東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き村山社長をお迎えしていますけれども、今回はどういったお話を。
森辺:今回は東京オリンピックの話題を中心に、今後日本のインバウンド事業がどう変わっていくのか、また変わるべきなのか。こういうところを、村山社長にお伺いできればなと思います。村山社長、どうもよろしくお願いします。
村山:よろしくお願いします。
森辺:オリンピックが2020年に決まったわけですけど、いかがですかね、その辺は。
村山:まず個人的に最高にうれしいです。ずっと見ていたのですけれども、本当に素晴らしいなと。と同時に、うちの会社だけではなく、インバウンド。インバウンドの枠を越えて、まさに日本国内で事業をしている企業さんにとって、非常にいいチャンスが来たのかなと思っています。実際、われわれも企業さんとの接点があるのですけれども、やっぱりオリンピックが決まるまではそこまでインバウンド、外国人観光客の呼び込みというのに興味がなかった企業さんも、社長がいきなり全社員に対してメールを送ってきて、「皆さん、これからは英検を取りなさい」みたいな。そんな感じで、シンプルなんですけど。でも、その会社では今までそういうことはなかったと、全く。外国人観光客に対応するために、英検とか全く意識がなかったのだけど、そういうことを社長直轄で推進するみたいな事例もあったりとかで。やはり決まった後と決まる前と全然温度感が変わったという印象は受けています。
森辺:今後7年というと、まだ大分先のような感覚を受けるものの、ふわふわしていると、すぐ7年が経ってしまって、インバウンドがいきなり来月から来られても、受け入れ体勢みたいな話になると思うのですけれども、それは個人のレベルから企業のレベル、国のレベルまで幾つかのレベルがあって、今回のインバウンド、東京でオリンピックをやるというのは、われわれ1億2,000万人とか、日本にいる何十万社、何百万社の企業に平等に与えられた、1つのチャンスだと思うのですよね。そうなったときに、まず何を国レベルで、企業レベルで、そして人レベルで、この7年間準備していかないといけないのか、何かそういったことをお話を教えていただければなと思いますが、いかがですか?
村山:まず、日本国内でも話題になっていますけど、滝川クリステルさんが「お・も・て・な・し」とプレゼンしたじゃないですか。あれで大きなインパクトを与えましたし、日本国民にもオリンピックはおもてなしなのだというマインドというのがちゃんと浸透していると思うのです。それって結構基軸になると思うのです。それは国であっても、民間であっても、個人であっても、外国人観光客をしっかりとおもてなしをするためには、どうしたら良いのか、どういう体勢がいいのか、どういうインフラが必要なのか、その辺りをしっかり取り組んで、この7年で取り組んで、結果を出さないと口だけだったのかみたいな。そんな話になってしまうので、それはベースとしてあるのかなと思っています。その上で、例えば国の部分で言うと、交通インフラの部分。それは一次交通と言われる飛行機で外国人観光客、来るのが大半じゃないですか。では、ちゃんと飛びやすいよう飛べているのか、あるいは予約したいと思ったときにちゃんと便が取れるのか。要は、繁忙期など忙しいタイミングでは日本人もいろいろ動くタイミングを見ると、中々予約が取れないという現状もあったりします。あとは、先月北海道に行ったのですが、北海道も今すごいのですね、観光客が。それは国内の観光客と、外国人観光客がすごく来ているのです。何が起きているかというと、バスが足りない。二次交通と呼ばれるバスとか、街に着いてから移動する機関がないと、特に個人の方なら良いにしろ、団体客がきたときにバスがないと致命的ではないですか。なので、外国人観光客、例えばタイの方が来たい、台湾の方が来たい、北海道に行きたいと言っても予約できないのですよ、バスが取れないために。そういう現状があったりします。なので、それは国とかあるいは自治体のレベルで交通インフラというところをしっかりする。その上で、外国人に対して分かりやすい標識、特に日本は東京でもそうですけれども、結構ごちゃごちゃしている部分があって、漢字しかなかったりする部分があると、地図は英語の地図なのですけど、実際は漢字だったりすると、やっぱり分かりづらかったりしますし、それを日本人に聞かれても漢字と英語が併記であればいいのですけど、片方しかないとサポートする方もサポートしづらいといったこともあるので、そういった意味では他言語の表記とか、そういったところも重要ですよね。あとはいろいろあるのですが、私がちょっと今思っているのは、買い物をしやすくするみたいなところで、免税の部分とか、そういったところの緩和をやっていただきたいなと思っています。それを具体的に言うと、今、商業施設さんが日本国内で12万ぐらいあって、そのうちの3,000店舗ぐらいしか免税の認可を受けていないのです。なので、免税で外国人に対して販売するということができているのが本当に一握り。さらに、化粧品とか、お酒とか。日本国内で消費する可能性のあるものが免税対象になっていないのですよ。でも実はそこは結構重要だったりするので、本当だったら免税対象になってもいいのですが今はなっていないと。ただ今国の規制緩和で、免税対象の品目を増やそうとあるのですけど、そういった規制緩和とか、より外国人観光客にもっと買っていただくための環境作りをいかにするかみたいなところは、やはり国の役目だと思っています。 森辺:そうですね。確かに自分たちで海外に行っても、免税だとうれしいですもんね。 村山:そうですね。それだけで背中を押されるというか、ちょっと買いたくなるみたいなところがあると思うので。それがあるかないかで、売り上げの規模感が変わってくると思うのです。
森辺:そうですね。なるほど。あとカジノとかはどうなのですか?これから。
村山:カジノ議論はずっとありますよね。諸外国なんかはどんどん進めていっているじゃないですか。韓国初め、シンガポールも作っちゃいましたし、いろいろなメリット、デメリットがあると思うのですけど、私個人的にはカジノ、ルールづくりは必要だと思うのですけど、やはり推進していきたいなと、実現していきたいなと思っています。まさにオリンピックが決まった今しかチャンスがないのではないかなと。今やらなかったら2020年以降にやるのかといったら、多分やらないですよね。
森辺:お隣韓国と比べると、規制の緩和もそうですし、外国人に対するビザの緩和もそうですし、カジノにもそうですし、何かこう動きが一歩後手後手に回っている気がするのですが、早いですよね。
村山:そうですね。韓国は本当に早いし、国が規制の緩和とか海外の発信であるとか、免税であるとか、いろいろなものを結構スピーディーにやれる状況にありますよね。それは、予算の面でも現れているのですよ。韓国は日本よりも小さくて人口が少ない、でも観光予算。特に外国人観光客を呼び込むという予算は倍以上あるのです。人員も充実していますし、そういう意味では国が観光にかける姿勢みたいなところが、やはり大きく違うなというのがありますね。
森辺:まずは7年間の間で、国として外国人を受け入れる「おもてなし」というものが本当に口だけにならないような、規制であったり、インフラですよね。これをしっかり整えていくというのが、国レベルでは1つ重要になってきますね。一方で、企業レベルでいうと、どんなことが必要になってくるのですか?
村山:先ほどの国とか自治体の部分で、もう1個だけ補足しておくと、やはりPRですね。海外向けのPRというところはしっかりやっていただきたいなと思っています。というのも、民間の部分にも絡んでくるのですけど、やはり一民間企業で、例えば自分のホテルのPRを海外にやったとして、そのホテルのためだけに外国人が足を運ぶかと行ったら、やはりNOですよね。その街に行きたいとか、日本に行きたいとか、日本で食事を食べたいとか、何か他の理由があってその一連の流れの中で自分の行きたい場所に近いホテルに泊まるみたいな。そういった形なのですよね。よく、観光カリスマのサワノヤという旅館の澤さんという方がいらっしゃって、もう30年ぐらいずっとインバウンド専門でやっている旅館さんなのですけれども。その方がおっしゃるのは、「外国人観光客は宿に来るのではなく街に来る」ということを日本全国のセミナーとかでお話しされているのですけど、まさにそうだと思うのですよね。なので、要は一民間企業で出来ない部分というのが、そのエリアとして、街として、国としてPRしていくというところが難しいので、そういう意味ではある程度自治体、国、まとまった予算、そこに民間を巻き込んで海外に発信していく。そこをぜひやっていただきたいと。
森辺:確かにそうですね。リッツカーネトンやセントレジスといったらホテルに来るかもしれないですけど、街に来ますもんね。当たり前ですけど、確かにそうですね。
村山:それを踏まえた上で、民間は何が出来るの、何をしなければいけないのと言ったときに、1つは受け入れの部分。実際外国人観光客が来たときに、宿であるとか、飲食店であるとか、そういった商業施設、いろいろなところが外国人観光客との接点の矢面に立つので、まさにそこで評価されるじゃないですか。もっとお金を使おうかなとか、もう日本に来たくないとか。あるいは日本の食事が本当によかったとか、日本のおもてなしがよかったとか。サービスは本当にレベルが高い。いろいろな印象を持ってもらうというのが、まさにビジネスの現場、おもてなしの現場だと思うので、そういう意味では、やはりまず1つは受け入れの体制の整理。特に一番ベースなのはマインドの部分かなと思っています。言葉とかもちろんあるのですが、まずはマインドの部分で外国人観光客をしっかり受け入れていこうという心持ちを従業員さんが持つ。持たせるためにも、2つ目、語学の研修みたいなところも必要かなと思っています。語学の研修も本当に英検でいうと2級、1級とかそういうレベルではなくても、あいさつが出来る程度で良いと思うのです、正直。でもあいさつが英語で出来る、中国語でも出来る、タイ語でも出来るみたいなそういう状況にもなると自信がつきますよね、現場が。少し一歩踏み込んで、声をかけたりとか、あいさつをしたりとか、というだけで印象が全然変わってくると思いますし、なので大きな投資でなくても、まずはマインドを変える。そのためにも言葉に興味を持って覚えさせるとか、というところはまず必要だと思います。
森辺:あいさつぐらい、こんにちは、ハロー、アニョハセヨ、ウェディハオ、サワディックラぐらいは覚えていたら、5カ国ぐらいはいけますもんね。
村山:そうですね。あとは、商業施設は、例えば軸足を置いて話しをすると、だいたい3つ課題があるのですよ、受け入れ側は。1つは決済の部分。要は、カード決済。中国だと銀聯カードがあるじゃないですか。それがちゃんと使える、決済が用意されているかみたいなところとか、あと2つ目は免税の部分。先ほど話にもあったように、免税の対応をしているのかどうか。3つ目が言語の部分ですね。言語ができるスタッフがいるのかどうかみたいな部分であったりとか、あるいはいなかったとしてもツールで対応したりとか。その3つ部分が受け入れ側での課題になります。その3つは、できれば2020年に向けて、解消していくというところは、どこの商業施設さんでも前向きにやっていただきたいなと思います。
森辺:その国、地域、自治体とその地域の民間企業が一緒になってやることであって、一企業がこれをやるよりもより効率がいいですよというのが、今の村山さんの話ですよね。個人としてもそうですけど、まず気持ちを変えていけと。個人の気持ちが変われば、企業の気持ちも変わっていって、企業が一社一社が施策を繰り広げるのではなくて、地域自治体であったり、地域社会とともにその地域をいかにオリンピックに向けて盛り上げていけるかというところが、いわゆる勝敗を決めますよということですよね。
村山:そうですね。極端な話、民間でも予算がなくてもやれることはいっぱいあるのです。例えば身近なところで言うとPOPを作るであるとか、ちょっとした投資じゃないですか。でも、そこに外国人観光客に対して、今まで何もやっていなかったところに対して、何か新しいことをやると確実に売り上げが上がります。なので、インバウンドほど小投資で成果が出るものはないと思うのです。だから、まず身近な部分でやれることはやるというところと、あとはPRとかになると結構やっぱり予算がかかったりとか、やれることの範囲が広がったりするのですけど、そこは自治体とか、国が、最近は予算を持ってプロモーションをかけています。なので、その動きを把握して――便乗ですね。便乗作戦で地域の観光協会であるとか、コンデンション協会とか、いろいろな組織があるのでそこに加盟すると、大体その地域をプロモーションしていくというのをやり始めている自治体も多いので、そこに組み込んでもらいたいのです。そうすると、自分たちはそんなに予算を出していないけれども、横浜なら横浜で海外に売り込むと。そのときにコンテンツをしてちゃんと自分の施設を折り込んでくださいみたいな。その辺のネゴとか動きというのは、お金をかけずしてやることができるので、もうちょっとその辺の情報収集とかされながら動いていくと、成果につながるのではないかと思います。
森辺:7年というのもすぐに経ってしまうので、きっと企業や地域社会ということで、みんなが一緒になって協力して、地域を変えていくという話でしたよね。
村山:ちなみに7年あればやれないことはないと思います。7年は結構短いようで長いようで、ちょうどいいかなと思うので。今考えてアクションを取れば7年あったら大体実現できていると思うので、まさに今がチャンスかなと思っています。
森辺:分かりました。ありがとうございます、村山さん。今回はこの辺にさせていただいて、次回また最後になりますが、インバウンドとアウトバウンドの関係性みたいなところついてお話をお伺いできればと思います。どうもありがとうございました。
村山:ありがとうございました。