森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、前回のお話ですかね。先進グローバル企業の強さの秘密ということで。今日は3つ目かな。今まで2つお話をしていて、今日は3つ目になります。
3つ目、強さの秘密。何かと申し上げますと、パフォーマンスを最大化するための戦略的なチャネル構築ですということで、先進的なグローバル企業のアジア新興国での圧倒的な強さの秘密は、やっぱり戦略的なチャネル構築にありますよと、チャネルのストラクチャーがそもそも戦略的だし、そのチャネルをどういうふうにプロセスさせるか、機能させるかみたいなところも非常に戦略的で。
結局、これはB2CでもB2Bでも同じなんですが、B2Cのほうがチャネルが複雑なので、B2Cを例題にしてお話すると、新興国の最大の流通の特徴って、小売の特徴って、近代小売に加えて伝統小売がありますというのが特徴なわけですよね。この伝統小売というのが数十万、数百万のレベルであると。例えば、ASEAN、伝統小売、ベトナムで50万店、フィリピンで80万店、インドネシアで300万店あるわけですよね。それに対して近代小売の数ってどれぐらいかと言うと、ベトナムで主要どころで3,000店舗。たった3,000店舗ですよ、近代小売。もうこれって、ベトナムでは伝統小売を攻められないんだったら、ベトナムで消費財を売る意味がないということなわけですね。相当長い投資がかかりますよと。たかだか主要どころ3,000店舗ですから。フィリピンでも7,500~8,000ぐらいですかね、主要どころ。それに対して80万店の伝統小売がある、サリサリストアというふうに言われていますけども。インドネシアの伝統小売はワルンというふうに言われていますけども、このワルンが300万店あると。それに対して近代小売は4万店ほどというふうに言われていて。ただ、この4万店のうち3万5,000店というのはアルファマートとインドマレットというインドネシア系のコンビニエンスストア。セブンイレブンをインドネシアから締め出した、非常に強いローカルのコンビニエンスストアですけども。その人たちで牛耳られているということは、この2強のコンビニに入れるということと、伝統小売を獲るということが非常に重要なタスクになると。そして、インドネシアだけにハラルの認証取得はマストですよと。こう考えたときに、3万5,000店も2社で持っている、コンビニエンスストアの交渉力の強さって相当なものですよね。そうすると、この2社の小売に商品を入れても、皆さんご存じ、ASEANの小売というのは不動産のように棚代を取ってきますから。強制プロモもあります。そうすると、近代小売だけをやっていても儲からない可能性が非常に高い。なので、同時並行的に伝統小売300万店を狙っていくということをやっていかないといけないんですけども。こういう全体の構造を理解した上でチャネル構築をしているので、販売チャネルが非常に戦略的なんですね。
それに対して日本企業は、まずちょっとやってみようと。そこで成功体験をつくれたら、また少し進んでいこう、どちらかと言うと積み上げ式で進んでいくという、こういう傾向が何事においても日本企業ってそうだと思うんですけど、積み上げ。
一方で、先進的なグローバル企業…。敢えて欧米とは言いません。先進的なグローバル企業というのは、まず最初に全体像を把握して、その全体像からゴールに到達するための最短ルートを逆算するという、こういう方法をするわけですね。そうすると、インドネシアの流通構造がこうだ、フィリピンこうだ、ベトナムこうだという全体像をまず最初に可視化しているので、じゃあ、ここで私たちが目標とする、もしくは目的とする、何々を達成するためにはこういうディストリビューション・チャネルじゃないとだめだよねというものをつくってしまうと。それがまさに戦略なわけですよね。それを実行していくので、全体像から逆算して、それを粛々と実行していく。だから、成功に到達する可能性、可能性というか速度が速いと、最短で到達できるし、またその確率も高いと。
一方で日本企業は、今の現状を少しやってみて、うまくいったら前に進むけど、うまくいかなかったら立ち止まって考えるみたいな、積み上げ式の概念が非常に多いので、行き着く先がゴール、ゴールがぼんやりしちゃっているんですよね。どこに行きたいんですかという最初の戦略、示すべき戦略がぼんやりしちゃっているので、こういうふうに行ったらまた登ってみようよと、こういうふうに行けばもう1歩上がってみようみたいな。これはオールドエコノミーの時代だったらギリギリ通用したのかもしれないし、もし自分が僧侶さん、僧侶だというのであれば、こういう考え方でいいと思うんですね。鍛錬で毎日コツコツとやっていって、最終的にはどこかに導かれていくみたいなですね。なんですけど、残念ながらこのグローバルビジネス、グローバル競争をこの新興国市場でやるときに、この積み上げ思考では勝てない。物事は全部逆算をしていかないと、戦略的になれないんですね。なので、そこがやっぱり先進グローバル企業は非常に強くて。
これを、じゃあ、総じて言うとどうなのかと言うと、やっぱりビッグピクチャーを見る力、描く力が非常に長けていると、自分たちがどうなりたいんだ、どうなるべきなんだというものを先にバーンと見てしまって、じゃあ、そこに最短で行くためにはどうしたらいいの?ということを逆算思考で考えていく。一方で日本企業というのはビッグピクチャーを描く力が非常に弱いので、ビッグピクチャーじゃないんですよね。だから、俗人的で積み上げでやっていくので戦略がないと、まさにそういうことなんですけど。この両者が戦ったときに、どっちかが勝つかって、精神論的にはやっぱり僕も好きです、日本企業のそういう精神的なのは。ただ、なかなかやっぱり、数字の世界ですから精神論ではうまくいかないということになるので、逆算で考えるということが非常に重要ですよというお話でございます。
これで、すみません、4回ぐらいになっちゃったのかな、また最後長くなっちゃいましたけども、先進グローバル企業の強さの秘密ということで全4回終了したいと思います。また次回お会いいたしましょう。