東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、今回は11月19日に清水さんをお迎えして、アクセンチュアの清水さんなのですけど。お迎えしてセミナーをやったのですけど、セミナーに来られていない方も結構いらっしゃいます。その振替を含めて、やっていきたいと思うのですけど。清水さんというのはどういう方かというのをもう1回、森辺さんからご紹介いただければ。
森辺:11月19日に、弊社のスパイダーインシアということで、定期的にやっているのですけど、グローバルマーケティングセミナー。今回で第7回目ですかね。また次回が恐らく2月ぐらいにやるのですけど。今回は基調講演として、アクセンチュアの清水新マネージングディレクターをお呼びして、いろいろなお話をしていただいたのです。もともと、清水さんとは仕事の関係で、5、6年ぐらいの付き合いなのですけど、経営戦略本部、正式には経営コンサルティング本部の戦略グループのマネージングディレクターですかね。兼モビリティサービスグループの統括をしていらっしゃいまして、非常にグローバルであったり、日本企業のグローバル化みたいなところにおける知見が非常に多い方で、私もいつも情報交換をさせていただいているのですが、そんな方をお呼びしました。
東:はい。具体的に、どんな内容をセミナーでやったかというのは。
森辺:大きく分けると、日本の企業といわゆるアクセンチュア的にいうグローバルのハイパフォーマンス企業というのは、どこにどういう違いがあるのかということと、実際日本企業は今後どういうふうに変わっていかないといけないのかという話が大枠の話です。
東:結果的に、結論から言っていただいた方が早いと思うのですけど。具体的にどういった結論をこのセミナーでは。
森辺:結論としては、日本企業はいいところをたくさん持っていますと。例えば技術力であったり、ミドル層のマネジメント力、人が優秀だと私もずっと言っていますけど。このミドル層のマネジメント力であったり、現場力とか、エンジニアリング力というのですかね。そういった能力がすごくたけていると。例えば、営業力は現場力の1つだと思うのですけど。マーケティングが弱いのだけど、営業力はあると。多分日本企業だと思うので、そういう日本企業の強み、いいところがたくさんありますと。ただ、これだけではなかなか今のグローバル化、これからさらにしていく世界で、なかなかマーケットを取っていけないので、いかにグローバルハイパフォーマンス企業がやっていることを学んで、自分たちの強みを合わせて今後のグローバル展開をしていくべきだと、そんな結論だったのです。
東:1つは日本企業の強みを再認識するというところで、技術力が1つと。もう1つがマネジメント。ミドル層のマネジメント力という。あとは現場力と。もう1つがグローバルハイパフォーマンス企業の変革を学ぶと。まずは、グローバルハイパフォーマンス企業の変革を学ぶというところで、清水さんはどういう話をされていて、森辺さんはそれに対してどういう感想を持ったというのは。
森辺:非常に面白いなという感想を持ちました。おっしゃっていたのは、要はグローバル企業というのは2つの能力を持っていますと。1つは見極める能力。これは時代の変化を読むという能力なのですけど。もう1つが磨き上げるという能力で、これはビジネスパフォーマンスを向上させるという能力で。結局1番最初の見極める能力というのが、市場の変化とか、例えるとテレビというのは受像機であると。テレビの歴史を振り返っていくと、もともとアメリカでできて、もっと前で言うといろいろな人が発明してというのがあるのですけど。基本的にはアメリカの企業がテレビを作って、それを日本企業が進化させていって。つい数年前ぐらいまではテレビはとにかくきれいで、大きくて。それがテレビの最大の、何と言うのでしょうかね。いわゆる象徴的なものだった。それが、今テレビというのはさらに進化してしまって、これ以上画質の美しさとか大きさとかというのを競う競争ではなくて、中でどういうコンテンツが流れるかという、そういう時代に大きく変わってきてしまっているのです。今であれば、中国や韓国の企業でもテレビを作れるし、何なら韓国の企業の方がテレビシェアは多いわけで。そうなってくると、一昔前は日本企業しか作れなかったテレビがどの国の企業でも作れるようになってしまった現代においては、テレビの品質であったり性能よりも、機能であったり。テレビの中で何を流すか、どういうコンテンツを流すかという時代に変わっているでしょと。こういうことを見極めると。グローバルハイパフォーマンス企業というのは、これを見極める力を持っていますよと。これはテレビに限らずだと思うのです。いろいろなところでそうだと。もう1つの磨き上げるというところは、経営管理モデルの確率とか、オペレーション基準の設定みたいな、そういうお話をされていたのですけど。結局、標準化することが効率を追求するみたいな、そういうことをおっしゃる方もいらっしゃるのですけど、清水さんがおっしゃっていたのは、標準化ではないのだと。単純化なのだと。いかに無駄を削ぎ落として、単純にオペレーションモデルを組んでいくかということと、重要なのは最前線、最細粒度と。これは、最前線はその通りで。いかに最前線の情報をくみ上げていくかということと、いかに粒度の細かい情報をくみ上げて分析していくかということを、やはりグローバルハイパフォーマンス企業というのはやっていますよと。その通りだと思うのです。そうしたときに、この見極める力と磨き上げる力というのは、やはり日本ではものすごく遅れていて、アップルコンピューターなんかは、COOがどの国で、今どの機種がどれくらい作られていて、それがどの国の誰に渡るかということを常にデイリーで管理をしている。在庫、生産管理ですよね。在庫管理、物流管理、そんなことをやっていますよというお話をされていました。
東:アップルなんか、意外とイメージとしては、清水さんも言われていましたけど、イノベーションとかそう捉えられる企業だと思うのです。実はその裏にオペレーションモデルがきちんとしているということが、やはり必須条件というか。
森辺:まさに磨き上げる能力と、見極める能力――ごめんなさい、順番逆ですね。見極める能力と磨き上げる能力、両方持っているわけですよね。見極めるというのは、それこそiPodとかiPadとか、あんなのは市場が別に欲しいと言ったのではなくて、市場がどういうものを欲しているのかというのを潜在的なところのニーズを引き出して、時代が大きく変わってきていると。携帯はこうなる、スマートフォンを生み出して、それを市場にドーンと投入していったと。これはまさに見極めたのですよ。一方で、磨き上げるみたいなところに関しては、最前線、最細粒度の情報を収集して、それに対するオペレーションモデルを確率しているというのが素晴らしいところです。なので、そういったところを学んで、でも結局日本企業にはさっき言った強みというのがあって、技術力とかミドル層のマネジメント力、現場力、エンジニアリング力みたいなものがあるわけだから、それをやはり重ね合わせて、さらにグローバルハイパフォーマンス企業以上のパフォーマンスを出していける企業がたくさんあるのではないかという、そういう応援のメッセージが非常に強かったです。
東:清水さん、最後にグローバル企業は10年かけて変革した道のりを3年で実現するためにこういうことが必要なのではないかということは、あと10年は残されていなくて、3年か5年ぐらいでこれを達成しないと、追い付くまではいかなくても、視野に捉えるところまでいかないというようなメッセージなのですかね。
森辺:そう。結局事業部制を敷いて、垂直逃亡をして、今まで成長してきた日本企業というのは、横串刺すのも非常に大変な中で、これだけグローバルの競争が激しくなってくると、ただでさえオペレーティングモデルが遅れている日本企業はそんなに時間がないですよと。そういう危機感を煽るようなメッセージを。非常にいいセミナーでした。
東:もっと、森辺さん的にいうと、グローバルハイパフォーマンス企業と日本企業の決定的違いというのはどこに?
森辺:オペレーションモデルが正しくて、ものすごくそうだし、そこはそこで重要なのですけど、そのもう少し手前の段階で、チャネル戦略みたいなものがすごく弱くて、マーケティング戦略とかチャネル戦略、販売戦略みたいな話になると思うのですけど。結局例えば、単純な話、よく僕がたとえにして出すのですけど。三ツ矢サイダーとスプライト。同じ炭酸ソーダ水ですよね。たいした違いがない。けど、スプライトは世界中どこへ行っても飲めるのに、なぜ三ツ矢サイダーは飲めないと。これは、単純にチャネルなわけですよ。結局日用品とかFMCGというふうに言われるのですけど、「ファーストムービーングコンシューマーグッズFast Moving Consumer Goods 」の略なのですけど。このFMCGの市場でいうと、やはりグローバルのトップ10とかという企業は全て欧米系の会社で、われわれが日常生活しているような上で必要になる製品、この10社がグローバルで見たら牛耳っているのです。日本にいたらそんなに目にしないかもしれないです。ユニリーバとか、ジョンソン・エンド・ジョンソンとか、P&Gとか、ネスレみたいな、日本にいても目にしますかね。ケロッグもそうですよね。でも結局は、クラフトとか、コカ・コーラとか、マースとか、ペプシコとか、こんなところの10社がやはりグローバルで見たらもっともっと牛耳っているわけなのです。
東:もう1度10社を教えていただいてもいいですか。
森辺:P&G、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユニリーバ、それからネスレ、ペプシコ、コカ・コーラ、クラフト、ケロッグ、マース。こんな辺りですかね。
東:これで世界中の日用品はほとんど牛耳ってしまっているようなイメージなのですか。
森辺:そうです。日用品、食品ですよね。いわゆるFMCGと言われる。結局東南アジアにいっても、こういう企業さんはすごく強いわけですよ。では、製品が強い、商品が強いというのは当然あるのでしょうけど、日本企業が負けているかというと全然負けていなくて。クオリティーで言ったら別に勝っていたりするわけですよ。では何が弱いのかというと、チャネル作りがものすごく弱くて、結局チャネルをしっかり作っていくということもやっていかないと、オペレーションモデルだけでも、チャネルがなかったらオペレーションがまわらないので。僕もお客さんのご支援をしているときに、チャネルを作ってある一定の売り上げまではガンと上がる。その後そこからさらにスケールさせてドンと売り上げを上げるときに、オペレーションモデルが悪いと、上がらないのです。いくらチャネルを作っても。だから、いかにチャネルをつくる。ここも、単なる作るではダメなのです、後発ですから。既に大手がチャネル入り込んでいますから、そこでチャネル・イノベーションを起こさないといけない。いかに後発ならではのチャネル獲得方法を生み出して、それを実行していくかということと同時に、やはりオペレーションモデルを変えていくということをやっていく必要が僕はあるのではないかなと思います。
東:なるほど。そうするとやはり、単なるチャネル作りではなく、チャネル・イノベーションということをおっしゃったのですけど。日本企業が具体的にこういったトップ10を企業と、世界に出るために戦っていかないといけないというイメージなのですよね。そうしたときに、どういったことがネックになってくるというか。
森辺:例えば、今だとアジアの市場です。新興国の市場がこれから成長していく中で、その市場のマーケットシェアを取っていくということをやはりやっていかないといけないのですけど。P&Gとかジョンソン・エンド・ジョンソンとか、ユニリーバなんて、10年とか15年前からアジア、新興国をやっているわけです。そうすると、強いディストリビューター、いわゆる商品をディストリビューションする人たちです。というのを抑えられているわけなのです、既に。結局その強いディストリビューターを抑えられている中で、後発で日本企業がちょろちょろと来ましたと。ディストリビューターにしてみたら、もうやっているよと。ユニリーバとやっている。P&Gとやっているという話の中で、ではどうするのだと。普通のやり方をやっていたら、なかなかそれはチャネルづくりにはならなくて。結局アジアも首都を中心として都市化がすごく…
東:進んでいる。
森辺:進んできていて。けど、地方の都市もどんどん都市化率というのが上がっていくのですけど、やはり首都から攻めて行くわけですよ。そうすると少しチャネルの作り方を、リバースモデルで考えて、地方都市から攻めていくというのもそうでしょうし、必ず存在するモダントレードとトラディショナルトレードというのは、以前この番組でお話したかもしれないですけど、いわゆる近代的小売と伝統的小売と大きく2つ小売が分かれていて、多くが伝統小売のマーケットなのです。これがどんどん近代化していくのはいくものの、やはりその日本企業の伝統小売をとるのが非常に苦手で、近代小売を後追いするのですけど、近代小売が美味しいから、当然P&Gもユニリーバも上場もねらっているわけですよ。コカ・コーラにしても、ペプシコにしても、ケロッグにしても。そうすると、この伝統的小売を先にやるのか、徹底的にやるのかも1つの選択肢です。一方で日用品を売るのに、ドラッグストアとか、全く、いわゆる違うチャネル。けど日用品のチャネルとしては使えるチャネルを活用するというのもチャネル・イノベーションですし、ECのチャネルを使うというのはチャネル・イノベーションですし、それは国、都市、それに応じて、いろいろなイノベーションを起こせるわけですよ。そこに、やはりもっともっと投資をしていかないとなかなか難しいと思うのですよね。
東:なるほど。もうそろそろお時間なので、最後にさっき言われたチャネルを作ってオペレーションモデルを作るというところをもう少し解説いただいて、終わりたいと思うのですけど。まずチャネル作りが重要であると。
森辺:まず、ものづくりというところ。
東:というのが基本としてはできていると。
森辺:うん。ものづくりができているので、ものづくりからやはりチャネルづくりに変わる。チャネルを作るということにまず日本企業は投資をすべきですよと。このチャネルづくりも従来のいわゆるフォロワーの戦略で、後追いしていくわけですから。従来のやり方で、アイデアでチャネルを作ろうと思ってもなかなか難しいので、そこにいかにチャネル・イノベーションを起こせるかということをやはり考えていかないといけないというのが1つです。一方でそのチャネルができ上がって、売り上げがある一定のところまで上がったときには、オペレーションモデルを変えていかないとなかなかうまくオペレーションがまわらないという。これってやはりステージにわけてやっていくことがすごくあると。そんなふうに思います。
東:分かりました。今日はお時間なので、ここまでにしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。