第392回 【Q&A】新興国展開で最も重要なこと その9
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、皆さんからの質問にお答えをしていきたいと思います。シリーズで「新興国で成功するために最も重要なこと」ということで、今日で9回目ぐらいですかね、お話をしておりますが…。「最も重要なこと」なので本来は1つであるべきなんですが、どういうインダストリーの企業が、どの国のどの都市で、何をするかによって最も重要なことというのは変わってくるので、私の支援人生の中で重要だなと思ったことを話していたら9回になっちゃいましたと。次回の10回で最後にしようかなというふうに思っています。
今日のお話ですけども。今日は何を話そうかな…。そうですね。今日は強固な販売チャネルをつくる上での鉄則についてお話をしていきたいなというふうに思います。日本企業がチャネルが弱いというのはそもそもあるんですけど、なぜ弱いかというところにおいては、つくり方があまりうまくないと。つくり方における概念、考え方が根本的に間違っていて、ここの部分についてお話をしていきたいなと。
販売チャネルをつくるってどういうことかと言うと、日本企業って契約して終わりなんですよね。とにかくでかくていいところと契約して終わりと。あとは任せると、「自分たちはつくる人、売るのはディストリビューターです」ということで、契約するまでがゴールなんですけど。実は契約をするまでというのはその前段の話であって、契約してからがスタートなんですよね。結論から先に言うと、いかに契約までに戦略を共有できるかということと、契約したあとに管理育成をできるかということはすごく重要で。
この番組でも散々話をしてきているので、検索してもらったら分かると思うんですけども、強い販売チャネルをつくるというのは、ディストリビューターの発掘選定というプロセスと、それから契約交渉というプロセスと、そして管理育成という3つのプロセスが重要になってきますよと。この3つのプロセスの中でディストリビューターを発掘選定していくという。ここの基準は、ターゲットがまず最初にあるので、誰に売りたいんですかと、そのターゲットに売れるディストリビューターがいいディストリビューターなわけですね、スキルセット的には。物理的なスキルセットとして自分たちが設定したターゲットに売れるディストリビューターを、まず絶対評価で絞り込んでいくと。絶対評価というのはつまりどういうことかと言うと、自分たちが売りたいのがA社、B社、C社だったら、A社、B社、C社の取引がないところは基本的には消去されるわけですよね。売りたい先がA社、B社、C社で、すでに取引があれば極論明日からでも売れる。でも、取引が今現状なければ、そこと関係をつくって取引をしてもらうまでにまた何年もかかるわけなので、基本的にはそういうところは消去される。例えば自分たちが100億やりたければ、100億やりたいのに今現状100億の売上しかないディストリビューターと組んでも、これは永遠に100億にはならない。ディストリビューターというのはキャッシュを回すビジネスですから、売上が100億の企業に新たに100億の売上をすぐつくるということはできないので、そういういわゆる物理的なスキルセットの中で消去法をしていく絞り込み。そして、あとはマインドセットですよね。これはディストリビューターも必ずオーナー社長と話さないといけなくて、彼らが自分たちの製品や商品、自分たちの戦略に対してどれだけ熱量で、それを一緒にやって、彼らの新たな事業の柱にしようとしているかということを、それを直接オーナー社長から感じられるということはすごく重要で、もうNo.2と話しても、No.3と話しても、トップの鶴の一声ですべてがひっくり返るので、基本的にはトップと話して、マインドセットの部分、スキルセットの部分、ここを考えて絞り込んでいく、発掘選定していく。
そのあとに契約交渉になるわけなんですけど、これも発掘選定の後半部分から実は契約交渉に入っていて、これは日本の企業は守りはすごくよくできているんだけども、攻めがまったくできていなくて、よくあるのは事実上独占契約なのに、何かあったら困るので一応非独占にしておくみたいな。別に複数年契約するのに、何かあったら困るので単年度契約にしておくみたいな。こういうのは本当にまったくナンセンスで。結局ディストリビューターにとっては、独占契約もくれないし、単年度しか契約できなかったら、投資しようと思わないですよね、そんなメーカーの商品を売るのに。なので、いまいち彼らの投資も本腰にならない。どうせ1社と組んだら3年4年一緒にやることになるんですよね。3年4年腰を据えてやれないような相手をそもそも選ぶなという話なので、基本的には複数年度契約をしたらいいんですよね。結局どうせここしか使わないのであれば、3年4年独占契約を与えたらいいんですよね。その代わり、その3年4年独占を与える間、ある一定のコミットメントの数字をしっかり達成させる、いわゆる最低買取コミットメント数値を設定して、それが達成されなければ単年度契約に戻すという条項を付け加えてしまえば、結局事実上単年になるので、達成しなかったら。なので、ギブアンドテイクの関係がうまくいくわけで、それで向こうもモチベーションが上がるわけですよね。そういうテクニックをうまく契約書に使ったりとかっていうことが、契約書を散々見てきましたけど、あまりなされていないと。なので、契約締結までがゴール、そして、締結する契約書も基本的には何かあったら困るので安全牌の契約書になっていると。こんな状態でモチベーションが上がるわけないので、万に1つ成功すればラッキーだし、しなかったらアンラッキーという話になってしまう。ここまでが1つで。
契約したあとがやっぱりこれは皆無で、契約したあと定期的な出張で「どうですか?」と。これはいいときはいいですよね。「いいですよ」と。ただ、悪いときというのは、だいたい為替と景気のせいにされて、何がどう具体的に悪いのかというのがなかなか出てこないと。それに対してメーカーとしてプロモーションを出してくれとか、ああだこうだと言ってくるんだけども、基本的に何が本当に要因で、なぜ物事が当初決めたKPI、戦略数値目標が進まないのかというところが見えてこない。そして、お互い疑心暗鬼になって最後はお別れというケースは非常に多くて。結局これは最初からつながっているんですけど、選定を間違えてしまったら、やっぱりそこはうまくいかないので、一緒に歩めるスキルセットとマインドセットが高い相手を選んで、そことしっかりと契約後の話、戦略のところをしっかり握ります。そして、KPIを設定して、そのKPIをずっと一緒に追い続けていく。問題が起きたときにそこに対策が打てる状態をずっとしていくということが管理育成で。別に管理をがんじがらめでやりますよと。Excelの表を出してください、なんとか…と、そういうことを言っているのではないし、日本企業がよく分かっていないのに、育成しますよと、そういうことを言っているのではなくて、基本的には彼らと同じ戦略、同じKPIを共有しているわけですから、その進捗がうまくいっているのかをずっと管理をしていくということを、いかなかったときに対策をしっかり打つということができなければ、言ったら向こうが言うこと以上しかないんですよね。それ以上もそれ以下もなくて、結局何も手出しができないので、問題があったときに対策が打てない、これが最も困るパターンなので、やはりそこの管理育成の部分をしっかりしていくということもやっていかないといけない。
これらのチャネルづくりがそもそも間違っているので、つくったときからもうディストリビューターとのパワーバランスの綱引きって始まっていて、メーカーとディストリビューター、プリンシパルとディストリビューターというのは、ある一定のところまでいくと、お互いのいわゆるメリットが若干乖離してくるケースというのがあるんですよね。互いの優先したい事項というのが変わってくる。そうなったときでもうまくさせるために、それだけの取り組みをしていかないといけないんだけども、そもそものディストリビューターとの、強い販売チャネルのつくり方の概念が間違っているとそうはならないので、今日説明したような流れでしっかりとつくっていく、発掘選定・契約交渉・管理育成と、それぞれの重要なポイントで、過去の番組でも散々話していますので、それを見ていただいて、そうやって強固なディストリビューターをつくっていかないといけないですよと、とにかくでかいところを見つけて契約したら終わりという話ではないですよというお話です。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。