうお問い合わせがありました。なので、本当に今直近だけじゃなくて、2年、3年、あるいは5年。そういった長期スパンで考えるときに、自分の置かれている業界、ビジネスはどうなっていくのかと考えたときに、このインバウンドというところが、もしかすると救いになる業態、業種の方もいらっしゃるのではないかと思います。
森辺:例えば例でいうと、ドン・キホーテとかビックカメラとかって、かなり前から店舗の歌ですか、「ドンドンドン、ドンキー」というやつあるじゃないですか。あれを中国語とか韓国語で歌っていくと、いわゆる外国の旅行者に消費税はいただきませんみたいなもののサービスとか、表示が全部中国語とか、韓国語とか、タイ語とか最近なっているじゃないですか。ああいうのが、まさにインバウンドなのですよね。バスがドンキの前にバーンと止まって、そこで買い物をするという状況が、汐留のドンキにたまに行くのですけど、そんな光景をよく見るのですよ。
村山:そうですね。それはまさに外国人観光客を受け入れているシーンだと思うのですけれども。あれも何もやっていなくて勝手に来るというわけではなくて、その仕掛けづくりであるとか、旅行会社のアプローチであるとか、あとは本当にPOPとかですね。店舗に来た外国人の方に、いかに買っていただくかということを試行錯誤されながらやっていますね。ただ、ドンキさんとかはいち早く、他の企業さんよりは取り組んでいるために、今成果もそれなりに出てといるいう状況ですね。
森辺:築地のおすし屋さん、市場もそうなのですが。私がよく行く麻布十番のおすし屋さんに外国人が結構最近増えてきていて、大将に「どうして?」と話しをしたら、戦略的ではないのですよ、大将は。たまたま外国で配布される、東京都内の美味しいおすし屋さんというグルメガイドに載ったら、いっぱい来ちゃったのだということで、マヨネーズを使ったカリフォルニアロールの進化版みたいなおすしメニューが増えていまして。純粋な硬派はおすし屋さんだったのですが、最近徐々にマヨネーズチックなおすし屋さんになってきていまして。私はマヨラーというわけじゃないですがマヨネーズ好きなのでいいのですが。そういうことをしていて。結局、飲食店の中にはそういうことを戦略的にやられていて、いわゆる減るわけですから。人口が減ったら来る人は当然減りますよね。それをどうやって補っていくかということが、先見の明のある経営者は今のうちからやって、考えているということですよね。
村山:今のおすし屋さんの例は、多分個人の観光客の方が多いと思うのです。個人と団体、どちらをつかむかというとこで、またアプローチが変わってくると思うのです。個人の場合は、口コミとか、ガイドブックに載ったとか、ブログで掲載してもらったから、ある日突然来始めたというところが多いです。一方で、団体をまとめてちゃんと獲得しようと思ったら、それは放っておくというよりは、やはの積極的に旅行会社にアプローチをして、それは現地の旅行会社、日本国内の受け側をやる「ランドオペレーター」と言われる旅行会社にアプローチするとか、幾つかあるのですが。そういったところはやはりあえてプッシュで仕掛けていかないと、なかなか安定したビジネスにはならないです。
森辺:今、ルイ・ヴィトンのもともと顧客の6割ぐらいが日本人だったのが、中国人に代わっていって、いわゆるスイスの三大時計ブランドといわれるような、何百万も何千万もするような時計って、全部中国の方で消費されていて、すごく面白いのですけれども。高級ブランド品の世界の店舗数の統計を見ていると、かなりの数が中国とかアジアに移っていて、そこの観光客の数を重ね合わせたデータを見ていると、すごく出国しているのですよね。だからやはりインバウンドで誘致するという人たちは、ある程度所得水準が高いという捉え方ができるから、ビジネスとしては非常においしい層だということなのですかね。
村山:そうですね。特に東南アジアの方で今日本に来ている方々は、やはりある程度の所得が、国の方でもある方が中心に来ています。そういう意味では、国ごとの購買欲、だいたい1週間のステイでどれくらいの金額を使うかというのは差があるのですけど。全般的にある程度の富裕層の方々が中心に日本に来ていると。それなりに日本で経済活動、要は買い物とか宿に泊まったり、飲食店に行ったり。そういったところで経済活動をしている方々が多いですよね。
森辺:これは小売店とか、飲食店みたいな店舗の方々じゃなくて、メーカーさんなんかもすごくインバウンドというのは重要だと思うのです。友人が太田胃散をたくさん買って送ってくれとか、指定してくるわけですよ。風邪薬は何とかがいいとか、頭痛薬はイヴの何とかバージョンがいいとか。何でそんなの知っているのだという話しを聞くと、日本に旅行に行った友人からもらったのがすごくいいとか、効きがよかったとかという話しを聞くので、結構製造業なんかにとっても、日本でお土産として買われた商品が向こうで人気になって、それが現地の進出の足掛かりになるというケースも結構あるのですよね。そういう意味でも結構インバウンドは重要なんですかね。
村山:そうですね。国内に来ている方々に対して、日本のブランド。まずそこで認知していただく。だからテストマーケティングという要素もあると思うのです。まず、日本に来ている方々に受けるかどうか。受けて買っていっていただいて、現地でまた口コミを広げていただくというのも本当にあると思いますし、化粧品とかでも、本当に具体的なブランドとか型番などを決めて、これを大量に買っていくという人もいますし、もう情報はほとんどネット上とかで世界で見られているので、それを具体的に欲しい。買い物代行みたいなサービスも今出ていますし、
森辺:まとめて買って持っていくのですよね。
村山:そうです。その部分はマーケットとして、可能性があるなと感じます。
森辺:東急ハンズ。これを自国に持っていきたいということを言った人が、今まで何人もいましたけれども、東急ハンズのあの品ぞろえ。多分ないものがないのではないかというぐらい、食料品以外っていつも思うのですけど。本当にこの物、ここがこうなっているのが欲しいのだよねというのが、全部あるじゃないですか。だから、ああいう物の需要が世界にもあるということなのですよね、きっと。
村山:そうですね。やはり日本の物づくりとか、こだわりがすごいじゃないですか。だから、ああいう店はないですよね。海外には。アジアとか結構最近よく行っていますけど、やはり。
森辺:聞かないですよね。ホームセンターなんかもね。
村山:そうですよね。ないですし、ブランドみたいなのはどこでもあったりするのですけど。東急ハンズ的なニッチで、使いやすさにこだわって作られたようなものとかは、なかなかないですよね。そういう観点で見ると、本当にいろいろな日本にある商品、サービスが、実は潜在的に海外で競争力あるけれども、まだ分かっていないというのがすごくあると思います。
森辺:そうですよね。食品なんかも、まさに少子高齢化というか、国内の縮小の影響も直撃する業種だと思うのです、食品メーカーさんなんていうのは。でも海外とかアジアのFMCGとかのマーケットを見ていると、結構欧米よりの色合いも味覚もどぎついやつ、味もすごく大味のものが多いのですけど、お菓子にしろ、アイスにしろ、調味料にしろ。けど日本って、これってレストランで出しているのと変わらないじゃんという冷凍食品。私の舌が音痴なのかもしれないのですけど(笑)。結構美味しいじゃないですか。餃子にしろね。カップラーメンにしろ。カップラーメンなんて、僕は日清さんが作るカップラーメンとか、世界中のいろいろなカップラーメンと比べるのですけど、味覚が違うとかそういう問題じゃなくて、明らかにおいしいのですよ。そういうものって知らないじゃないですか。日清はすごく世界中でものを売って活躍していますけど。もっともっとマイナーな食料品とか、知られていないので、そういうのを知らしめるためのいいコンテンツでも、インバウンドがあるわけですよね。
村山:そうですね。実際、本当に外国人観光客の方は、日本の百貨店の地下の食品売り場とか、デパ地下とかも本当に感動しています。お菓子の種類であるとか、ケーキであるとか、あとは食料品の多彩さと品質の良さとかは、本当にびっくりしていますよね。
森辺:地下のお菓子のおいしさ。甘さがちょうどいいというか、すごくそれは思いますよね。バラエティもそうですしね。今日はそろそろお時間なのでこの辺にして、次回もオリンピックの話を混ぜながら、引き続き村山社長にお話を聞いていきたいと思います。また次回、どうぞよろしくお願いします。
村山:よろしくお願いします。