森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。今日も前回に引き続き、アジア新興国市場に展開する上で重要なことということでお話をしていきたいと思います。
今日で3回目ですかね。YouTubeでも、SPYDER CHANNELのYouTubeでもこの手の話、何回もしているので、ぜひそちらのほうも皆さん見ていただければと思いますが…。
今日はね、何の話しようかな。アジア新興国市場で最も重要なことということで、R-STP-MMの重要性についてお話をしようかなというふうに思うんですが、R-STP-MMって何かと申し上げますと、マーケティングの基本プロセスのことを指しています。これは今、ネットでパパンと叩いてもらうとバーッと分かりやすい図がいっぱい出てくると思いますが、マーケティングのフレームワークっていろいろあるわけですけども、ほぼすべてのフレームワークが最終的にはこのR-STP-MMに集約されると言ってもいいぐらいに本当にマーケティングの基本的なプロセスになっていて。Rというのはリサーチの略で、マクロ環境分析、ミクロ環境分析、SWOT分析の3つの要素で構成されていて、STPというのはセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの略で、最後のMMというのは4Pの略ですよね、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの略で。基本的にはマーケティングをするときには、この基本プロセスを順だってやっていくということはすごく重要で。
日本企業の失敗事例を開いていくと、マーケティングの基本プロセスが最適化されてないみたいな、進出したんだけど失敗してしまった企業なんていうのは、Rの最初のマクロ環境、ミクロ環境、SWOT分析みたいなところが本当にできていなくて。特にミクロ環境分析って何かと言うと、主要競合をどれだけ可視化するかみたいな話なんですよね。マクロ環境分析というのは市場をどれだけ可視化するみたいな話で。じゃあ、その市場にどういう脅威が待ち受けていて、そこに自分たちが今持っている経営資源で出たときに何が起こり得るのかということを分析するのがSWOT分析で。ここをある程度高いレベルで分析をしっかりしておけば、こんなイージーなミステイクで失敗する必要はなかったのにという問題で失敗しているケースが日本企業の場合は非常にあって、このRをまったくやっていないで出ているとかですね。
STP-MMみたいなのは、セグメンテーション、ターゲティング、これは一緒なんですけど、どのインダストリーのどのターゲットを狙うの?というところが何となくぼんやりしていて、なおかつ自分がそのターゲットに対してどういうポジショニングを築くんですかというところもぼんやりしてしまっているのでなかなか、あなたは誰?状態になってしまっている、「私たちは品質の良い日本企業です」みたいな、それはもう通じないですよ。それが通じたのは80年代90年代だけですからという、そこがやっぱりぼやっとしたまま30年来ちゃっているというのが非常に多く見受けられるし。
最後のMMに関しても、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション。本来はここは4Cの観点で考えなければいけない。4Cはパパッと引いてもらったらいいと思うんですけど、4Pが企業側の視点だとすると、4Cというのはいわゆる消費者やユーザー側の視点になるわけなんですけども、そこがやっぱり全然最適化されていない。なぜシェアが上がらないの?なぜ売上が上がらないの?その多くの要因、ほぼ100%の要因はこの4Pとか4Cにあると言っても過言ではなくて、だいたいこの4P、4Cがうまくいっているのにシェアが上がらないなんていうことは、もう物理的にあり得ないんですよね。うまくいっている先進的なグローバル企業なんかの4Pとか4Cを見てみると、なるほどなと言えるものに仕上がっているというのが実際で。なおかつ、ターゲットがまず最初にあるべきなので、ターゲットが明確と。そのターゲットに対して自分たちがどういうポジショニングを取るの?どうあるべきなの?自分たちは誰なの?ということがもう明確に定義されていて、それでいて、いわゆる戦術になってくる4Pみたいなところが非常に合理的に描かれている。なのでシェアが上がりますよ、なので売上が上がりますよ、という話になるんですけども。そこがやっぱり非常にうまいよねと。
以前、この番組でも「日本企業は可視化が足りていない」という話をしましたけど、可視化というのは一番最初のRの状況のときにやるわけなんですけどね。市場を可視化して、どういう市場なの?どういう特異性があって、どういう特色があるの?と、はたまたどれぐらい儲かる市場なんですか?というのがマクロ環境分析で、じゃあ、その儲かる市場、その特異性のある市場にはどんな脅威が待ち受けているの?どんな競合がいるの?というのがミクロ環境分析。じゃあ、その儲かる市場にこんな強い敵がいて、そこに自分たちの今の経営資源で参入したら何が起こるんでしょうか?勝てるんでしょうか負けるんでしょうか?どういう戦いいなるんでしょうか?ということを分析するのがSWOT分析で、ここがやっぱり甘かったりするというのが日本企業の特徴かなというふうに思うので。
このR-STP-MMをしっかり詰めていくということが、日本企業の戦略の質を格段に上げられると思いますので、ぜひうまくいっていない企業は、R-STP-MMをもう1回再構築をしてみてください。日本だとね、こんなことをわざわざやる必要はないんですよ。もうすべてのあれが整っていますからね、インフラストラクチャーが。要は顧客の信頼、小売の流通の信頼・実績、あらゆるものが揃っていると。でも、そうじゃない、アジア新興国は何もない状態なので、このマーケティングの基本プロセス、R-STP-MMが重要ですよ、というお話でした。
皆さん、今日もありがとうございます。また次回お会いいたしましょう。